離婚とお金・家 / Q&A

浮気した側から婚姻費用を請求されたら?有責配偶者の請求と子の分の考え方

この記事のもくじ
  1. 条文は何を定めているか
  2. 争点になりやすいのは「自分自身の生活費の分」
  3. 子どもの生活費は別に考える
  4. 請求を受けた側(浮気をされた側)の準備
  5. 請求する側(浮気をした側)が知っておくこと

浮気をした側(有責配偶者)が別居して婚姻費用を請求してきたとき、整理の出発点は2つです。子どもの生活費の分は、親の浮気とは別に残ります。配偶者本人の生活費の分は、別居に至った経緯が争点になりえます。 民法760条には、浮気をした側の請求を一律に退ける定めは書かれていません。一方、家庭裁判所は額を「個別事情も考慮して」検討すると説明しています。この記事は、請求された側と請求する側の両方に向けて、この2つを切り分ける考え方と準備をまとめます。払う・払わない、減らせる・減らせないの結論は事案ごとに家庭裁判所が決めるため、金額の見込みは示しません。

条文は何を定めているか

婚姻費用の根拠は、民法760条の「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」です。752条は、夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならないと定めます。どちらの条文にも、不貞行為をした側を除外する言葉はありません。

浮気は、別の条文では離婚の理由や慰謝料に結びつきます。裁判上の離婚の理由として、770条1項1号に「配偶者に不貞な行為があったとき」が挙がり、慰謝料は709条・710条の不法行為の問題です。つまり、浮気の責任を問う仕組みは、離婚や慰謝料の側にあり、生活費の分担を定める760条の中には出てきません。この条文の構造が、請求する側・される側の双方にとって出発点になります。

争点になりやすいのは「自分自身の生活費の分」

婚姻費用の中身は、大きく二つに分けて考えられます。

婚姻費用を分けて考える:どの部分が論点になるか
部分 根拠・性質 浮気との関係の整理
子どもの生活費・教育費など 民法817条の12(親の責務)、766条(子の監護費用)。裁判所は、婚姻費用に子の監護の費用が含まれると説明 親の浮気とは別の問題として扱う。子の利益が中心
配偶者自身の生活費 民法752条・760条(夫婦の協力扶助・費用の分担) 別居の経緯をどう見るかが争点になりうる。判断するのは家庭裁判所で、サイトでは結論を示せない
払う側が減額を求める事情 収入の変化、支出の事情など 収入の変化など、資料で示せる事情として整理する。浮気の事実とは別の話

浮気をした側が、浮気をされた側に「自分の生活費」を求めることについて、納得できない気持ちになるのは自然です。ただ、その気持ちを調停で伝えるときは、感情の表現ではなく、別居に至った経緯の事実(いつ、どのような事情で別居が始まったか、同居を再開する話し合いがあったか)として整理して示すほうが、調停委員に伝わりやすくなります。経緯の整理の仕方は、弁護士への相談前に時系列のメモを作る方法(弁護士に相談する前の準備:時系列メモと持ち物・聞くことの一覧)が参考になります。

子どもの生活費は別に考える

浮気をした親と暮らす子どもにも、生活費は必要です。子どもの生活費は、民法817条の12第1項の親の責務から出てきます。同条は、父母は子の心身の健全な発達のため養育し、子が自己と同程度の生活を維持できるよう扶養しなければならないと定めています。2項は、婚姻関係の有無にかかわらず、子に関する権利の行使や義務の履行について互いに人格を尊重し協力することを求めます。

また、子の監護に要する費用の分担については、先取特権という優先的な取立ての仕組みがあります。民法308条の2は、婚姻費用(760条)を含む一定の義務に係る定期金について、法務省令で定める額(月8万円に子の数を乗じた額)まで先取特権を認めています。裁判所の案内では、令和8年(2026年)4月1日以降に発生した分が対象です。子の分は、払わないままだと強制的な取立ての対象になりうる点を知っておいてください(手続は婚姻費用を払わない相手には:取り決めの形別に使える手段と子の分の先取特権)。

請求を受けた側(浮気をされた側)の準備

「浮気をした相手に払いたくない」という気持ちが強いと、連絡を断ち、払わないままにしがちです。しかし、請求の根拠は条文上あり、放置すれば、相手が調停を申し立てることがあります。裁判所に呼び出された場合、正当な理由なく出頭しないと5万円以下の過料に処される旨が家事事件手続法51条に定められています。次の順番で動くと、感情と手続を切り分けやすくなります。

  1. 請求の内容を書面で受け取る。 金額、開始時期、根拠を確認します。口頭だけで金額を決めないようにします。
  2. 自分の収入資料を用意する。 源泉徴収票、確定申告書の写しなど。算定表の目安は婚姻費用算定表の見方:収入と子どもの数から目安を読む手順で読めます。
  3. 別居の経緯を時系列にまとめる。 浮気に気づいた日、別居を始めた日、そのとき誰が出たか、同居再開の話し合いがあったか。事実だけを短く書きます。
  4. 慰謝料は別の請求として整理する。 婚姻費用と同じ書面に混ぜず、慰謝料の仕組みは不貞行為の慰謝料の仕組みで確かめます。
  5. 調停で、自分の考えを事実で伝える。 感情をぶつける場ではなく、収入と事情を述べる場です。

2026年4月から、婚姻費用の審判事件・調停事件では、家庭裁判所が当事者に収入や資産の情報開示を命じることができるようになりました(家事事件手続法152条の2、258条3項)。正当な理由なく開示しない、または虚偽の情報を開示すると10万円以下の過料です。収入の資料は、最初から出す前提で準備しておくと手続が滞りません。

請求する側(浮気をした側)が知っておくこと

請求する側も、相手の感情が強い時期に請求していることを前提にしたほうが、手続がこじれにくくなります。

  • 子どもを連れて別居している場合、請求の中心は子の生活費と生活の維持です。家計の資料(家賃、光熱費、学費)を整理します。
  • 相手を責め返すメッセージを重ねると、話し合いの場が感情の応酬になりやすくなります。やり取りは短く、事実と金額に絞ります。
  • 相手の収入が分からないときは、申立ての際に、分かる範囲の資料と、情報開示の申立てを検討する方法があります。
  • 別居の経緯が複雑なときは、弁護士に相談してから申立書を作る選択肢があります。浮気をした側が家を出たケースは、浮気した側が家を出たら?有責配偶者の別居と婚姻費用の関係で扱います。

どちらの立場でも、浮気の責任を問う話は慰謝料や離婚の条件の中で扱い、生活費の話は婚姻費用として淡々と扱うのが、手続を進める基本線です。調停の申立て手順は婚姻費用の分担請求調停:申立ての方法・費用1,200円・必要書類と当日の流れ、お金全体の中での位置づけは浮気が原因の離婚とお金にあります。

よくある質問

Q. 浮気をした側が子どもを連れて出ていった場合、子どもの生活費の分も払わなくてよいのですか?

子どもの生活費は、親の浮気とは別に考えるのが出発点です。民法817条の12第1項は、父母が子の人格を尊重して養育し、子が自己と同程度の生活を維持できるよう扶養しなければならないと定めています。裁判所のQ&Aも、婚姻費用には未成熟子の養育費や教育費が含まれると説明しています。具体的な額は算定表を参考に調停・審判で検討されるため、[婚姻費用算定表の見方](/konpi-santei/)で目安を読んでおくと話し合いが進みます。

Q. 婚姻費用の請求を受けたら、慰謝料の話と一緒に進めるべきですか?

婚姻費用は夫婦の生活費の分担(民法760条)、慰謝料は不法行為による精神的苦痛への賠償(709条・710条)で、根拠も手続も別です。請求を受けたときは、婚姻費用は婚姻費用として、慰謝料は慰謝料として、書面や調停の中で分けて整理するのが基本です。両方を同時に抱えていて整理がつかないときは、弁護士に相談する選択肢があります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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