親子交流(面会交流)を拒否したい・拒否されたとき:考え方と調停
会わせたくない、会いたくないという気持ちだけでは、拒む理由として足りるとは限りません。 一方で、子の安全が心配な場合は、安全の確保が先で、会い方に条件を付ける方法があります。法務省のQ&Aは、父母間で親子交流の取り決めがあるのに、正当な理由なく実施を拒む場合を、個別の事情によっては子の人格尊重義務に反すると評価されうる例に挙げています。分かれ目は「子の利益に関わる理由かどうか」です。この記事では、拒否したい側と拒否されている側の両方について、考え方と使える手続を整理します。
拒否が問題になる場面:正当な理由と、評価されうる場面
民法には、親子交流を拒める理由の一覧はありません。法務省のQ&Aは、個別具体的な事情に即して判断されると説明したうえで、次のような場合に、事情によっては義務に違反すると評価されうるとしています。
- 父母間で親子交流の取り決めがあるのに、子の意見等にかかわらず、一方が正当な理由なく実施を拒む(子に対する人格尊重義務、民法817条の12第1項に関わる)
- 協議や調停・審判で定められたのに、一方が正当な理由なく履行しない(父母相互の協力義務、同条2項に関わる)
- 養育費や親子交流など子の養育に関する協議を、正当な理由なく一方的に拒否する
同じQ&Aは、子に対する義務に違反した場合、親権者の指定や変更の審判、親権喪失・親権停止の審判などで、その内容が考慮される可能性があるとも述べています。「評価されうる」「考慮される可能性がある」という書き方で、拒否したら自動的に不利になるという意味ではありません。
| 拒否したい理由の例 | 子の利益との関係 | 考え方・次の一歩 |
|---|---|---|
| 子や自分への暴力、虐待のおそれ | 子の安全に直結する | 安全が先。窓口に相談し、調停では顔を合わせない工夫を求める |
| 相手の暴言、子を連れ去るおそれ | 子の心身に関わる | 場所・時間・立会いなどの条件を付ける方向で調停を使う |
| 子が強く嫌がっている | 子の意向。年齢と理由で重みが変わる | 理由を聞き取り、短時間・電話など負担の小さい形から |
| 相手の浮気への怒り、同席者への不安 | 親同士の感情。同席者の取り決めは別に可能 | 会わせない理由にせず、同席者や場所の条件で対応する |
| 養育費が払われない | 別の取り決めの問題 | 養育費の手続を別に進める |
養育費が払われないことを理由に親子交流を止めてよいかは、別の問題として整理が必要で、養育費を払わないなら面会させない?養育費と親子交流の関係で扱います。
DVや虐待の心配がある場合は、窓口の相談を先にしてください。身に危険が迫っているときは、先に110番に通報してください。窓口の番号と受付時間は浮気・不倫の相談先一覧:悩み別の窓口と番号・受付時間の早見表に、親権の判断への影響はDVがあるときの親権:単独親権と定めなければならない場合にまとめています。法務省のQ&Aも、DVや虐待がある場合に、できない協力を無理に強いるものではないと説明しています。
浮気相手との同席が不安というだけなら、全面的に拒むのではなく、同席者の条件で対応する道があります。面会交流に浮気相手を同席させたくないとき:取り決めでできることで詳しく扱います。
会わせたくないときの道:条件を付ける、段階をふむ
「会わせる」か「会わせない」かの二択にしないのが、現実的です。調停では、次のような条件を話し合えます。
- 時間を短くする、頻度を少なく始める
- 場所を決める(公共の場所、安全が確保できる場所)
- 受け渡しの方法を決める(顔を合わせない、第三者の立会いを入れる、など)
- 子の体調や気持ちを理由にした中止・変更の連絡ルールを決める
家庭裁判所には、子の監護に関する処分の調停や審判のなかで、子との交流の試行的実施を当事者に促す制度があります(家事事件手続法152条の3、258条3項)。促すときには、交流の方法、日時、場所、家庭裁判所調査官などの立会いの有無を定め、子の心身に有害な言動の禁止などの条件を付けられます。強制ではなく、子の心身の状態に照らして相当でない事情があるときは促されません。実施した結果の報告が求められます。
拒否されているときの手順
拒否されている側は、感情的なやりとりを避け、記録に残る形で進めます。
- 取り決めの形を確認する。 口約束、父母の書面、公正証書、調停調書・審判書のどれかで、取れる手段が変わります。
- 日程と条件の案を、文字で送る。 次のような文面なら、拒否の理由を聞き出しつつ、条件の相談に進めます。
文例:「次の土曜に会えるか、難しければ代わりの日を2つ教えてください。会うことに不安があるなら、場所や時間を短くするなど、条件を一緒に考えたいです。」
- 第三者に入ってもらう。 養育費・親子交流の相談支援センターや自治体の窓口で、手続や進め方を聞けます。違いは養育費・親子交流の相談先:相談支援センターと家庭裁判所の使い分けで整理します。
- 親子交流調停を申し立てる。 実費は収入印紙1,200円分(子1人につき)と郵便切手です。離婚前の別居中でも使えます。
- 取り決めが調停・審判で作られているなら、履行勧告を申し出る。 家庭裁判所が調査したうえで履行を促します。無料で、電話でもできますが、強制する力はありません。
取り決めがない場合は、手順4から始めます。取り決めの作り方は親子交流(面会交流)とは?決め方と取り決めておく内容にまとめました。
調停で何が話し合われるか
調停は、家庭裁判所の調停委員会(裁判官と調停委員)が間に入る話し合いです。親子交流の調停では、子の年齢、性格、就学の有無、生活のリズム、生活環境などを考え、子に精神的な負担をかけないよう配慮して進みます。子の意見・意向は、年齢や発達の程度に応じて尊重されます。調停の中で、父母が交流のときに注意する点について、裁判所から助言されることもあります。裁判所は、父母向けの動画「子どもにとって望ましい話し合いとなるために」も案内しています。
調停は相手の出席と協力が前提です。相手が出席しない場合や合意できない場合は、調停は不成立で終わります。親子交流の調停が不成立になると、審判の手続が自動的に始まり、裁判官が判断します。子が15歳以上なら、審判では子の陳述が聴かれます(家事事件手続法152条2項)。
相手と同じ部屋で話すのが怖い場合は、ウェブ会議の利用や、裁判所構内で顔を合わせないための工夫が検討されることがあります。住所を知られたくない場合には、秘匿の申立ての制度もあります。具体的な手続はDVがあるときの離婚調停:顔を合わせない工夫と安全のための申出で取り上げます。
自分で判断しにくいとき
「この理由で拒んでよいか」「この条件を求めてよいか」は、子の年齢や経緯によって変わり、個別の判断になります。弁護士に相談するなら、取り決めの有無と形、これまでの経緯、子の様子を整理して持っていきます。費用が心配なときは、法テラスとは?浮気・離婚の相談で使える無料相談と費用の立替えの条件を参考にしてください。子に浮気をどう伝え、どう過ごさせるかは浮気と子供:影響を小さくするために親ができることと決めることで続けます。
よくある質問
Q. 子どもが「会いたくない」と言うときは、会わせなくてもよいですか?
子の意見は尊重されますが、それだけで結論が決まるわけではありません。法務省のQ&Aは、子の人格を尊重することは常に子の意向に沿うことではないと説明しています。理由を子の年齢に合わせて聞き取り、短い時間や電話から始めるなど、負担の小さい形を相談します。調停では、子の意見や意向を適切に尊重した取り決めを目指して話し合われます。
Q. 取り決めがあるのに会わせてもらえないときは、どうしますか?
取り決めが家庭裁判所の調停や審判で作られたものなら、その家庭裁判所に履行勧告を申し出られます。費用はかからず、書面・口頭・電話でできます。履行を強制するものではありません。父母の書面や公正証書で決めた場合は履行勧告の対象外なので、改めて親子交流調停を申し立てる方法を検討します。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第817条の12・第817条の13(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 家事事件手続法 第65条・第152条・第152条の3・第258条・第272条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 親子交流調停(申立人・申立先・費用・書類)(裁判所)
- 履行勧告(家庭裁判所で定められた取決めを守らない場合)(裁判所)
- 家事事件Q&A(調停手続一般・ウェブ会議の利用・親子交流の調停)(裁判所)
- 住所・氏名等の秘匿制度(裁判所)
- 父母の離婚後等の子の養育に関する見直しQ&A(民法編。Q1-2・Q1-3・Q1-5・Q2-1・Q2-4)(法務省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。