浮気・不倫が原因の離婚 / 制度解説

離婚の理由として認められるもの:民法770条と2026年4月の改正

この記事のもくじ
  1. 離婚に理由が要るのは「裁判」のときだけ
  2. 770条1項の4つの理由(2026年4月1日以後の条文)
  3. 2項:理由があっても、請求が退けられることがある
  4. 2026年4月の改正で何が変わったか
  5. 「離婚したい理由」と「裁判で認められる理由」は別
  6. 調停から裁判まで:理由を整理するときの手順

離婚の「理由」が問われるのは、夫婦が合意できず、裁判で離婚を求めるときです。協議離婚や調停での合意なら理由は問われません。裁判で離婚を求める理由は民法770条1項の4つで、浮気は1号の「不貞な行為」にあたります。2026年4月1日の改正で旧4号(強度の精神病)が削除され、現在の4号は「その他婚姻を継続し難い重大な事由」です。この記事は、条文の言葉と2項の考え方、手続の順番を整理します。浮気をした夫との離婚の準備は夫の浮気で離婚を考える妻へ:生活費・住まい・子どもの準備の順番にまとめています。

離婚に理由が要るのは「裁判」のときだけ

離婚には4つの進み方があり、理由が条件になるのは最後の一つだけです。

進み方 理由は必要か 決めるのは
協議離婚 不要。夫婦が合意して離婚届を出す(民法763条) 夫婦
調停離婚 不要。調停で合意すれば成立する 夫婦(調停委員会が間に入る)
審判離婚 調停で合意できない場合に家庭裁判所が判断する例外的な形 裁判所
裁判離婚 770条1項の4つのどれかが必要 裁判所

つまり、「浮気をされたけれど相手が離婚に応じない」ときに初めて、浮気が770条1項1号に当たるかが争点になります。調停や裁判の全体像は離婚の方法は4種類:協議・調停・審判・裁判の流れと選び方で扱います。

770条1項の4つの理由(2026年4月1日以後の条文)

条文は、離婚の訴えを起こせるのは「次に掲げる場合に限り」と書いています。現在の4つは次のとおりです。

早見表:民法770条1項の4つの離婚の理由
号 条文の言葉 浮気・別居との関わり
1号 配偶者に不貞な行為があったとき 浮気・不倫はここで問題になる。「不貞な行為」の意味は条文に定義がなく、どこまでを含むかは不貞行為とは?法律上の意味と浮気との違いで扱う
2号 配偶者から悪意で遺棄されたとき 生活費を渡さない、理由なく家を出て戻らないといった場面で語られる。別居は悪意の遺棄に当たる?判断で見られる事情で見られる事情を扱う
3号 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき 浮気の相談ではまれ
4号 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき 浮気の証拠が十分でない場合や、暴力・長い別居・セックスレスなどが重なる場合に問題になる

読むときの注意が2つあります。1つ目は、「浮気されたから770条で離婚できる」と読まないことです。条文は「離婚の訴えを提起することができる」と書いているだけで、請求が認められるかは別の話です。2つ目は、「浮気=不貞行為」と同じ意味だと決めつけないことです。法律の話では「不貞な行為」と呼び、風俗通いのように判断が分かれやすい場面は風俗通いは不貞行為になる?法律上の見方のように分けて考えます。

2項:理由があっても、請求が退けられることがある

770条2項は、1号から3号までの事由がある場合でも、裁判所が一切の事情を考えて「婚姻の継続を相当と認めるとき」は離婚の請求を退けられると定めています。浮気があっても、事情によっては離婚が認められない余地を残した条文です。

2項が挙げているのは1号から3号です。4号は2項の対象に書かれていません。この違いから、不貞の証拠を前面に出すか、婚姻が壊れている全体の事情を前面に出すかは、事件ごとに組み立てが変わります。どちらが有利かは断定できないので、弁護士に材料を見せて確かめる部分です。

浮気をした側から離婚を求める場合は、条文の外に判例があります。最高裁の判例は、別居が相当の長期間に及ぶか、未成熟の子がいないか、相手が極めて苛酷な状態におかれないかなどを総合して見ており、別居の年数に線を引いた判決ではありません。くわしくは有責配偶者とは?浮気した側からの離婚請求が問題になる理由で扱います。

2026年4月の改正で何が変わったか

2026年4月1日に施行された令和6年法律第33号は、770条1項から旧4号の「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」を削除しました。これに伴い、旧5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」が4号に繰り上がり、2項の対象も「第一号から第三号まで」に変わっています。

項目 2026年3月31日まで 2026年4月1日以後
1号 不貞な行為 同じ
2号・3号 悪意の遺棄・3年以上の生死不明 同じ
旧4号 強度の精神病で回復の見込みがない 削除
婚姻を継続し難い重大な事由 5号 4号
2項の対象 1号から4号まで 1号から3号まで

経過措置もあります。施行日前に控訴審の口頭弁論が終わっていたものなど、一部の離婚訴訟は離婚の理由について従来の規定が使われます(改正法附則5条)。古い解説の「5号」は、現在の4号のことだと読み替えます。親権や養育費など、同じ日に変わったほかの点は離婚の法改正2026年4月施行:共同親権・法定養育費・財産分与の変更点にまとめています。

「離婚したい理由」と「裁判で認められる理由」は別

家庭裁判所の統計には、調停などを申し立てた人が挙げる「動機」の表があります。令和7年(2025年)の司法統計年報(家事編)第19表では、婚姻関係事件の申立人が主な動機を3つまで挙げた件数が数えられています。

申立人 総数 性格が合わない 異性関係
夫 15,355件 9,004件(約58.6%) 1,823件(約11.9%)
妻 42,136件 15,646件(約37.1%) 5,393件(約12.8%)

割合は筆者の計算です。3つまで重複して数える方式なので、動機の件数を足すと総数を超えます。「異性関係」は統計の区分名で、不貞な行為と同じ意味ではありません。家庭裁判所に申し立てず、話し合いだけで離婚届を出した夫婦は数えられていません。ここから分かるのは、人が離婚を考える動機と、770条1項の4つが別の物差しだということです。「性格が合わない」は多くの人が挙げる動機ですが、裁判で離婚を求める場面では、4号の「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たる事情として何を示せるかが問われます。

調停から裁判まで:理由を整理するときの手順

裁判にたどりつく前に、原則として家庭裁判所の調停を経ます。家事事件手続法257条は、調停ができる事件について訴えを起こそうとする人は、まず家事調停を申し立てなければならないと定めています(相当でないときは例外)。調停が不成立になって初めて、離婚の訴えを起こします。離婚の訴えと、その原因になった不貞による慰謝料を、同じ家庭裁判所で一つの訴えとして出せる仕組みもあります(人事訴訟法17条)。流れは離婚調停の流れ:申立てから成立・不成立までと浮気が原因のときの準備、離婚裁判の流れ:浮気を理由に訴えるときの訴状・証拠・判決で順に説明します。

自分の理由が条文のどれに近いかを整理するときは、次の順に紙に書き出します。

  1. 浮気が分かった日、分かったきっかけ、手元にある記録(日付つき)
  2. 別居しているなら、別居を始めた日と、そのときの生活費・連絡の状況
  3. 浮気のほかに婚姻を続けにくくした出来事(暴力、暴言、生活費、セックスレスなど)
  4. 離婚後に決めたいこと(親権、養育費、財産分与、年金分割、慰謝料)

この4枚のメモを持って弁護士に相談すると、1号で組み立てるか、4号の事情も合わせて示すかを具体的に話せます。法テラスなど相談先は離婚の相談先の選び方:無料で使える窓口と弁護士の違いにまとめています。条文の理由が当てはまるかを断定するのは、個別の法律判断にあたるため、このサイトではしません。

よくある質問

Q. 浮気をされたら、裁判で離婚が認められますか?

条文は、不貞な行為があったときを離婚の訴えの理由の一つに挙げています。ただし2項に、裁判所が一切の事情を考えて婚姻の継続を相当と認めるときは請求を退けられるという定めがあります。結論は事情ごとに分かれるため、見通しは弁護士に確かめてください。

Q. 離婚の理由が性格の不一致だけでも離婚できますか?

夫婦が合意する協議離婚や、調停での合意による離婚なら、理由は問われません。合意できず裁判になる場合は、770条1項の4つのどれに当たるかが問題になり、性格の不一致という言葉だけでは足りないことがあります。

Q. 古い資料に「770条1項5号」とあるのは間違いですか?

2026年3月31日までの条文では「その他婚姻を継続し難い重大な事由」が5号でした。2026年4月1日の改正で旧4号が削除され、現在は4号です。資料の日付を見て読み替えてください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

夫の浮気で離婚を考える妻へ:生活費・住まい・子どもの準備の順番

離婚の法改正2026年4月施行:共同親権・法定養育費・財産分与の変更点

浮気・不倫が原因の離婚:準備・話し合い・調停の流れと決めること

有責配偶者とは?浮気した側からの離婚請求が問題になる理由