DVがあった離婚の慰謝料:安全を先にした進め方と相談先
この記事のもくじ
DVと浮気があった離婚で慰謝料を考えるときは、お金の話より先に、身の安全を確保することが出発点です。慰謝料の請求は、別居や避難を済ませ、保護命令などの守りを固めてからでも始められます。慰謝料の相談は、配偶者暴力相談支援センターや法テラスを入口に、弁護士へつなげる道があります。この記事では、安全を先にした進め方の順番と、慰謝料を考えるときに押さえる法律の仕組みを示します。
いま危険が迫っているときは、110番に通報してください。 落ち着いて話せる窓口は次のとおりです。
- DV相談+:0120-279-889(電話は24時間。チャットは12時〜22時)
- DV相談ナビ:#8008(近くの配偶者暴力相談支援センターにつながる。受付はつながった先の時間内)
ほかの窓口と番号は浮気・不倫の相談先一覧にまとめています。
DVがあった離婚の慰謝料:最初にするのは安全の確保
相手が暴力をふるう状況で、慰謝料や浮気の話を切り出すと、暴力が強まるおそれがあります。浮気の証拠を集めようとして相手のスマホを触ったり、問い詰めたりすることも同じです。証拠集めや請求より、安全が先です。暴力がある相手の浮気の証拠をどう考えるかは暴力がある相手の浮気の証拠集めの記事にまとめました。
進め方の順番は、おおむね次のとおりです。
| 順番 | すること | 相談先・手続 |
|---|---|---|
| 1 | 危険が迫れば110番。そうでなければ相談窓口に話す | 110番、DV相談+、#8008 |
| 2 | けがの受診、記録(日時・内容)、持ち出す物の準備 | 配偶者暴力相談支援センター |
| 3 | 避難・別居、住所を知られないための手続 | センターの一時保護の相談、市区町村のDV等支援措置 |
| 4 | 必要なら保護命令の申立て | 地方裁判所(センターが申立ての情報提供・助言) |
| 5 | 離婚・慰謝料・親権・生活費の相談 | 法テラス、弁護士 |
配偶者暴力相談支援センターは、DV防止法3条で、相談、緊急時の安全の確保と一時保護、自立のための情報提供、保護命令制度の利用についての情報提供などを行うとされています。DV防止法のいう「配偶者からの暴力」には、身体への暴力だけでなく、これに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動も含まれ(1条)、事実婚の相手も配偶者に含まれます。「殴られてはいないから」と遠慮せずに相談できます。避難の具体的な準備はDVから逃げる準備の記事、暴力を受けた直後の動き方は浮気を問い詰めたら暴力を受けたときの記事を読んでください。
保護命令は慰謝料と別の手続:できることと要件
保護命令は、相手を近づけないために地方裁判所が出す命令です。家庭裁判所の調停とは別の手続で、慰謝料を決めるものではありません。DV防止法10条・10条の2が定める主な命令は次のとおりです。
| 命令 | 中身 | 期間 |
|---|---|---|
| 被害者への接近禁止命令 | 住居や勤務先の付近をうろつくこと、つきまといを禁止 | 1年 |
| 電話等禁止命令 | 面会の要求、連続した電話・メッセージ、夜間の連絡、承諾のない位置情報の取得などを禁止 | 接近禁止命令の期間内 |
| 子・親族等への接近禁止命令 | 子どもや親族へのつきまといを禁止(15歳以上の子などは本人の同意が必要) | 接近禁止命令の期間内 |
| 退去等命令 | 一緒に住む家から相手を退去させる | 2か月(住居の所有者・賃借人が被害者だけの場合は6か月) |
申し立てられるのは、身体に対する暴力か、生命・身体・自由・名誉・財産に害を加えると告げる脅迫を受け、さらに暴力などで生命または心身に重大な危害を受けるおそれが大きい場合です。なお、退去等命令は、脅迫の場合は生命または身体に害を加える旨の脅迫に限られ、「身体に重大な危害を受けるおそれ」が要件になります(10条の2)。申立書には、配偶者暴力相談支援センターや警察に相談した事実を書く欄があり(12条)、相談していない場合は公証人の認証を受けた書面が必要になります。内閣府のQ&Aは、手数料として1,000円が必要で、送達の費用なども予納すると案内しています。命令に違反した相手は、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金の対象です(29条)。
申立ての手続や書き方は保護命令とは何かの記事で詳しく扱います。センターに相談した記録は、申立書の記載にもつながるので、相談した日と窓口の名前をメモしておきます。
慰謝料の考え方:DVと浮気は別々の行為
DVと浮気がどちらもあった場合、慰謝料では二つを別々の行為として整理します。どちらも、民法709条(不法行為)と710条(財産以外の損害)が基本の条文です。
- 暴力そのもの:相手の身体を傷つける行為は、他人の権利を侵害する不法行為として損害賠償の対象になりえます。
- 浮気(不貞行為):配偶者の浮気は、最高裁の判断にそって、夫婦としての権利を侵す行為として問題になります。不倫相手に請求できる範囲には限りがあり、仕組みは浮気・不倫の慰謝料とは?請求できる場面・金額の決まり方・進め方の全体像で示しています。
- 離婚そのもの:暴力や浮気のために離婚せざるを得なくなったことの精神的苦痛も、配偶者に対して問題にされることがあります。
期限にも違いがあります。民法724条は、損害と加害者を知った時から3年、行為の時から20年で時効にかかると定めていますが、724条の2により、**人の生命または身体を害する不法行為では「3年」が「5年」**になります。暴力でけがをした場合と、浮気だけの場合とでは、期限の数え方が変わりうるということです。どれに当たるかは事情しだいなので、受診の記録や診断書を保管し、弁護士に確かめてください。
離婚の方法でも、暴力がある場合は配慮が要ります。調停で相手と顔を合わせるのが怖いときは、申立ての前にセンターや弁護士にその不安を伝え、進め方を相談しましょう。考え方はDVがあるときの離婚調停の記事へ。子どもがいる場合、民法819条7項は、暴力などで父母が共同して親権を行うことが難しいと認められるときは、一方を親権者と定めなければならないとしています。詳しくはDVがあるときの親権の記事で扱います。
慰謝料の相談はどこから始めるか
安全を確保したら、慰謝料・離婚・生活費をまとめて相談する段階に入ります。入口は一つでなくてかまいません。
| 入口 | できること | 注意すること |
|---|---|---|
| 配偶者暴力相談支援センター | 状況を整理し、法律相談の窓口や支援制度を紹介してもらう | 慰謝料の額の判断はしない。受付時間は施設ごと |
| 法テラス・サポートダイヤル | 相談できる窓口や、弁護士費用の立替えなどの制度を案内してもらう | 案内の窓口で、個別の法律判断はしない |
| 弁護士 | 慰謝料の見通し、相手との交渉、調停・訴訟の代理 | 相手と直接やりとりしたくないことを最初に伝える |
お金がないから弁護士に頼めない、と決めつける必要はありません。費用の立替えの条件は法テラスの使い方の記事で確かめられます。相談のときは、暴力の日時と内容、受診の記録、浮気が分かった経緯、子どもの年齢、収入の状況を、時系列で一枚にまとめて持っていくと話が早く進みます。
避難したあとに守るための手続
避難や別居のあとも、相手に新しい住所を知られない工夫が要ります。総務省のDV等支援措置は、警察や配偶者暴力相談支援センターなどに相談したうえで市区町村に申し出ると、相手が住民票の写しや戸籍の附票の写しを取ることを制限する仕組みです。期間は、市区町村から結果の連絡を受けた日から1年で、終わる1か月前から延長を申し出られます。延長を忘れると切れるので、手帳などに期限を書いておきましょう。
別居中の生活費や、浮気をめぐる慰謝料の話を進める段階でも、相手と直接会わずに済む方法を選ぶことが大切です。連絡は弁護士を通す、受け取りの口座を新しくする、子どもの学校への連絡のしかたを相談する、といった工夫を、支援センターや弁護士と一緒に考えてください。別居の時期と慰謝料の関係は別居中の不倫と慰謝料の記事で整理しています。
金額の情報をネットで見るときの読み方は、不倫慰謝料の相場に公的な基準はある?ネットの金額を読む7つの確認点にまとめています。
よくある質問
Q. DVの慰謝料の相場はいくらくらいですか?
民法にも最高裁の判決にも、DVや浮気の慰謝料の金額表は出てきません。暴力の内容や期間、けがの程度、婚姻期間などの事情を見て、合意か裁判所の判断で決まります。金額の見通しは、安全を確保したあとで弁護士に事情を見せて聞いてください。
Q. 精神的な暴力(暴言・無視)だけでも保護命令は申し立てられますか?
DV防止法の「配偶者からの暴力」には心身に有害な影響を及ぼす言動も含まれますが、保護命令を申し立てる前提は、身体に対する暴力か、生命・身体・自由・名誉・財産に害を加えると告げる脅迫を受けたことです。暴言だけで当てはまるかは事情によるので、配偶者暴力相談支援センターで状況を話して相談してください。
Q. 相手に住所を知られずに慰謝料や離婚の手続を進められますか?
住民票の写しなどを相手が取れないようにする総務省のDV等支援措置があり、警察や配偶者暴力相談支援センターに相談したうえで市区町村に申し出ます。期間は1年で、終わる1か月前から延長を申し出られます。裁判所の手続で住所をどう扱うかは、申立ての前に弁護士や裁判所に確かめてください。
出典・参考にした公的な情報
- 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律 第1条・第3条・第10条・第10条の2・第11条・第12条・第29条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 保護命令制度について(内閣府男女共同参画局)(内閣府)
- 配偶者暴力防止法 Q&A(内閣府男女共同参画局)(内閣府)
- DV相談について(DV相談ナビ(内閣府)
- 犯罪被害者白書 資料9 相談窓口一覧(警察庁)(警察庁)
- DV等支援措置(総務省)(総務省)
- 民法 第709条・第710条・第724条・第724条の2・第819条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 法テラス・サポートダイヤル(法務省)(法務省)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。