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熟年離婚で慰謝料を考えるとき:長年の不倫が分かった場合の整理

この記事のもくじ
  1. 熟年離婚の慰謝料:長年の不倫と時効の考え方
  2. 慰謝料・財産分与・年金分割は別々の制度
  3. 年金分割の仕組みと期限
  4. 慰謝料と財産分与を受け取るときの税金
  5. 熟年離婚で慰謝料を求める前に考えること

熟年離婚で慰謝料を考えるときは、慰謝料と、財産分与・年金分割を分けて、それぞれの期限を確かめることから始めます。長年の不倫が分かった場合、慰謝料には「知った時から3年」「行為の時から20年」という時効があり、配偶者への請求には離婚から6か月までは時効が完成しない特例もあります。一方、老後の生活を左右するのは、慰謝料よりも財産分与と年金分割であることが少なくありません。この記事では、時効の考え方と、慰謝料以外のお金との関係を順に整理します。

熟年離婚の慰謝料:長年の不倫と時効の考え方

慰謝料は民法709条・710条にもとづく損害賠償で、民法724条により、次のどちらかで時効にかかります。

  • 損害と加害者を知った時から3年、請求しないとき
  • 不法行為の時から20年、請求しないとき

長年の不倫が最近分かった場合、3年は「知った時」から数えるので、発覚が最近なら数え始めも最近になります。問題になりやすいのは20年のほうです。関係が始まったのが20年以上前でも、その後も続いていたのか、ずっと前に終わっていたのかで、見え方が変わりえます。関係の始まりと終わりの時期を示す材料をそろえておくことが大切です。

さらに古い不倫には、経過措置があります。20年の期間は、2020年4月1日施行の改正で「時効」と明記されました。改正法の附則35条1項は、施行の時にすでに改正前の期間が経過していた場合は従前の例によるとしています。筆者の計算では、おおむね2000年3月以前の行為がこれに当たる可能性があります。個別の扱いは弁護士に確かめてください。

配偶者に対する請求には、もう一つ大切な条文があります。民法159条は、夫婦の一方が他方に対して持つ権利は、婚姻の解消の時から6か月を経過するまで時効が完成しないと定めています。つまり、夫や妻への慰謝料の請求権は、婚姻中に3年が過ぎても、離婚から6か月の間は消えません。この特例は不倫相手への請求には及ばない点に注意してください。数え方の基本は不倫の慰謝料の時効の記事、期限が迫っているときの対応は時効が迫っているときの記事にあります。

慰謝料・財産分与・年金分割は別々の制度

熟年離婚で問題になるお金は、主に次の3つです。根拠も期限も違うので、まとめて「慰謝料」と呼ばずに分けて考えます。

比較表:熟年離婚で考える3つのお金
項目 何のためのお金か 根拠 請求の期限 浮気との関係
慰謝料 不倫などで受けた精神的苦痛の賠償 民法709条・710条 知った時から3年・行為から20年(配偶者へは離婚から6か月の特例) 不倫が直接の理由になる
財産分与 婚姻中に築いた財産の清算など 民法768条 家庭裁判所への請求は離婚の時から5年(2026年3月31日以前の離婚は2年) 条文の考慮事項に浮気は挙がっていない
年金分割 婚姻期間中の厚生年金の記録を分ける 厚生年金保険法 離婚の翌日から5年(2026年4月1日前の離婚は2年) 浮気の有無とは別に手続できる

婚姻期間が長いほど、夫婦で築いた財産は大きくなりやすく、財産分与の重みが増します。民法768条3項は、婚姻中に取得・維持した財産の額と各自の寄与の程度、婚姻の期間、生活水準、年齢、心身の状況などを考慮すると定め、寄与の程度が違うことが明らかでないときは等しいものとしています。退職金がどう扱われるかは財産分与で退職金は対象になるかの記事、財産分与の基本は財産分与とは何かの記事で扱います。

年金分割の仕組みと期限

年金分割は、婚姻期間中の厚生年金の記録(標準報酬)を夫婦で分ける手続です。日本年金機構の案内では、次の2種類があります。

種類 対象 相手の合意
合意分割 婚姻期間中の厚生年金の記録。按分の割合は合意か裁判所の手続で決める 必要(まとまらなければ裁判所が割合を定められる)
3号分割 2008年(平成20年)4月1日以後の婚姻期間のうち、国民年金の第3号被保険者だった期間 不要(第3号だった人の請求で2分の1ずつ)

按分の割合は、厚生年金保険法78条の3で、二人の記録の合計のうち最大で2分の1までと決まっています。分割されるのは厚生年金の報酬比例部分で、国民年金の老齢基礎年金は変わりません。また、分割を受けても、自分の年金を受け取れる年齢や受給資格を満たすまでは受け取れません。

熟年離婚で役に立つのが、離婚の前でも年金事務所に「年金分割のための情報提供請求」ができることです。50歳以上の人は、希望すれば分割後の年金見込額も知らせてもらえます。離婚後の生活費の見通しを立てる材料になるので、慰謝料の話を始める前に取り寄せておくと判断がしやすくなります。手続の流れは年金分割とは何かの記事を読んでください。

慰謝料と財産分与を受け取るときの税金

お金を受け取るときの税金も、制度ごとに国税庁の案内が分かれています。

  • 慰謝料:心身に加えられた損害について受け取る慰謝料は、所得税法の規定により原則として非課税です(国税庁タックスアンサー1700番)。
  • 財産分与:離婚で財産をもらっても、原則として贈与税はかかりません。ただし、分与された額が多すぎる部分や、税を免れるための離婚と認められる場合は贈与税がかかります(国税庁タックスアンサー4414番)。

慰謝料という名目でも、実質が財産の清算や贈与と見られる場合は扱いが変わりえます。不動産で受け取る、額が大きいといった場合は、合意の前に税務署や税理士に確かめてください。受け取る側・払う側の扱いは慰謝料に税金はかかるかの記事で整理しています。

熟年離婚で慰謝料を求める前に考えること

長年の不倫が分かると、怒りから「慰謝料をできるだけ多く」と考えがちです。ただ熟年離婚では、離婚後の住まいと収入が、慰謝料の額以上に暮らしを左右します。次の順で書き出してから、弁護士に相談すると話が整理しやすくなります。

  1. 不倫が分かった日と、関係が始まった・終わったと考える時期
  2. 婚姻した日と、別居している場合はその日
  3. 夫婦の財産(家、預金、退職金の見込み、保険)
  4. 年金分割の情報通知書の内容
  5. 離婚後に住む場所と、毎月の収入の見通し
  6. 離婚するか、別居や家庭内別居で様子を見るか

不倫をした配偶者の側から離婚を求められた場合は、最高裁昭和62年9月2日大法廷判決が、別居の長さ、未成熟の子の有無、相手が離婚で苛酷な状態に置かれるかなどを総合して判断するとしています。熟年の夫婦では子どもが成人していることが多く、この点も相談のときに伝えておきます。熟年離婚の全体は熟年離婚を考えるときの記事、熟年になって浮気されたときの気持ちと暮らしの整理は熟年になって浮気されたときの記事へ。請求するかどうか迷ったら、慰謝料請求で後悔しないための記事で目的と負担を確かめてください。別居の時期が関係する場合は別居中の不倫と慰謝料の記事も合わせて読んでください。

よくある質問

Q. 20年以上前の不倫が今になって分かりました。慰謝料はもう請求できませんか?

民法724条2号は、不法行為の時から20年たつと時効で消えると定めています。さらに、2020年4月1日の改正の時点ですでに20年が過ぎていた行為は、改正前の扱いになります。関係が最近まで続いていたなら事情が変わることもあるので、関係の始まりと終わりの時期を整理して弁護士に確かめてください。

Q. 慰謝料の代わりに、財産分与を多めにしてもらうことはできますか?

話し合いで、慰謝料の分を含めて財産を多めに分けると合意することはありえます。その場合も、どこまでが財産分与でどこからが慰謝料かを書面で分けておくと、後で争いになりにくくなります。国税庁は、分与が多すぎる部分には贈与税がかかることがあると案内しているので、額が大きいときは税務署にも確かめてください。

Q. 年金分割は、夫の年金の半分がもらえる制度ですか?

違います。分割されるのは婚姻期間中の厚生年金の記録で、国民年金(基礎年金)は対象外です。按分の割合も、二人の記録の合計のうち最大で半分までと法律で決まっています。50歳以上なら、情報提供請求の際に分割後の見込額を知らせてもらえます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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