DVがあるときの親権:単独親権と定めなければならない場合
いま身の危険を感じているときは、親権の話より先に、安全を確保してください。
- 暴力をふるわれそう、押しかけられそうなど、すぐに助けが要るとき:110番に通報してください
- 緊急ではないが、暴力や脅しについて相談したいとき:DV相談+(0120-279-889、電話は24時間受付)か、DV相談ナビ(#8008)で近くの配偶者暴力相談支援センターにつなげます。#8008 は、つながった先の受付時間内に限られます
- 子どもが暴力や暴言にさらされているとき:児童相談所虐待対応ダイヤル 189
そのほかの窓口と番号は、浮気・不倫の相談先一覧:悩み別の窓口と番号・受付時間の早見表にまとめています。この記事は、窓口に相談した後で親権の決め方を知りたい人に向けた整理です。
DVがあるときの親権について、結論を先に書きます。民法819条7項は、裁判所が親権者を双方か一方かで判断するとき、子の心身に害悪を及ぼすおそれがあるときや、父母の一方が他の一方から暴力などを受けるおそれなどから、共同して親権を行うことが困難と認められるときは、父母の一方を親権者と定めなければならないとしています。つまり、条文が「単独親権と定めなければならない場合」として挙げている類型です。DVがあれば自動的に単独になると断定はできませんが、DVのおそれは、裁判所が考慮しなければならない事情に入っています。
819条7項が「一方を親権者と定めなければならない」とする場合
2026年4月1日に施行された改正(令和6年法律第33号)で、離婚後は親権を双方(共同親権)にも一方(単独親権)にも決められるようになりました。共同を原則とし単独を例外とする関係ではなく、子の利益で判断されます。そのうえで、次の場合は裁判所が単独親権とすることが決まりになっています(裁判所の案内も同じ内容です)。
| 類型 | 条文の言い方 | 具体的な場面の例 |
|---|---|---|
| 1号 | 父または母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき | 子への虐待があった |
| 2号 | 父母の一方が他の一方から暴力などを受けるおそれの有無、協議が調わない理由などを考慮し、共同して親権を行うことが困難と認められるとき | 配偶者へのDVがあり、話し合いが成り立たない |
| その他 | 双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるとき | 上記以外でも、子のために単独が必要な事情 |
法務省のQ&Aは、次の点を説明しています。
- 1号・2号は例示で、これ以外でも、子の利益のために単独親権と定められる。
- DVは、身体的な暴力に限らず、精神的・経済的・性的なものも対象になりうる。
- 医師の診断書などの客観的な証拠が必須とはされていない。
- 一方の親に、すべてを立証する責任を負わせる趣旨の規定ではない。
- 誹謗中傷や人格否定を繰り返すことは、共同で親権を行うのが困難と評価されうる。
なお、7項が使われるのは、裁判所が判断する場面(裁判離婚、審判、親権者変更の裁判)です。父母が合意して決める協議離婚には、この条文が直接かかるわけではありません。ただ、DVを背景にした不適切な協議離婚については、あとで親権者を変更する手続きのなかで、協議の経過が考慮されます(民法819条8項)。離婚後の変更は親権者変更の手続き:離婚後に家庭裁判所で考慮される事情にあります。
避難・別居のときに知っておきたい二つのこと
子どもを連れて家を出るとき、親権や監護で不利になるのでは、と不安になる人は多くいます。法務省のQ&Aは、次のように説明しています。
- DVや虐待から避難するための転居は、父母の協力義務に違反しない(民法817条の12の趣旨)
- 共同で行う親権でも、子の利益のために急迫の事情があるときは、一方が単独で行える(民法824条の2第1項)。DVや虐待からの避難は、急迫の事情の例に挙げられている
ただし、これは「どんな避難でも自動的に認められる」という意味ではありません。避難の理由が後から問題になったときに説明できるよう、次の記録を残してください。
- 暴力や暴言があった日付と内容、けがや体調の変化(写真、通院の記録があれば保管)
- 警察や配偶者暴力相談支援センター、DV相談+に相談した日と担当者の名前
- 避難した日と、避難先を決めた経緯
証拠の集め方は暴力がある相手の浮気の証拠集め:安全を先にする理由と相談先で、避難の準備はDVから逃げる準備:持ち出すもの・相談先・住所を知られない手続きで整理しています。
手続きでの配慮と、住所を知られないための仕組み
調停や審判を使うときは、安全のための工夫を、申立ての前に家庭裁判所へ相談できます。顔を合わせない工夫やウェブ会議、住所を伏せる秘匿の申出はDVがあるときの離婚調停:顔を合わせない工夫と安全のための申出で扱っています。手続きの全体像は親権で争うときの調停・審判・裁判の流れと家庭裁判所調査官の調査です。
相手の接近や連絡を止めたいときは、地方裁判所に申し立てる保護命令があります(保護命令とは?配偶者からの暴力で申し立てる手続きと相談先)。あわせて、同居する未成年の子の身辺へのつきまとい等を禁じる命令もあります。幼い子を連れ戻すと疑われる言動があるなど、被害者が子について相手と会わざるをえなくなるのを防ぐ必要があるときの制度で、子が15歳以上のときは子の同意が必要です(DV防止法10条3項)。
住民票を知られたくないときは、市区町村に支援措置を申し出る方法があります。法務省のQ&Aによると、未成年の子の転入・転出の届出に父母双方の同意は要りません。DVなどで避難していて、相手が住所を探すおそれがあるときは、子についても閲覧制限などの支援措置を受けられます。これは親権が共同か単独かにかかわりません。
| 相談先 | 相談すること |
|---|---|
| 警察(110番、相談は #9110) | いまの危険、被害の届出、保護命令の説明 |
| 配偶者暴力相談支援センター | 避難先、一時保護、保護命令や支援措置の情報 |
| 家庭裁判所の窓口 | 調停での顔を合わせない工夫、住所の秘匿 |
| 弁護士・法テラス | 親権の手続き、単独親権を求める主張の整理 |
よくある質問
Q. DVの診断書や証拠がないと、単独親権は認められませんか?
法務省のQ&Aは、医師の診断書などの客観的な証拠が必須とはされていないと説明しています。身体的な暴力に限らず、精神的・経済的・性的な暴力も対象になりえます。ただ、裁判所が実際に何をどう考慮するかは事案で変わります。相談した記録や日付のメモは、状況を説明する助けになるので残しておいてください。
Q. 子どもを連れて避難したら、親権で不利になりませんか?
法務省のQ&Aは、DVや虐待から避難するための転居は、父母が互いに協力する責務(民法817条の12)に違反しないと説明しています。共同で行う親権の行使でも、DVや虐待からの避難は「急迫の事情」の例として挙げられています。個別の事情で評価は変わるので、避難の前後に相談窓口へ連絡して記録を残してください。
Q. 相手が暴力をふるったのは、子どもにではなく私にだけです。それでも考慮されますか?
民法819条7項2号は、父母の一方が他方から暴力などを受けるおそれの有無などを考慮して、共同で親権を行うことが困難と認められるときを挙げています。子に向いていない暴力も、父母が協力して親権を行えるかという点で考慮の対象です。具体的な見通しは弁護士や配偶者暴力相談支援センターに相談してください。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第817条の12・第819条・第824条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)について・Q&A解説資料(民法編)(法務省)
- Q&A解説資料(行政手続・支援編)(法務省)
- 離婚後の親権者の定めに関する手続等(裁判所)
- DV相談について(DV相談ナビ・DV相談+)(内閣府男女共同参画局)
- 配偶者暴力相談支援センター(内閣府男女共同参画局)
- 保護命令制度について(内閣府男女共同参画局)
- 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律 第1条・第10条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。