離婚後に不倫が発覚したら慰謝料は請求できる?時効と証拠の考え方
離婚した後に、婚姻中の不倫が発覚した場合でも、慰謝料を求める道はあります。家庭裁判所には、離婚した元夫・元妻が申し立てる「慰謝料請求調停」という手続きがあり、離婚後の請求を前提にした仕組みが用意されています。そのうえで、請求できるかを左右する分かれ目は、①時効の数え方、②離婚の時に交わした書面の清算条項、③離婚後に集められる証拠、の3つです。この記事は、この3つを順に整理します。請求できるかどうかの個別の見通しは、書面と日付を持って弁護士に確かめてください。
離婚後に不倫が発覚しても慰謝料を請求できるか
まず、誰に対して、どんな慰謝料を考えるのかを分けます。相手は、元配偶者と不倫相手の2人です。
| 請求の相手 | 考えられる慰謝料 | 主な手続きの入口 |
|---|---|---|
| 元配偶者 | 不倫そのものによる慰謝料、不倫が原因で離婚に至ったことによる慰謝料 | 話し合い、家庭裁判所の慰謝料請求調停、訴訟 |
| 不倫相手 | 原則として不倫そのものによる慰謝料 | 話し合い、裁判所での手続き(どこに出すかは慰謝料請求の管轄の記事) |
不倫相手への請求について、最高裁平成31年2月19日判決は、不倫相手には特段の事情がない限り「離婚に伴う慰謝料」は請求できないとしています。特段の事情とは、夫婦を離婚させる意図で婚姻関係に不当な干渉をしたなどの事情です。一方で、判決は不倫そのものを理由とする責任は別だという前提に立っています。
裁判所の案内では、慰謝料請求調停の申立人は離婚した元夫・元妻で、申立先は相手方の住所地の家庭裁判所か、当事者が合意で決めた家庭裁判所です。費用は収入印紙1200円分と連絡用の郵便切手です。離婚前なら慰謝料は離婚の調停の中で話し合えますが、離婚後に発覚した場合は、この調停が元配偶者への請求の入口の一つになります。
もう一つの注意は、不倫が始まった時期と、夫婦関係が壊れた時期の前後です。最高裁平成8年3月26日判決は、関係を持った当時すでに婚姻関係が破綻していた場合は、特段の事情のない限り、不倫相手は責任を負わないとしました。離婚後に発覚したケースでは「関係が始まったのは別居の後だ」と反論されることがあるので、別居や離婚の話が出た日付も一緒に整理しておきます。破綻の考え方は「婚姻関係の破綻」とはの記事にあります。
時効の数え方:知った時から3年・不倫の時から20年
離婚後に発覚した場合の請求で、最初に確かめるのが時効です。民法724条は、不法行為の慰謝料の請求権は「損害及び加害者を知った時から3年」「不法行為の時から20年」行使しないと時効で消えると定めています。
| 日付 | 意味 | 時効との関係 |
|---|---|---|
| 不倫があった時期 | 不法行為の時 | ここから20年の期限が進む |
| 離婚した日 | 婚姻の解消 | 元配偶者への請求は、婚姻の解消から6か月は時効が完成しない(民法159条) |
| 不倫を知った日 | 損害を知った時 | 相手が誰か分かっていれば、3年の期限がここから進む |
| 不倫相手の氏名などを知った日 | 加害者を知った時 | 相手が誰か分からなかった場合、数え始めが問題になりうる |
ポイントは、3年の期限は「離婚した日」ではなく、損害と加害者の両方を知った時から数える考え方になっていることです。離婚から何年かたって知った場合も、3年はそこから進みます。ただし20年の期限は不倫の時から進み続けるので、昔の不倫ほど20年が先に来ないかを確かめます。
離婚の慰謝料(離婚させられたことの慰謝料)を元配偶者に求める場合は、数え始めの考え方が不倫そのものの慰謝料と違いうるので、離婚慰謝料の時効の記事で整理しています。期限が迫っているときは、民法150条の催告(請求の意思を伝えた時から6か月は時効が完成しない)や、151条の協議を行う旨の書面による合意で完成が猶予される仕組みがあります。ただし催告を繰り返しても期間は延びないので、その6か月の間に調停や訴訟の準備を進めます。詳しくは時効が迫っているときの完成猶予・更新の記事を読んでください。
離婚協議書の清算条項との関係
離婚の時に離婚協議書や公正証書、調停調書を作った人は、その中に清算条項がないかを確かめます。日本公証人連合会の説明では、離婚の公正証書には、当事者の希望に応じて「この証書に定めるほか債権債務がないことの確認」(清算条項)を入れることがあります。
民法695条は、和解を「互いに譲歩をしてその間の争いをやめること」を約束するものとし、696条は、和解で決めた後に反対の確証が得られても、その権利は和解によって移転・消滅したものとすると定めています。つまり、清算条項のある合意は、後から新しい事実が分かっても簡単には崩れない方向に働きうるということです。一方で、清算条項がどの範囲の請求を含むのかは、書面の言葉や合意したときの経緯から考えられます。
| 確かめる項目 | 見る場所 | なぜ大事か |
|---|---|---|
| 清算条項があるか | 協議書・公正証書・調停調書の最後のほう | 元配偶者への請求に関わる |
| 清算の範囲の書き方 | 「本件離婚に関し」などの限定の言葉 | 不倫の慰謝料が範囲に入るかの手がかり |
| 慰謝料の取り決め | 慰謝料の条項の有無と額 | すでに受け取った分の扱いに関わる |
| 合意したときの事情 | 当時のやりとりの記録 | 不倫を知らずに合意した経緯の説明材料 |
不倫相手は、元夫婦の離婚の合意の当事者ではありません。ただ、民法719条は配偶者と不倫相手が連帯して賠償する仕組みを定めているので、元配偶者から受け取ったお金や合意の中身が、不倫相手への請求の中でどう扱われるかは問題になりえます。どちらへの請求も、書面一式を持って弁護士に見てもらうのがいちばん堅い進め方です。書面の条項の例は離婚協議書の書き方の記事で見られます。
なお、財産分与を離婚の時に決めていない場合、家庭裁判所に請求できる期間は離婚の時から5年(2026年3月31日以前の離婚は2年)です。慰謝料とは別の期限なので、財産分与の基本の記事で確かめてください。
離婚後に集められる証拠と、してはいけない集め方
離婚した後は、元配偶者のスマホや家の中の物を見る立場ではなくなります。そのぶん、自分の手元にあるものと、相手が自分から認めたものが中心になります。
- 婚姻中から自分が持っていたもの:自分あてに届いた連絡、家計の記録、共有していた写真やカード明細の控えなど。
- 発覚のきっかけになったもの:知人から聞いた話の日時と内容のメモ、人から見せられたものの保存。
- 元配偶者や不倫相手の言葉:不倫を認めるメッセージやメール。自分あての連絡はそのまま保存する。
- 時系列のメモ:不倫の時期、別居・離婚の話が出た日、知った日、相手の名前を知った日。
反対に、元配偶者のSNSやメールに、本人のIDやパスワードを使ってログインすることは、不正アクセス禁止法3条が禁じている行為に当たるおそれがあります。元配偶者の住まいや不倫相手の家に押しかける、職場に知らせると迫る、といった方法も、別の法律の問題を生みます。してはいけない集め方の一覧は証拠集めでしてはいけないことの記事、何が証拠になりうるかは浮気の証拠になるもの一覧で整理しています。
請求の目的や負担の考え方は慰謝料請求で後悔しないための整理、双方が既婚だった場合は前の記事のダブル不倫の慰謝料の考え方、不倫相手から「既婚者と知らなかった」と言われたときは次の記事の不倫相手が既婚者と知らなかったと言うときの確かめ方へ進んでください。
よくある質問
Q. 離婚して何年もたってから不倫を知った場合でも請求できますか?
民法724条は、損害と加害者を知った時から3年、不倫の時から20年で時効にかかると定めています。離婚から年数がたっていても、知ったのが最近なら3年の期限はそこから数える考え方になりますが、20年の期限は不倫の時から進みます。どちらが先に来るかを日付で確かめ、近い場合は早めに弁護士に見てもらいます。
Q. 元配偶者が再婚している場合、不倫相手が今の配偶者でも請求できますか?
再婚したこと自体で、婚姻中の不倫についての請求が消えるという条文はありません。ただ、不倫が始まった時期と夫婦関係が破綻した時期の前後、知った日、離婚の時の合意の中身によって考え方が変わります。再婚相手が不倫相手だったという事情も含めて、時系列にまとめて弁護士に相談してください。
Q. 離婚の時に慰謝料をもらっていない場合は、清算条項があっても関係ありませんか?
慰謝料を受け取っていなくても、「この書面に定めるほか債権債務がない」という清算条項があれば、その意味が問題になりえます。合意した範囲に婚姻中の不倫の慰謝料が入るかは、書面の言葉と合意の経緯から考えられるので、自分で決めつけずに書面ごと弁護士に見せます。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第150条・第151条・第159条・第695条・第696条・第709条・第719条・第724条・第768条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 慰謝料請求調停(裁判所)(裁判所)
- 公正証書 離婚 Q3(日本公証人連合会)(日本公証人連合会)
- 最高裁判所 平成8年3月26日 第三小法廷判決(裁判所)
- 最高裁判所 平成31年2月19日 第三小法廷判決(裁判所)
- 不正アクセス行為の禁止等に関する法律 第3条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。