離婚調停の申立書の書き方:浮気の事情をどこにどう書くか
離婚調停の申立書は、白紙に文章を書くものではなく、裁判所が用意した2枚の書式にチェックと短い記入をしていく形です。浮気の事情は、申立書では「申立ての動機」の「異性関係」に○を付けるだけで足り、経緯の説明は別紙の事情説明書に事実だけを書きます。申立書の写しは法律の定めで相手方に送られるため、相手を責める言葉や、知られたくない住所は申立書に書かないでください。
申立書は2枚:どの欄に何を書くか
家庭裁判所のホームページには、夫婦関係調整調停(離婚)の申立書と記入例が載っています。1枚目は申立人・相手方・子の情報と添付書類、2枚目は「申立ての趣旨」「申立ての理由」です。書式のいちばん上には、この申立書の写しが相手方に送付される旨が太字で書かれています。
| 欄 | 書く内容 | 浮気が原因のときの注意 |
|---|---|---|
| 事件名・印紙欄 | 事件名は「離婚」。収入印紙1,200円分を貼る(貼った印紙には押印しない) | 離婚と一緒に慰謝料も話し合えるので、事件名は変わらない |
| 申立人・相手方・対象となる子 | 本籍、住所、氏名、生年月日。子は一緒に住んでいる側にチェック | 相手方は配偶者。不倫相手は当事者の欄に入らない |
| 添付書類 | 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)。年金分割を求めるなら年金分割のための情報通知書 | 浮気の証拠書類は、必要書類に入っていない |
| 申立ての趣旨 | 「離婚する」に○。親権者、親子交流、養育費、財産分与、慰謝料、年金分割は、求めるものだけに付ける | 慰謝料を求めるなら金額か「相当額」を選ぶ |
| 同居・別居の時期 | 初めて同居した日と、別居した日 | 同居と別居を繰り返したときは、最後の別居の日 |
| 申立ての動機 | 13項目から当てはまる番号に○、最も重要なものに◎ | 「異性関係」は2番 |
動機の13項目は、性格があわない、異性関係、暴力をふるう、酒を飲みすぎる、性的不調和、浪費する、病気、精神的に虐待する、家族をすてて顧みない、家族と折り合いが悪い、同居に応じない、生活費を渡さない、その他です。浮気が中心の理由なら「異性関係」に◎を付け、ほかにも当てはまる事情(生活費を渡さないなど)があれば○を足します。当てはまらないものに○を付けて理由を盛る必要はありません。
「異性関係」は書式の選択肢の名前で、法律上の不貞行為にあたるかを判断する欄ではありません。不貞行為の意味は不貞行為とは?法律上の意味と浮気との違いで扱っています。
浮気の事情は3つの書類に書き分ける
申立てのときは、申立書のほかに、事情説明書(夫婦関係調整)と進行に関する照会回答書も出します。3つは相手方への扱いが違うので、書く内容を分けます。
| 書類 | 相手方への扱い | 浮気について書くこと |
|---|---|---|
| 申立書 | 写しが相手方に送付される(家事事件手続法256条) | 動機の「異性関係」への○か◎。慰謝料を求めるなら趣旨の金額欄 |
| 事情説明書(夫婦関係調整) | 相手方には送付しない。ただし相手方から申請があれば閲覧やコピーが許可されることがある | 7番の欄に、不和になったいきさつと申し立てた理由 |
| 進行に関する照会回答書(申立人用) | 閲覧・コピーの対象としない取扱い | 事前に話し合ったか、そのときの相手の様子、暴力の有無、裁判所への配慮の希望 |
つまり、申立書は項目の選択、事情説明書は事実の経過、照会回答書は進行と安全に関することを書く場所です。事情説明書は「相手には送られない」と受け取りがちですが、書式には閲覧やコピーが許可されることがあると明記されているので、相手に読まれても困らない内容だけにします。調停に出した書類を相手が見られる仕組みは離婚調停で浮気の証拠はどう使う?で説明しています。
事情説明書7番の書き方と文例
事情説明書の7番は、「夫婦が不和となったいきさつや調停を申し立てた理由」を自由に書く欄です。浮気が原因のときは、次の4段に分けると、読む調停委員にも伝わりやすくなります。出来事を日付の順に、評価や推測を入れずに書くのがコツです。
①気づいた経緯:令和○年○月ごろ、相手方のカード明細に、出張の予定がない日の○○市内のホテルの支払いがあることに気づきました。 ②その後の話し合い:同年○月○日にこの支払いについて尋ねたところ、相手方は「○○」と答えました。その後は会話が減り、令和○年○月○日から別居しています。 ③いまの状況:現在は○○(住まい・子どもの世話・生活費の状況)です。 ④望むこと:離婚すること、子の親権者を私とすること、養育費と財産分与について話し合いたいと考えています。
| 避けたい書き方 | 直し方の例 |
|---|---|
| 「相手方は嘘つきで人間として最低です」(評価) | 「○月○日の質問に、事実と異なる説明をしました」(出来事) |
| 「相手方は今も不倫相手と続いているはずです」(推測) | 「○月○日の○○の写しに、○○と書かれています」(資料に書かれていること) |
| 「証拠は全部そろっています」 | 手元にある資料の種類だけを書き、出すかどうかは調停委員の求めや弁護士との相談で決める |
自分の側にも事情(家を空けがちだった、生活費の渡し方でもめていたなど)があるときは、短く事実として書いたほうが、後で相手方に指摘されて慌てずに済みます。
慰謝料は申立書に書くか:金額欄と「相当額」
裁判所は、離婚調停では親権者、親子交流、養育費、財産分与、年金分割の割合と並んで、慰謝料も話し合えると案内しています。申立書の趣旨に慰謝料を入れるなら、相手方に支払ってほしい金額を書きます。金額がはっきりしないときは「相当額」を選びます。
ここで求める慰謝料は、相手方である配偶者に対するものです。不倫相手への請求は、この申立書の相手方には入らず、別の手続になります。慰謝料を入れずに離婚の条件だけを先に決め、離婚後に慰謝料請求調停(離婚した元夫・元妻が申立人)で話し合う道もあります。その場合は、いつから数えて期限がくるかを先に知っておく必要があるので、離婚慰謝料の時効を読んでから決めてください。金額の考え方は離婚慰謝料の相場の調べ方にあります。
住所を知られたくないとき・提出前のチェック
申立書の写しは原則として相手方に送られます(家事事件手続法256条1項)。別居先の住所を知られたくない事情があるときは、住所等の秘匿制度があり、申立てにより裁判所が秘匿の決定をすることがあります。認められないこともあります。家事事件では、書類のうち見られたくない部分を、あらかじめ非開示にしたいと申し出る方法もあります。記入例にも、年金分割の情報通知書に書かれた住所を相手方に知られたくないときは、その部分を覆い隠してコピーを作り、原本はそのまま出すという注記があります。
暴力や脅しのおそれがある場合は、申立書の書き方より先に、顔を合わせない工夫や安全のための申出を整えます。DVがあるときの離婚調停を読み、相談窓口は浮気・不倫の相談先一覧で選んでください。
提出前に、次を点検します。
- 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)を取った
- 申立書の欄に収入印紙1,200円分を貼り、印紙には押印していない
- 申立書とその写し1通がある
- 事情説明書、子についての事情説明書、進行に関する照会回答書、送達場所等届出書を書いた
- 年金分割を求めるなら、発行から1年以内の情報通知書がある
- 連絡用の郵便切手の額を、申立先の家庭裁判所で確かめた
- 申立書に、相手を責める言葉と、知られたくない住所が入っていない
申立先は、相手方の住所地の家庭裁判所か、夫婦が合意で決めた家庭裁判所です。手続の案内は、無料の家庭裁判所の手続案内が使えます。
申立書は自分で書けますが、慰謝料を求めるか、浮気の事情をどこまで書くか、子どもの親権をどう書くかといった判断が絡むときは、弁護士に依頼する選択肢があります。相談の前に、出す予定の申立書と事情説明書の下書きを見せると、話が早く進みます。弁護士を選ぶときに確かめる点は離婚の弁護士の選び方にまとめています。申立ての後の流れは離婚調停にかかる期間、調停で聞かれることの見通しは離婚調停で何を聞かれる?へ進んでください。全体の地図は浮気・不倫が原因の離婚にあります。
よくある質問
Q. 浮気の証拠は、離婚調停の申立てと一緒に出すものですか?
裁判所が案内する必要書類は、申立書とその写し、夫婦の戸籍謄本、事情説明書などで、浮気の証拠書類は入っていません。資料は、調停の進み具合や調停委員の求めに応じて出すのが一般的な考え方です。出す時期と写しの作り方は、証拠の出し方の記事で整理しています。
Q. 申立ての動機に「異性関係」と書くと、浮気を証明しなければなりませんか?
動機の欄は、申立人が離婚を求める理由として当てはまるものに○を付ける選択式で、証明を求める欄ではありません。ただ、相手方が事実を否定すれば、調停の席で経緯を尋ねられます。聞かれる内容の見通しは、調停で聞かれることの記事にまとめています。
Q. 書き方が分からないときは、どこで教えてもらえますか?
家庭裁判所の家事手続案内で、手続の流れ、費用、添付書類を説明してもらえます。ただし法律相談には応じていないので、浮気の事情をどこまで書くかといった判断は、弁護士に相談します。
出典・参考にした公的な情報
- 夫婦関係調整調停(離婚)(裁判所)
- 夫婦関係調整調停(離婚)の書式と記入例(裁判所)
- 夫婦関係調停申立書の記入例(妻から夫に離婚を求める場合)(裁判所)
- 事情説明書(夫婦関係調整)の書式(裁判所)
- 進行に関する照会回答書(申立人用)の書式(裁判所)
- 家事事件手続法 第254条・第256条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 住所・氏名等の秘匿制度(裁判所)
- 慰謝料請求調停(裁判所)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。