婚約者の浮気で婚約破棄はできる?婚約の法的な扱いと相談先
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婚約者の浮気が分かったとき、婚約を解消すること自体は、相手が同意しなくてもできます。結婚は二人の意思と届出がそろって初めて成立するもので、相手に結婚を強制する手段はないからです。問題になるのは「解消できるか」より、解消したときにどちらが、どんな責任を負うかと、式場や新居などの後始末です。この記事では、婚約の法的な扱いの考え方と、婚約破棄の前後に整理しておくことを順番にまとめます。
婚約者の浮気で婚約破棄はできるか:答えと考え方の順番
民法は、婚姻は戸籍法の定めにより届け出ることで効力を生じる(739条)とし、当事者の間に婚姻をする意思がないときは婚姻を無効としています(742条1号)。結婚には双方の意思が欠かせないので、婚約者の浮気で気持ちが離れたなら、結婚をやめる道は残っています。
一方で、婚約は「結婚しよう」という約束で、一方的に破れば責任が生じうる約束でもあります。最高裁の昭和38年9月5日の判決は、真実夫婦として共同生活を営む意思で婚姻を約した事情のもとで、一方が正当な理由なく婚約を破棄したときは、相手は慰謝料を請求できるとしました。つまり、考える順番は次のとおりです。
- 婚約が成立していたと言える事情があるか(口約束だけか、周囲に示した事情があるか)
- 婚約を終わらせる理由は何か(婚約者の浮気という事実を、記録で示せるか)
- 終わらせ方と後始末をどうするか(式場・新居・指輪・お金の分け方)
浮気された側が婚約破棄を切り出すときは、2の「浮気の事実」を先に整理しておくことが、自分を守ることにつながります。浮気の事実があいまいなまま一方的に破棄すると、「正当な理由のない破棄だ」と逆に言われるおそれがあるためです。
婚約の法的な扱い:成立していたと見られる事情
民法には「婚約」を定義した条文がありません。婚約がどう扱われるかは、裁判所の判決の積み重ねで考えられてきました。
昭和38年の判決の裁判要旨は、真実夫婦として共同生活を営む意思で婚姻を約し、長く関係を続けていた事案で、その関係を両親や兄弟に打ち明けていなくても、世の習わしに従って結納を交わしたり同棲したりしていなくても、正当な理由のない破棄に慰謝料を請求できる結論は変わらないとしています。結納や両家のあいさつがないからといって、婚約がなかったことになるわけではありません。反対に、平成16年11月18日の判決は、婚姻の意思の合致がなく、意図的に婚姻を避けていた男女の関係を一方が解消しても、慰謝料の対象となる不法行為とは言えないとしました。結婚の約束があったかどうかが分かれ目になります。
婚約の成立を後から説明するときに材料になりやすいものを、手元で確かめておきましょう。
| 材料 | 例 | 手元に残す形 |
|---|---|---|
| 結婚の約束のやりとり | プロポーズの言葉、結婚の時期を話したメッセージ | 画面の保存、日付のメモ |
| 周囲への紹介 | 両家の顔合わせ、職場や友人への報告 | 日時・場所・同席者のメモ |
| 結婚の準備 | 式場の予約、新居の契約、指輪の購入 | 契約書、申込書、領収書 |
| お金のやりとり | 結納、準備費用の分担 | 振込の記録、受取書 |
同棲して生活を共にしていた場合は、婚約よりも内縁(事実婚)に近い関係として考えられることがあります。最高裁の昭和33年4月11日の判決は、内縁を不当に破棄された者は相手に不法行為を理由として損害賠償を求められるとしています。同棲が長い場合は、事実婚・内縁の相手の浮気はどう扱われるかもあわせて読んでください。
| 関係 | 浮気が分かったときの主な論点 | 参考 |
|---|---|---|
| 交際中(結婚の約束なし) | 婚姻の意思の合致がなかった関係の解消が、慰謝料の対象にならないとされた例がある | 平成16年11月18日判決 |
| 婚約中 | 正当な理由のない破棄に責任が生じうる | 昭和38年9月5日判決 |
| 内縁(事実婚) | 不当な破棄に損害賠償を求めうる | 昭和33年4月11日判決 |
| 法律上の夫婦 | 不貞行為・離婚の問題として考える | 民法770条 |
婚約破棄の前に整理すること:浮気の事実と自分の気持ち
婚約破棄を切り出す前に、次の3つを紙に書き出しておくと、話し合いでも相談の場でも説明がぶれにくくなります。
- 浮気について分かっている事実:いつ、誰と、何があったか。自分で見たこと、本人が認めたこと、人から聞いたことを分けて書く。
- 婚約者の説明:浮気をどう説明したか、謝罪や約束はあったか。言い分は事実と別の欄に書く(浮気の言い分と事実を分けて記録する方法)。
- 自分がどうしたいか:婚約をやめたいのか、結婚の時期を延ばして考えたいのか、条件つきで続けたいのか。
浮気の証拠を集めようとして、相手のアカウントにログインしたり、位置情報を無断で取ったりすると、禁じる法律に触れるおそれがあります。自分で集めてよい範囲は浮気の証拠を自分で集める方法で確かめてください。結婚前の浮気をどう受け止めるかに迷っているなら、彼氏の浮気を許すか別れるかを考える記事の問いも、婚約中の判断に使えます。
婚約破棄を伝えるときは、感情的な言葉より、決めたことを短く伝えるほうが後の話し合いが進みやすくなります。
文例:「浮気のことを聞いて考えた結果、このまま結婚することはできないと決めました。式場や新居の解約と、これまでに出したお金の分け方について、改めて話し合いの時間をください。」
式場・新居・指輪の後始末:解約の手順と費用の確かめ方
婚約破棄で現実に負担が大きいのは、結婚準備の契約の解約です。契約の名義人と、すでに払ったお金を一覧にしてから動きます。
| 項目 | 先に確かめる書類 | 相談する相手 |
|---|---|---|
| 結婚式場・披露宴 | 申込書、約款の解約条項(時期ごとの解約料) | 式場の担当者、消費者ホットライン188 |
| 新居(賃貸) | 賃貸借契約書の解約予告期間・違約金 | 管理会社・貸主 |
| 新婚旅行・引越し | 予約確認書の取消料 | 旅行会社、引越し業者 |
| 婚約指輪・結婚指輪 | 領収書、購入した人 | 婚約者との話し合い |
| 結納・準備費用 | 振込記録、受取書 | 婚約者との話し合い、弁護士 |
式場の解約料が高すぎると感じたら、消費者契約法を確かめましょう。同法9条1項1号は、解除に伴う違約金などのうち、同じ種類の契約の解除で事業者に生じる平均的な損害の額を超える部分を無効としています。また9条2項は、消費者から求められたとき、事業者は違約金の算定の根拠の概要を説明するよう努めなければならないと定めています。まず根拠の説明を求め、納得できなければ契約書を持って消費者ホットライン188に相談できます。188は近くの消費生活センターにつながる番号です。
指輪や結納の扱いは、婚約がどちらの事情で終わったかによって考え方が変わります。結納について、最高裁の昭和39年9月4日の判決は、挙式後8か月あまり夫婦生活を続け、婚姻届も済ませた後に協議離婚した事案で、結納を受け取った側に返還義務はないとしました。婚約の段階で終わった場合はこれと事情が違うので、自己判断で処分せず、渡した日・金額・名目を書き出してから話し合ってください。
婚約者の浮気の相談先:慰謝料を考えるときと契約でもめたとき
相談先は、何に困っているかで分けると選びやすくなります。
- 婚約破棄の責任や慰謝料を考えたい:弁護士。慰謝料の考え方は婚約者の浮気で慰謝料を請求できるかの記事にまとめています。費用が心配なら、法テラスで使える無料相談と費用の立替えを確かめてください。
- 式場や賃貸の解約料でもめている:消費者ホットライン188、または契約の相手方との書面でのやりとり。
- 請求する額が小さい民事の争い:請求額が140万円以下なら、認定司法書士も代理できる場合があります。誰に何を頼めるかは弁護士・司法書士・行政書士の違いで確かめられます。
- 気持ちの整理がつかない:結婚前の浮気でも、つらさは軽くありません。彼女の浮気が分かったときの判断材料の整理の仕方も参考になります。
弁護士に相談するときは、婚約の経緯、浮気の事実と記録、解約が必要な契約、すでに払ったお金の一覧を持って行くと、短い相談時間でも具体的な話ができます。準備の仕方は弁護士に相談する前の準備にまとめています。この記事は一般的な仕組みの説明で、あなたの場合に責任が生じるか、慰謝料がいくらになるかは、事情を聞いた弁護士でなければ判断できません。
婚約者がなぜ浮気をしたのかを知りたい気持ちが残るなら、次の浮気する心理と話し合いで本人に聞くべきことで、理由を決めつけずに確かめる問いを紹介しています。
よくある質問
Q. 婚約者の浮気を理由に婚約破棄したら、こちらが慰謝料を払うことになりますか?
婚約を正当な理由なく破棄した側に責任が生じうる、という考え方が最高裁の判決にあります。浮気が「正当な理由」に当たるかは、浮気の中身や時期、それまでのやりとりなど事情全体で判断されます。破棄を伝える前に、浮気の事実を記録し、弁護士に事情を見てもらうと、自分が責任を問われる側に回る危険を減らせます。
Q. 婚約指輪や結納は返さないといけませんか?
婚約指輪や結納の扱いは、誰が何のために渡したか、婚約がどちらの事情で終わったかで考え方が変わります。結婚が成立して夫婦として暮らした後の離婚では結納の返還義務がないとした最高裁の判決がありますが、婚約の段階で終わった場合とは事情が違います。返す・返さないを決める前に、渡した日と金額を書き出し、弁護士に相談すると話がこじれにくくなります。
Q. 婚約者の浮気相手にも責任を問えますか?
結婚している夫婦の不貞行為についての考え方を、婚約の段階にそのまま当てはめることはできません。浮気相手が婚約を知っていたか、どんな関わり方をしたかなど、事情によって見方が大きく変わります。浮気相手への請求を考えるなら、婚約者の浮気で慰謝料を請求できるかの記事で考え方を確かめ、弁護士に相談してください。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第739条・第742条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 最高裁判所第一小法廷 昭和38年9月5日判決(婚姻予約の不当破棄による慰藉料)(裁判所)
- 最高裁判所第二小法廷 昭和39年9月4日判決(結納の返還義務)(裁判所)
- 最高裁判所第二小法廷 昭和33年4月11日判決(内縁の不当破棄)(裁判所)
- 最高裁判所第一小法廷 平成16年11月18日判決(婚姻外の関係の解消)(裁判所)
- 消費者契約法 第9条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 司法書士法 第3条第1項第6号・裁判所法 第33条第1項第1号(簡易裁判所の訴訟代理の範囲=訴訟の目的の価額140万円以下)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 消費者ホットライン188(消費者庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。