不倫相手に慰謝料を請求できる?既婚の認識・破綻・配偶者との二重取りの3点
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不倫相手(浮気相手)に慰謝料を請求するときに問題になるのは、主に、①不倫相手が既婚と知っていた、または知ることができたか、②関係が始まった当時、夫婦の婚姻関係が破綻していなかったか、③配偶者への請求と重ならないか、の3点です。最高裁は、故意または過失がある限り、誘ったかどうかにかかわらず不倫相手は責任を負うとする一方、破綻後の関係や「離婚に伴う慰謝料」については責任を絞っています。配偶者と不倫相手は連帯して賠償する関係なので、両方から重ねて全額を受け取ることはできません。
不倫相手に慰謝料を請求できるのはどんなときか
基本になるのは最高裁昭和54年3月30日判決です。配偶者のある人と性的関係を持った第三者は、故意または過失がある限り、相手を誘惑したかどうか、関係が自然な愛情から生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者が受けた精神的苦痛を慰謝する義務があるとされました。「誘ってきたのは夫(妻)の方だ」という言い分だけでは、不倫相手の責任はなくなりません。
一方で、責任が絞られる場面もあります。
| 場面 | 最高裁の考え方 | 請求する側が備えること |
|---|---|---|
| 既婚と知らず、知ることもできなかった | 故意・過失がなければ責任を負わない(昭和54年判決の「限り」) | 既婚と分かる状況だった事実を集める |
| 関係の当時、すでに婚姻関係が破綻していた | 特段の事情のない限り責任を負わない(平成8年判決) | 当時の同居・会話・家計の様子を説明できるようにする |
| 「破綻していると信じた」と主張された | 信じる相当の理由があったかまで検討する(令和8年判決) | 相手が何を見聞きしていたかを確かめる |
| 離婚に至ったことの慰謝料を求めたい | 特段の事情がない限り請求できない(平成31年判決) | 不貞行為そのものの慰謝料として組み立てる |
条件の全体は慰謝料請求の条件の記事、離婚との関係は離婚の慰謝料と不倫の慰謝料の違いの記事で詳しく扱っています。
既婚と知っていたか:不倫相手の「知らなかった」に備える
不倫相手への請求で最も争われやすいのが、既婚の認識です。不倫相手から「独身だと聞いていた」「離婚したと言われていた」と返されることは珍しくありません。2026年6月5日の最高裁判決では、不倫相手が配偶者から離婚の意思を伝えられ、配偶者が自分の欄を書いた離婚届や夫婦間のメールを見せられていた事件で、婚姻関係が破綻していると信じる相当の理由があったかを検討するよう、審理のやり直しが命じられました。
請求する前に、不倫相手が既婚と知り得た事実を書き出しておきます。
- 職場の同僚・取引先など、既婚かどうかが周囲に知られていた関係か
- 配偶者が子どもや家族の話を相手にしていたか、家族の予定に合わせて会っていたか
- 結婚指輪、家族写真のある持ち物、休日に会えない理由の説明
- 既婚と知った後も関係を続けていたことが分かるメッセージ
反対に、配偶者が独身と偽っていた形跡があるなら、それも隠さず弁護士に伝えます。相手の反論にどう向き合うかは不倫相手が既婚者と知らなかったと言うときの記事で整理しています。
配偶者への請求との関係:連帯と二重取りの線
不倫をした配偶者と不倫相手は、民法719条1項の共同不法行為として、各自が連帯して賠償する関係にあります。請求する側から見ると、どちらに請求しても、両方に請求してもかまいません。ただし受け取れるのは損害の分までで、一方から支払いを受けると、もう一方に請求できる範囲がその分変わります。
| 場面 | よく考えられる組み合わせ | 注意する点 |
|---|---|---|
| 離婚しない | 不倫相手にだけ請求する | 不倫相手から配偶者への求償で、家計から一部が出ていくことがある |
| 離婚する | 配偶者に離婚の慰謝料、不倫相手に不貞行為そのものの慰謝料 | 二人から受け取る額の合計が損害の分を超えないか |
| 配偶者からすでに受け取った | 不倫相手への請求を考え直す | 受け取った額と示談書の清算条項の範囲 |
| 不倫相手が先に払った | 配偶者への請求の範囲を確かめる | 求償しない約束(求償権の放棄)があるか |
不倫相手が払った後、配偶者に負担を求めることを「求償」といいます。求償は719条には書かれておらず、判例と解釈の話になるので、不倫の求償権の記事で別に扱っています。両方に請求するときの線は配偶者と不倫相手の両方に慰謝料を請求できるかの記事が詳しく、次に読む記事として用意しています。
不倫相手に請求する前に整理すること・避けること
請求を始めるには、不倫相手の氏名と連絡先が要ります。民法724条の時効も、損害と加害者を知った時から3年で、「加害者を知った」かどうかに相手の特定が関わります。相手を特定する方法の注意は浮気相手を特定したいときの記事にまとめています。金額については、法律にも公的な統計にも基準の表がありません。ネットで見る数字の読み方は不倫慰謝料の相場の記事で扱っています。
請求の進め方は、書面で請求して話し合う、まとまらなければ訴訟を起こす、という流れが基本です。不倫相手への慰謝料の訴えは、請求額が140万円以下なら簡易裁判所、超えると地方裁判所が扱います(裁判所法33条)。140万円以下の争いであれば、認定を受けた司法書士も交渉や簡易裁判所の訴訟を代理できます(司法書士法3条)。140万円は裁判所と資格の範囲の線で、慰謝料の目安ではありません。手続の流れは不倫慰謝料の請求方法の記事へ進んでください。
避けたいのは、怒りにまかせた手段です。刑法は、公然と事実を示して人の名誉を傷つける行為(230条)や、名誉や財産に害を加えると告げて脅す行為(222条)を罰する条文を置いています。相手の職場に知らせる、SNSに書く、「払わなければ家族にばらす」と迫るといった行動は、請求する側が責任を問われるおそれにつながります。連絡するときの注意は浮気相手に連絡するときの注意の記事、名誉毀損の線は不倫を周囲に知らせると名誉毀損になるかの記事で確かめてください。
不倫相手から逆に脅されている、押しかけられているといった危険があるときは、請求の準備より身の安全を先にします。窓口の使い分けは不倫で脅されたときの記事へ進んでください。請求できる場面から相談先までの全体は浮気・不倫の慰謝料とは?請求できる場面・金額の決まり方・進め方の全体像で見渡せます。
よくある質問
Q. 不倫相手の住所が分からないときも、慰謝料を請求できますか?
請求する権利があるかどうかと、相手の住所を知っているかどうかは別の問題です。ただ、書面を送るにも調停や訴えを起こすにも相手の住所が要ります。自分で調べ回ると別のトラブルになりやすいので、使える正当な手段を先に確かめます。
Q. 配偶者とは離婚しないつもりです。それでも不倫相手だけに請求してよいのですか?
不倫相手だけに請求すること自体は、民法719条の連帯の考え方から可能です。ただ、不倫相手が払った後に配偶者へ負担を求める「求償」をすると、同じ家計から一部が出ていく形になることがあります。示談で求償しない約束を入れるかどうかも含めて、請求の前に弁護士と考えておきます。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第709条・第710条・第719条・第724条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 最高裁判所 昭和54年3月30日 第二小法廷判決(裁判所)
- 最高裁判所 平成8年3月26日 第三小法廷判決(裁判所)
- 最高裁判所 令和8年6月5日 第二小法廷判決(裁判所)
- 最高裁判所 平成31年2月19日 第三小法廷判決(裁判所)
- 裁判所法 第33条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 司法書士法 第3条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 刑法 第222条・第230条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。