子どもと親権 / 手順

親権で争うときの調停・審判・裁判の流れと家庭裁判所調査官の調査

この記事のもくじ
  1. 親権で争うときの三つの入口と、それぞれの手続き
  2. 調停の申立て:先と費用と書類
  3. 調停が不成立になったあと:審判と裁判
  4. 家庭裁判所調査官の調査:何をして、何が結論に使われるか
  5. 弁護士に頼むかどうかと、DVなど安全が絡むとき

親権で争うときの手続きは、いまどの段階にいるかで入口が三つに分かれます。離婚の前なら離婚調停の中で親権者も話し合い、離婚の合意はあるのに親権者だけが決まらないなら親権者指定の調停、離婚した後なら親権者変更の調停です。どの手続きでも、まず家庭裁判所の調停で話し合い、まとまらなければ審判や裁判で裁判所が決める、という順序になります。家庭裁判所調査官は、子のことを調べるために手続の途中で関わる専門職です。

この記事では、三つの入口の違い、調停の申立てから不成立後までの手順、調査官の調査で見られることを、条文と裁判所の案内に沿って整理します。判断の中身(何が重視されるか)は親権は母親が有利?有利と言われる理由と裁判所が見る養育の実績に分けています。2026年4月1日施行の改正(令和6年法律第33号)後の流れです。

親権で争うときの三つの入口と、それぞれの手続き

いまの状況 使う手続き 不成立のあと 根拠
離婚前で、離婚と親権を争っている 夫婦関係調整調停(離婚) 離婚訴訟(人事訴訟)で、判決で親権者を定める 民法819条2項、家事事件手続法257条
離婚の合意はあるが、親権者が決まらない 親権者指定の調停・審判 調停が不成立なら審判へ 民法819条5項
離婚後に親権者を変えたい 親権者変更の調停・審判 調停が不成立なら審判へ 民法819条6項

離婚の合意があるのに親権者だけが決まらない場合は、親権者の指定を求める調停か審判を申し立てていれば、親権者が決まる前でも離婚の届出が受理される道があります(民法765条1項2号)。裁判所の案内も、申立て後に協議離婚の届出をしてから、調停または審判で親権者を定める進め方を紹介しています。届出書の書き方は離婚届の書き方と出し方:証人・親権の欄で注意することで扱います。

離婚後の変更は親権者変更の手続き:離婚後に家庭裁判所で考慮される事情で別に詳しく書いているので、ここでは離婚前から離婚の合意後までを中心にします。

調停の申立て:先と費用と書類

離婚と親権を争う夫婦関係調整調停(離婚)の申立ては、次のとおりです(裁判所の案内)。

  • 申立人:夫または妻
  • 申立先:相手方の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所
  • 費用:収入印紙1,200円分と、連絡用の郵便切手(切手の額は裁判所ごとに異なるので、申立先の裁判所のページで調べる)
  • 書類:申立書とその写し、夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)、事情説明書(夫婦関係調整)、子についての事情説明書、進行に関する照会回答書、送達場所等届出書

離婚調停では、親権者のほか、子と離れて暮らす親との交流、養育費、財産分与、年金分割の割合、慰謝料も話し合えます。「子についての事情説明書」には、子の生活の様子を書く欄があります。日々の世話の分担や子の学校生活を、書く前に整理しておくと、後の調査官の面接でも話がぶれません。調停の流れ全体は離婚調停の流れ:申立てから成立・不成立までと浮気が原因のときの準備にあります。

調停は、裁判官1人と、民間から選ばれた調停委員2人以上で作る調停委員会が、双方から交互に事情を聴いて進めます。調停で合意して調書に書かれると、離婚調停は確定判決と、親権者の調停などは確定した審判と同じ効力になります。

調停が不成立になったあと:審判と裁判

不成立後の道は、手続きの種類で分かれます。

  1. 離婚調停(親権を含む)が不成立:離婚を求めるなら、自分で離婚訴訟を起こします。不成立の通知を受けた日から2週間以内に訴えを出すと、調停を申し立てた時に訴えを出したものとみなされます(家事事件手続法272条3項)。原則として、訴えの前に調停を経る必要があります(調停前置、家事事件手続法257条)。訴訟は、夫または妻の住所地を管轄する家庭裁判所に出し、離婚と同時に親権者の指定を求められます。裁判所は、判決で離婚を認めるときに親権者を定めます。
  2. 親権者指定・変更の調停が不成立:自動的に審判に移ります(家事事件手続法272条4項)。裁判官が一切の事情を考慮して判断します。審判に不服があるときは、告知を受けた日から2週間以内に即時抗告ができます(同法86条)。
  3. 訴訟の費用や期間:離婚裁判の流れ:浮気を理由に訴えるときの訴状・証拠・判決と、離婚裁判の費用:印紙・郵便料・弁護士費用の内訳と調べ方で整理しています。

審判と訴訟のどちらでも、子が15歳以上であれば、その陳述を聴かなければなりません(家事事件手続法169条2項、人事訴訟法32条4項)。この意味は、親権は子供が選べる年齢がある?15歳以上の意見の聴取と子の気持ちで説明しています。

家庭裁判所調査官の調査:何をして、何が結論に使われるか

調査官は、裁判所の命令で事実の調査をする専門職です。根拠は次の条文です。

  • 家事審判・調停:家庭裁判所は、調査官に事実の調査をさせることができる。調査官は、結果を書面または口頭で裁判所に報告し、意見をつけることができる(家事事件手続法58条)。期日に調査官を立ち会わせ、意見を述べさせることもできる(同法59条)。
  • 人事訴訟:裁判所は、調査官に事実の調査をさせることができる。調査官は結果を報告し、意見をつけることができる(人事訴訟法34条)。
  • 子の意思の把握:子の陳述の聴取や調査官による調査などで、子の意思を把握するよう努める(家事事件手続法65条)。

調査官の報告は、裁判官が判断するための材料です。調査官が結論を決めるのではありません。調べる内容は事件によって違い、養育状況、経済力や家庭環境、子の生活環境、当事者の意向などが手がかりになります(見られる事情は親権の判断で見られる事情の記事)。

調査官に呼ばれたら、次のように備えます。

  1. 事実を時系列で話せるようにする(出生から現在まで、誰がどう世話をしてきたか)
  2. 相手の悪口に終始せず、子の様子と、自分が何をしてきたかを具体的に話す
  3. 子の通学・通院・習い事の予定を、書面にして持参できるようにする
  4. 子と相手の親との交流について、自分の考えを整理しておく
  5. 面接や調査の日程は、裁判所からの連絡内容に従う。出られない事情があるときは早めに伝える

調査の方法や回数は事件ごとに裁判所が決めます。通知された内容を確認し、不明点は担当の書記官や調査官に聞いてください。

早見表:親権をめぐる手続きの全体像
段階 手続き 判断する人
1 話し合い(協議) 父母
2 調停(夫婦関係調整、または親権者指定・変更) 調停委員会が仲立ち。合意して成立
3 審判(指定・変更)/離婚訴訟(離婚前) 裁判官(調査官の報告は材料)
4 即時抗告/控訴 上級の裁判所

弁護士に頼むかどうかと、DVなど安全が絡むとき

調停で弁護士に依頼することはできますが、必須ではないと裁判所は案内しています。弁護士の選び方は離婚の弁護士の選び方:浮気が原因の事件で確かめる5つのことにあります。

相手の暴力や脅しがあって顔を合わせたくないときは、ウェブ会議などの工夫を、申立ての前に家庭裁判所へ相談できます。DVがあるときの親権の決まり方はDVがあるときの親権:単独親権と定めなければならない場合を先に読んでください。子どもへの影響や接し方は浮気と子供:影響を小さくするために親ができることと決めることも参考になります。

よくある質問

Q. 親権の調停は、弁護士をつけないとできませんか?

裁判所は、調停で弁護士に依頼することはできるが必須ではなく、依頼しなくても手続は進められると案内しています。弁護士をつけるかどうかは、争点の多さや費用、期日に出られる状況などで決めます。相談先は法テラスや弁護士会で探せます。

Q. 調停で親権が決まらなかったら、そのあとはどうなりますか?

離婚そのものを求める調停が不成立だと、離婚を求めるなら離婚訴訟を自分で起こす流れです。親権者の指定・変更だけを求めた調停(家事事件手続法の別表第二の事項)が不成立になると、調停の申立ての時に審判の申立てがあったものとみなされ、自動的に審判に移ります。

Q. 家庭裁判所調査官の調査を断ることはできますか?

調査は、裁判所が必要と認めて調査官に命じるもので、当事者の同意で始まる手続ではありません。条文は、調査官が結果を裁判所に報告すると定めています。日程や場所に困る事情があるときは、早めに裁判所へ伝えて調整してもらってください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

親権は母親が有利?有利と言われる理由と裁判所が見る養育の実績

DVがあるときの親権:単独親権と定めなければならない場合

離婚調停の流れ:申立てから成立・不成立までと浮気が原因のときの準備

親権者変更の手続き:離婚後に家庭裁判所で考慮される事情