浮気の誓約書に効力はある?違約金や離婚の約束が問題になる場面
浮気の誓約書は、当事者が内容に合意して署名したものであれば、約束(契約)として守る義務が生じるのが原則です。書面に本人の署名があれば、その人の意思で作られたと推定されるため(民事訴訟法228条4項)、後から「そんな約束はしていない」と争われにくくなります。ただし、極端に高い違約金、離婚や親権を前もって決める約束、生活を過度に縛る条項、脅して書かせたものは、効力が問題になりやすい場面です。2026年4月1日からは、夫婦の間の契約を「いつでも取り消せる」としていた民法の規定が削除されたので、古い解説をうのみにしないよう注意してください。
浮気の誓約書の効力は3つに分けて考える
「誓約書に効力はあるか」という問いには、実は3つの意味が混ざっています。どれを知りたいのかを分けると、答えがはっきりします。
| 効力の意味 | 普通の誓約書(署名のある私文書) | 強制執行認諾つきの公正証書 |
|---|---|---|
| 約束として守る義務 | 合意した内容は守る義務がある。ただし無効・取り消しの理由があれば別 | 同じ |
| 証拠としての力 | 本人の署名か押印があれば、本人の意思で作られたと推定される(民事訴訟法228条4項) | 公文書なので、さらに強い証明力がある |
| 強制執行の力 | ない。支払われなければ、調停や訴訟で別に判断を得る必要がある | 一定額の金銭の支払いなら、裁判を経ずに強制執行できる(民事執行法22条5号) |
つまり、普通の誓約書でも約束としての効力や証拠としての価値はありますが、「書いてあるから相手の財産をすぐ差し押さえられる」という力まではありません。お金の支払いを強制執行できる形にしたい場合の手続きは、浮気の誓約書を公正証書にできる?公証役場でできること・できないことで扱います。
効力が問題になりやすい条項
次のような条項は、誓約書に書いてあっても、そのとおりの効力が認められるとは限りません。どれも個別の事情で結論が変わるので、自分の書面に当てはまるかは弁護士に確かめてください。
| 条項の例 | 問題になりやすい理由 | 関係する決まり |
|---|---|---|
| 「次に浮気したら違約金1億円」 | 損害賠償の額は前もって決められるが、極端な額は公序良俗との関係で争われうる | 民法420条(賠償額の予定)、90条(公序良俗) |
| 「次に浮気したら離婚する」「署名済みの離婚届を預ける」 | 協議離婚は離婚届が受理されて成立する。相手は不受理申出で届出を止められる | 民法763条・764条、戸籍法27条の2 |
| 「浮気したら親権は渡す」 | 親権者は離婚のときの協議や裁判で決まり、家庭裁判所は子の利益のために親権者を変更できる | 民法819条1項・6項・7項 |
| 「養育費は一切求めない」 | 養育費は事情が変われば協議や調停で変更でき、「一切解決済み」の条項にも将来の変更を妨げる効果まではないと説明されている | 民法766条、日本公証人連合会「離婚」Q7・Q8 |
| 「スマホを毎日見せる」「仕事を辞める」「実家に帰らない」 | 人の自由を過度に縛る約束は、公序良俗に反するとして効力を争われうる | 民法90条 |
| 脅して書かせた誓約書 | 強迫による意思表示は取り消すことができる | 民法96条1項 |
違約金の金額について、法律は「いくらまでなら有効」という線を決めていません。だからこそ、金額を書く前に弁護士に相談しておくと、後で全部が争いになる事態を避けやすくなります。浮気相手に書いてもらう場合の違約金の書き方は浮気相手に誓約書を書いてもらうとき、配偶者との誓約書の項目は浮気・不倫の誓約書の書き方で扱っています。
夫婦の間の誓約書は「いつでも取り消せる」のか
インターネット上には、「夫婦の間の約束は、婚姻中ならいつでも取り消せるので、誓約書は意味がない」という解説が残っています。これは改正前の民法754条(夫婦間の契約の取消権)を前提にした説明です。
- 改正前:民法754条は「夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる」と定めていました。
- 改正後:2026年4月1日に施行された民法の改正(令和6年法律第33号)で、この規定は削除されました。法務省のパンフレットも、夫婦の間で結んだ契約をいつでも一方的に取り消せるとしていた規定を削除した、と説明しています。現在の民法では、753条と754条は「削除」となっています。
- 改正前に書いた誓約書:この改正の附則2条は、改正後の規定を施行前に生じた事項にも適用することを原則にしつつ、改正前の規定によってすでに生じた効力は妨げないとしています。施行前にすでに取り消しをしていた場合など、個別の扱いは弁護士に確かめてください。
夫婦の間の誓約書でも、ほかの契約と同じように、無効や取り消しの理由がないかで効力を考える、というのが今の出発点です。
書き方で変わる証拠としての力
効力があっても、後で中身を示せなければ役に立ちません。次の点を押さえると、誓約書の証拠としての価値が上がります。
- 本人の自筆の署名:本文は印刷でもよいので、氏名は本人に書いてもらいます。署名か押印のどちらかがあれば、本人の意思で作られたと推定されます。
- 作成日:いつの約束かが分からないと、違反の前か後かで争いになります。日付を入れ、空欄を残しません。
- 約束の中身を特定する:「今後は誠実に生きる」のような抽象的な文だけでは、何が違反なのかを判断できません。「○○と連絡を取らない」のように行動で書きます。
- 2通作るか写しを渡す:原本は自分が持ち、相手には写しを渡します。原本の保管場所は浮気の念書と誓約書の違い:書いてもらう内容と保管のしかたで扱います。
- お金の支払いを認める文がある場合:相手が支払い義務を認めた書面は、時効の「承認」(民法152条)として扱われることがあります。当たるかどうかは個別の判断です。
| 確かめること | はい/いいえ |
|---|---|
| 本人が自筆で氏名を書いている | |
| 作成日が入っている | |
| 誰が誰に何を約束したかが読み取れる | |
| 約束が行動の形(〜しない・〜する)で書かれている | |
| 違約金の額を弁護士に見てもらった | |
| 離婚・親権・養育費を前もって縛る文が入っていない | |
| 署名の場で脅したり、急がせたりしていない | |
| 原本と写しを別々の場所に保管している |
効力に不安があるときの相談先と順番
すでに書いてもらった誓約書の効力が心配なとき、またはこれから作る文案に不安があるときは、次の順番で動くと迷いにくくなります。
- 原本と書いた日の状況を整理する:誰がどこで書いたか、同席者、話し合いにかかった時間をメモにします。
- 問題になりそうな条項に印をつける:上の表に当てはまる条項がないかを見ます。
- 弁護士に見てもらう:条項が有効かどうか、どう直せばよいかは個別の判断なので、弁護士に相談します。相談の前に用意するものは弁護士に相談する前の準備にまとめています。
- 公正証書にするか考える:お金の支払いを強制執行できる形にしたい場合は、公証役場に相談します。
- 破られたときの準備をしておく:違反があったときの記録の取り方は浮気の誓約書に違反されたらで整理しています。
誓約書は、相手の気持ちまで縛れるものではありません。書面の効力を確かめることと並んで、話し合いで何を決めるかが大切です。発覚から書面に進むまでの流れは浮気が発覚したらすることで、どこに相談するか迷うときは浮気・不倫の相談先一覧で確かめてください。
よくある質問
Q. 浮気の誓約書を書かず、口約束だけで済ませた場合も効力はありますか?
契約は、法令に特別の定めがある場合を除き、書面がなくても成立します(民法522条2項)。ただ、口約束は「言った・言わない」の争いになりやすく、どんな約束だったかを示すのが難しくなります。後で約束の中身が問題になりそうなら、短くてもよいので日付と署名のある書面に残しておくと安心です。
Q. 浮気の誓約書に有効期限はありますか?
約束をいつまで守るかは、誓約書に書いた内容で決まります。期間を書いていないと、いつまで守る約束なのかで争いになりやすいので、作るときに期間を決めて書いておくほうが安全です。一方、違約金のように誓約書にもとづいてお金を求める権利は、一般に民法166条の債権の時効(権利を行使できると知った時から5年、行使できる時から10年)で考えられます。違反があったら、間を空けずに記録と相談を始めてください。
Q. 相手が「無理やり書かされた」と言い出したら、誓約書は無効になりますか?
強迫による意思表示は取り消すことができる(民法96条1項)ので、本当に脅して書かせたのなら、取り消されるおそれがあります。反対に、内容を読んで考える時間があり、自分の意思で署名したのなら、その事情が判断の材料になります。書いてもらった日の場所・同席者・かかった時間・持ち帰って検討したかをメモしておくと、後で説明しやすくなります。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第90条・第96条・第152条・第166条・第420条・第522条・第766条・第819条、旧第754条の削除と附則第2条(令和6年法律第33号)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事訴訟法 第228条(文書の成立)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事執行法 第22条(債務名義)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 戸籍法 第27条の2(不受理の申出)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後の子の養育に関する見直し)パンフレット「その他の改正」(法務省)
- 離婚(Q2 協議離婚の効力、Q7・Q8 養育費の変更)(日本公証人連合会)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。