慰謝料請求にかかる期間の目安:話し合い・調停・訴訟の段階ごと
この記事のもくじ
慰謝料請求にかかる期間は、どの段階で決着するかでほぼ決まります。話し合い(内容証明・示談)で合意できれば数週間から数か月で終わることもありますが、日数を決める公的な統計はありません。裁判所の手続きに進むと数字があり、令和7年の司法統計では婚姻関係の調停の58.0%が6か月以内に終わっています。地方裁判所の民事訴訟は、最高裁判所の報告書で令和6年の平均審理期間が9.2か月です。この記事では、段階ごとの目安と、時間がかかる理由、短くするために準備できることを順に答えます。
慰謝料請求の期間の目安を段階ごとに見る
まず全体像です。数字は、慰謝料の事件だけを数えたものではありません。裁判所の統計には「不倫の慰謝料」という区分がないため、慰謝料請求を含む、もっと広い事件の数字で目安をつかむことになります。
| 段階 | 期間を左右するもの | 公的な数字(出典) |
|---|---|---|
| 話し合い(内容証明・示談) | 相手が返事をするか、金額や事実を争うか | 統計なし。時効との関係で、内容証明の請求から6か月の猶予(民法150条) |
| 家庭裁判所の調停 | 期日の回数と間隔、相手が出席するか | 婚姻関係事件:6か月以内 58.0%、1年以内 87.1%(司法統計 令和7年。割合は筆者の計算)。夫婦関係調整調停の平均審理期間 6.8か月(令和6年) |
| 地方裁判所の訴訟(主に不倫相手への請求。簡易裁判所の分は含まない) | 相手が争うか、本人や証人の尋問をするか | 民事第一審訴訟の平均審理期間 9.2か月(令和6年。地裁の全事件の平均) |
| 家庭裁判所の離婚訴訟(離婚と慰謝料をあわせて請求) | 財産分与・親権など、ほかの争点の数 | 人事訴訟の平均審理期間 14.8か月(令和6年) |
| 判決・合意の後 | 相手が控訴するか、約束どおり払うか | 控訴の期間は判決の送達から2週間(民事訴訟法285条)。払われないときは強制執行へ |
「調停のあとに訴訟」のように段階を重ねると、期間は足し算になります。たとえば話し合いがまとまらず、調停も不成立になってから訴訟を起こすと、それぞれの段階の時間が積み重なります。請求の流れそのものは不倫慰謝料の請求方法:話し合い・内容証明・調停・訴訟の流れで説明しているので、ここでは「時間」に絞って見ていきます。
話し合いの段階:相手の反応しだいで、時効の6か月が区切りになる
内容証明や手紙、メールで請求して話し合う段階には、公的な統計がありません。かかる時間は、相手の反応でおおまかに次のように分かれます。
- すぐに支払いに応じる:示談書を作って支払うまでで終わる。支払い方法を決め、書面に残す時間が中心
- 金額や支払い方法で交渉になる:やりとりの回数だけ時間がかかる。分割払いにする場合は、決着しても支払いが終わるまでの期間が長くなる
- 事実を否定する・返事をしない:話し合いでは進まず、調停か訴訟を考えることになる
この段階で期間を考えるときの物差しは、相手の都合ではなく時効です。不倫の慰謝料は、損害と加害者を知った時から3年で時効にかかります(民法724条)。内容証明で請求すると、そこから6か月は時効が完成しませんが(民法150条1項)、その間にもう一度請求しても、さらに延びることはありません(同条2項)。話し合いが続いていても、6か月の猶予のうちに次の手続きへ進むかどうかを決める必要がある、ということです。
返事が来ないときの選択肢は慰謝料請求を無視されたら:次にとれる手続きの選択肢と時効の注意に、内容証明の出し方は内容証明郵便とは?不倫の慰謝料請求で使うときの仕組みにまとめています。協議離婚の話し合いの中で慰謝料も決める場合は、協議離婚で慰謝料を決めるとき:金額・支払い方法・書面の残し方を参照してください。
調停の段階:司法統計で見る期間と期日の間隔
家庭裁判所の調停は、相手方の住所地の家庭裁判所に申し立て、期日ごとに調停委員を交えて話し合います。離婚する前なら夫婦関係調整調停(離婚)の中で、離婚した後なら慰謝料請求調停で、慰謝料を話し合えます(裁判所の慰謝料請求調停のページ)。
時間の目安になる数字は、次の2つの資料にあります。
| 資料 | 数字 | 読むときの注意 |
|---|---|---|
| 司法統計年報(家事編)令和7年 第16表 | 婚姻関係事件 57,491件の審理期間:6か月以内 累計58.0%、1年以内 累計87.1%、2年を超えるもの1.2% | 離婚だけでなく円満調整なども含む。取下げなどで終わった事件も含む |
| 同 第22表 | 実施した期日の回数で最も多いのは2回(19.2%)、6〜10回も18.5% | 割合は筆者の計算 |
| 裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(令和7年7月) | 令和6年の夫婦関係調整調停:平均審理期間6.8か月、平均期日間隔1.9か月。一般調停事件(離婚・慰謝料請求調停など)全体の平均審理期間6.5か月 | 期日間隔は、平均審理期間を平均期日回数で割った数字 |
期日はおよそ2か月に1回のペースで入る計算になるので、期日を3回重ねれば半年近くかかる、という見当がつきます。ただし報告書は、期日外で終わった事件も平均に入れて割っているため、実際の期日の間隔よりも長めの数値が出ていると注意しています。慰謝料だけでなく、親権・養育費・財産分与もあわせて話し合うと、話題が増えるぶん期日も増えやすくなります。
調停は、相手が出席しなかったり合意できなかったりすると不成立で終わります。慰謝料の調停は不成立になっても審判には移らないため、続けるなら自分で訴訟を起こすことになります。家庭裁判所が調停に代わる審判を出すこともありますが、当事者が2週間以内に異議を申し立てると効力を失います(家事事件手続法284条・286条)。申立ての費用と当日の流れは慰謝料請求調停とは?家庭裁判所での流れと申立ての費用に、離婚調停全体の期間は離婚調停にかかる期間:期日の回数の目安を司法統計で見るにまとめています。
訴訟の段階:争うか、尋問をするかで大きく変わる
訴訟の期間は、どの裁判所で何を請求するかで分かれます。不倫相手に慰謝料だけを請求する訴えは、請求額140万円以下なら簡易裁判所、それを超えると地方裁判所です。離婚とあわせて請求するなら、家庭裁判所の離婚訴訟の中で審理できます。
地方裁判所の民事訴訟(令和6年・全事件)
最高裁判所の報告書(令和7年7月)では、地方裁判所の民事第一審訴訟の平均審理期間は9.2か月で、前回の調査(令和4年)の10.5か月より短くなっています。終わり方ごとの平均は次のとおりです。
- 判決で終わった事件:8.2か月(相手も出廷して争った対席判決は13.4か月、相手が欠席した判決は3.4か月)
- 和解で終わった事件:12.9か月
- 取下げで終わった事件:5.9か月
- 本人や証人の尋問(人証調べ)をした事件:23.6か月。尋問をした事件の割合は11.4%
この数字は、建物の明渡しや貸金なども含む民事訴訟全体の平均で、不倫の慰謝料訴訟の平均ではありません。それでも、相手が争って尋問まで進むと、2年近くかかる事件が多いという傾向を読み取ることはできます。不倫の慰謝料は、関係があったかどうか、既婚者と知っていたかどうかで争いになりやすく、その場合は尋問まで進むことが考えられます。
家庭裁判所の離婚訴訟(人事訴訟)
同じ報告書では、令和6年の人事訴訟の平均審理期間は14.8か月で、1年を超えて終わった事件が51.1%を占めます。財産分与の申立てがある事件は平均19.2か月、ない事件は12.9か月で、報告書は財産分与の審理の長期化を全体が長くなった主な原因に挙げています。令和7年の司法統計(第63表)でも、人事を目的とする訴えのうち1年以内に終わったのは48.4%、2年以内で84.8%です(筆者の計算。離婚以外の訴えも含む)。
訴訟の進み方は不倫の裁判で訴えるときの流れ:訴状・期日・判決・和解と準備に、途中で和解をすすめられたときの考え方は不倫の裁判で和解をすすめられたら:判決との違いにまとめています。
決まった後にかかる時間と、期間を左右する準備
合意や判決で金額が決まっても、それで手続きが終わるとは限りません。判決に不服がある側は、判決の送達を受けた日から2週間以内に控訴でき(民事訴訟法285条)、控訴されると判決は確定しません。確定した判決や調停調書があっても相手が払わないときは、財産を差し押さえる強制執行の申立てが別に必要です。その仕組みは決まった慰謝料が支払われないとき:強制執行の仕組みと必要な書面で、相手が破産した場合の扱いは不倫の慰謝料と相手の破産:免責されない場合の考え方で説明しています。
期間を延ばしやすい事情と、こちらで準備できることを並べると、次のようになります。
| 長引きやすい事情 | 準備できること |
|---|---|
| 相手が関係そのものを否定している | 証拠を日付順に整理し、何で何を示すのかを一覧にしておく |
| 争点が多い(慰謝料に加えて親権・財産分与など) | 決めたい項目を書き出し、慰謝料と切り分けて話せるものを分けておく |
| 相手の住所が分からない、連絡がつかない | 分かっている住所・勤務先・連絡先の記録を残す。調べ方は弁護士に相談する |
| 期日の準備が間に合わず、次回に持ち越しになる | 裁判所や相手から求められた書類の期限を手帳に書き、早めに出す |
| 時効が近く、急いで手続きを始めた | 知った日(発覚した日)を記録し、3年の期限から逆算して段取りを組む |
期間の見通しは、相手の態度と争点で変わるため、自分の場合にどの段階まで進みそうかは、資料を持って弁護士に相談すると具体的に聞けます。相談先の選び方は不倫慰謝料を弁護士に頼むときの選び方を、時効が迫っているときは慰謝料請求の時効が迫っているときの完成猶予・更新の仕組みを参照してください。慰謝料の全体像は浮気・不倫の慰謝料とは?請求できる場面・金額の決まり方・進め方の全体像にまとめています。
よくある質問
Q. 手続きが長引いている間に、時効が来てしまうことはありますか?
調停や訴訟を起こすと、その手続きが続いている間は時効が完成しない仕組みになっています。心配なのは手続きに入る前の話し合いの段階で、内容証明による請求で完成が先に延びるのは6か月だけです。話し合いが長引きそうなら、知った時から3年の期限を逆算して、いつまでに手続きへ進むかを先に決めておきます。
Q. 判決が出たら、すぐに慰謝料が振り込まれますか?
判決は、相手に支払いを命じるものですが、振り込みを裁判所が代わりにしてくれるわけではありません。相手が控訴すれば判決は確定せず、控訴審が続きます。確定しても払われないときは、強制執行の申立てという別の手続きが必要になり、そこでも時間がかかります。
Q. 弁護士に頼むと、期間は短くなりますか?
書面の準備や裁判所とのやりとりが整うぶん、手続きの進みが滑らかになることはあります。ただ、期間を大きく左右するのは相手が争うかどうかと、争点の数です。依頼を考えるときは、相談の場で「この相手と争点なら、どの段階でどのくらいかかりそうか」を尋ね、見通しの説明を比べて選ぶと判断しやすくなります。
出典・参考にした公的な情報
- 令和7年 司法統計年報(家事編)第16表・第22表・第63表(最高裁判所)
- 裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(令和7年7月)(最高裁判所事務総局)
- 慰謝料請求調停(離婚後の紛争調整)(裁判所)
- 民法 第150条・第724条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事訴訟法 第285条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 家事事件手続法 第284条・第286条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。