養育費を払わないなら面会させない?養育費と親子交流の関係
養育費の支払いと親子交流(面会交流)は、民法の上でも手続の上でも別々の取り決めです。「払わないなら会わせない」「会わせないなら払わない」と一方を条件にして止める定めは、民法にありません。養育費が止まったときは履行勧告や差押えなど養育費の手続で、会えなくなったときは親子交流調停などの手続で、それぞれ別に対応します。この記事は、その整理と、場面別の動き方、連絡の文例をまとめます。
民法は養育費と親子交流を「並んだ別々の項目」として定めている
民法766条1項は、父母が協議で離婚するとき、子の監護について必要な事項を協議で定めると規定しています。その項目として、親権と別に「父又は母と子との交流」と「子の監護に要する費用の分担」が並んでいます。子の監護に要する費用が養育費、父又は母と子との交流が親子交流(以前の呼び方は面会交流)です。条文は、この場合に「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」としています。離婚前の別居中でも、817条の13で子との交流を定められます。
| 項目 | 民法の根拠 | 決めるときの考え方 | 話し合いがまとまらないとき | 申立ての費用 |
|---|---|---|---|---|
| 養育費 | 766条1項(子の監護に要する費用の分担) | 父母の収入、子の年齢・人数などを見る。算定表が目安として参照される | 養育費請求調停。不成立なら審判へ | 収入印紙は子1人につき1,200円分と郵便切手 |
| 親子交流 | 766条1項(父又は母と子との交流)、別居中は817条の13 | 子の年齢、性格、就学、生活環境、子の意見・意向を尊重 | 親子交流調停。不成立なら審判へ | 収入印紙は子1人につき1,200円分と郵便切手 |
つまり、一方を決める基準に、もう一方の事情は条文上入っていません。裁判所の2つのページも、養育費請求調停と親子交流調停を別の手続として案内しています。離婚前なら、夫婦関係調整調停(離婚)の中で、親権、養育費、親子交流、財産分与、慰謝料を一緒に話し合えますが、取り決めの書面には、項目を分けて書きます。
「払わないなら会わせない」の前に知っておきたいこと
法務省は、改正民法のQ&A(民法編)で、父母の義務違反と評価されうる行為の例を挙げています。親子交流の取り決めがあるのに、正当な理由なく実施を拒むことは、個別の事情によっては、父母の子に対する人格尊重義務に違反すると評価される場合がある、というのが一例です(Q1-3)。養育費や親子交流などの協議を正当な理由なく一方的に拒むことも、父母相互の人格尊重・協力義務(民法817条の12第2項)に違反すると評価される場合があるとされています(Q2-1)。
これは、拒めばいつも違反になるという意味ではなく、個別の事情によるものです。養育費が長く払われていない側にとって、会わせたくない気持ちが生じるのは自然ですが、会わせないという選択が後から評価される場面があることは知っておく必要があります。
逆に、養育費を払う側にも注意点があります。法務省のQ&Aは、正当な理由なく長期間養育費を払っていなかった事情は、共同親権への変更を求める場面で、認められない方向に大きく働くと考えられると説明しています(Q3-17)。会えないことを理由に支払いを止めるのは、未払いの積み上がり(時効の考え方は養育費の時効:取り決めの形で変わる期間と未払い分の考え方)や、差押えのほか、親権の場面でも不利に働きうるという意味で、避けたほうがよい動きです。
場面別:どちらの手続を使うか
| あなたの状況 | 養育費について | 親子交流について |
|---|---|---|
| 受け取る側で、養育費が止まっている | 取り決めが調停・審判なら履行勧告、公正証書なら差押え。取り決めがなければ養育費請求調停 | 取り決めがあれば、実施を続けるかを子の様子で別に考える。止めると決めるなら、理由と日付を記録に残す |
| 払う側で、子に会わせてもらえない | 取り決めた額と期日の支払いは続ける。収入が減ったなど事情が変わったときは、増額・減額の調停を申し立てる | 取り決めがあれば履行勧告を申し出る。なければ親子交流調停(子1人につき収入印紙1,200円分) |
| どちらの取り決めもない | 養育費請求調停 | 親子交流調停。離婚前なら夫婦関係調整調停の中で一緒に話し合える |
履行勧告は、家庭裁判所の調停・審判・人事訴訟で定めた取り決めを守らない人に、家庭裁判所が守るよう勧告する制度です。費用は無料で、書面・口頭・電話で申し出られます。ただし、勧告に応じない相手に履行を強制する力はありません。公正証書や、父母が作った合意書だけの取り決めは対象になりません。養育費を強制的に回収する手続は養育費の強制執行の流れ:給与の差押えの手続きと必要な書類の一覧に、全体の使い分けは養育費を払わない相手には:先取特権・強制執行と相談先の使い分けにあります。
親子交流調停の進み方と、もめたときの話し方
親子交流調停は、父または母が、相手方の住所地の家庭裁判所か合意で決めた家庭裁判所に申し立てます。書類は申立書とその写し1通、未成年の子の戸籍謄本、事情説明書(親子交流)、進行に関する照会回答書、送達場所等届出書です。調停では、頻度、日時、場所などの具体的な内容と、交流のときに父母が気をつける点についての裁判所からの助言が扱われます。不成立なら審判の手続に移ります。
家庭裁判所は、子の心身の状態に照らして相当でない事情がなく必要があるときに、子との交流を試しに実施するよう当事者に促すことができます(家事事件手続法152条の3、258条3項)。促す仕組みで、強制ではありません。裁判所は、父母向けのビデオ「子どもにとって望ましい話し合いとなるために」も案内しています。
連絡は、2つを混ぜずに書くと、こじれにくくなります。
文例(受け取る側):「○月分から○月分の養育費が入金されていません。取り決めのとおり、○月○日までにお支払いください。○○との交流の日程は、別に相談させてください。」
文例(払う側):「○月の○○との交流が実施できていません。次回の日程と場所を、○月○日までに教えてください。養育費は取り決めのとおりお支払いします。」
どちらの文例も、相手の落ち度や気持ちへの非難は書かず、日付と金額、日程だけを書いています。やりとりは、日付が残るメールやメッセージで行い、調停になったときの資料にします。
暴力やおどしがあって会うのが怖いなど、安全に不安がある場合は、取り決めより先に安全の確保を考えてください。調停の申立書の写しが相手に送られる点や、住所を知られたくないときの制度は、DVがあるときの離婚調停で整理しています。相談窓口の番号と受付時間は、浮気・不倫の相談先一覧:悩み別の窓口と番号・受付時間の早見表で選べます。
子が会いたくないと言うときや、会わせたくない事情があるときの考え方は親子交流(面会交流)を拒否したい・拒否されたとき:考え方と調停で詳しく扱います。お金の全体像は浮気が原因の離婚とお金:婚姻費用・養育費・財産分与・慰謝料の全体像で見渡せます。
よくある質問
Q. 養育費を払っていない相手でも、子と会わせないといけませんか?
民法は、養育費と親子交流を766条1項で別々の項目として並べ、どちらも子の利益を最も優先して考えると定めています。養育費の不払いを理由に親子交流を止めてよいという条文はありません。会わせるかどうかは、取り決めの内容と子の様子で考え、迷うときは親子交流調停で第三者の目を入れる道があります。
Q. 子に会わせてもらえないので、養育費を止めてもいいですか?
養育費の支払義務は、取り決めた内容にもとづくものです。会えないことを理由に止めても、支払義務そのものは残り、未払いが積み上がって差押えの対象になることがあります。会えない問題は、親子交流調停や履行勧告で別に解決を図ります。事情が変わって額を見直したいときは、養育費の増額・減額の調停という手続があります。
Q. 子どもが「会いたくない」と言っています。どうすればよいですか?
裁判所の親子交流調停は、子の年齢、性格、生活環境などを考え、子の意見や意向を適切に尊重した取り決めを目指すと案内しています。子が会いたくない理由を責めずに聞き、取り決めの回数や方法を見直す話し合いを進めます。拒否が続くときの考え方は、親子交流を拒否したい・されたときの記事で扱います。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第766条・第817条の12・第817条の13(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 親子交流調停(裁判所)
- 養育費請求調停(裁判所)
- 履行勧告手続(裁判所)
- 家事事件Q&A(親子交流、養育費/婚姻費用分担)(裁判所)
- 民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)Q&A 民法編(Q1-3・Q2-1・Q3-17)(法務省)
- 家事事件手続法 第152条の3(親子交流の試行的実施)・第258条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。