浮気・不倫の基礎と相手別の入口 / 制度解説

不貞行為とは?法律上の意味と浮気との違い・離婚理由になる条文

この記事のもくじ
  1. 不貞行為とは:条文の言葉と最高裁が示した意味
  2. 浮気と不貞行為の違い:どこで線が分かれるか
  3. 離婚理由になる条文:民法770条の4つの事由と2項
  4. 不貞行為があったときに法律で起こりうること
  5. 不貞行為かどうかを考える前に整理しておくこと

不貞行為とは、法律上は「配偶者のある人が、自分の自由な意思で、配偶者以外の人と性的関係を結ぶこと」を指します。民法770条1項1号が裁判で離婚を求める理由に「配偶者に不貞な行為があったとき」を挙げ、その意味を最高裁が昭和48年の判決で示しました。日常の「浮気」より線が狭く、食事やメッセージのやりとりだけでは、この言葉の意味には入りにくいのが出発点です。

不貞行為とは:条文の言葉と最高裁が示した意味

民法770条1項1号の文言は「配偶者に不貞な行為があったとき」です。条文そのものには「不貞な行為」の定義がありません。そこで意味を示したのが、最高裁判所の昭和48年11月15日の判決です。

判決は、不貞な行為を「配偶者ある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」とし、相手方の自由な意思にもとづくものかどうかは問わないとしました。この事件では、離婚を求められた側の配偶者が、他の者と共謀したうえで、自分の意思で3人の女性を強いて姦淫し、性的関係を結んだ事実が認められ、不貞な行為があったと判断されています。相手が同意していたかどうかではなく、配偶者本人が自分の意思で行ったかどうかを見る、という考え方です。なお判決は、この事実関係の下では770条2項(婚姻の継続を相当と認める場合の棄却)を適用しなかった原審の判断も是認しています。

定義を要素に分けると、次の4つになります。

要素 判決の言葉 読み取れること
誰が 配偶者ある者 法律上の婚姻をしている本人の行為が対象
どんな意思で 自由な意思にもとづいて 本人が自分の意思で行ったこと
誰と 配偶者以外の者と 相手の性別・既婚か未婚かは定義に書かれていない
何を 性的関係を結ぶこと 食事・会話・連絡だけでは、この要素に入りにくい

なお「不貞行為」は法律の話をするときの言葉で、日常の「浮気」「不倫」と同じ意味ではありません。言葉の使われ方の違いは不倫とは何かを整理した記事と浮気と不倫の違いの記事で扱っています。

浮気と不貞行為の違い:どこで線が分かれるか

「浮気」は夫婦や恋人の間の約束を破ること全般に使われ、どこからを浮気と呼ぶかは人によって違います。一方で不貞行為は、上の定義のとおり性的関係が軸です。同じ出来事でも「夫婦の約束としては許せない」と「法律上の不貞行為にあたる」は、別々に考える必要があります。

早見表:よくある出来事と「不貞行為」の定義との関係
出来事 日常の言い方 不貞行為の定義との関係
異性と2人で食事・飲みに行く 浮気と感じる人もいる 性的関係の要素がなく、定義には入りにくい
毎日の親密なメッセージ・通話 心の浮気と呼ばれることがある 同上。ただし別の形で問題にされることはある
キス・手をつなぐ 浮気と言う人が多い 定義の「性的関係」にあたるかは事実の中身次第
ホテルや相手の家に泊まる 不倫 性的関係があったことを推し量る事情として扱われうる
性的関係を持つ 不倫 自分の意思なら定義に入る

キスや宿泊のように線上に見える出来事は、それだけで結論が決まるわけではなく、前後の事情とあわせて見られます。夫婦の約束としての線の引き方は浮気はどこからかを考える記事、既婚者との関係の段階は不倫はどこからかの記事、体の関係がない場合は心の浮気の法律上の扱い、お金を払う店の利用は風俗通いが不貞行為になるかの記事に分けています。

離婚理由になる条文:民法770条の4つの事由と2項

不貞行為が法律の場面で最もはっきり出てくるのは、裁判で離婚を求めるときの理由です。民法770条1項は、夫婦の一方が離婚の訴えを起こせる場合を次の4つに限っています。

  1. 配偶者に不貞な行為があったとき
  2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき
  3. 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
  4. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

2026年4月1日に施行された民法改正で、以前の4号(強度の精神病)が削除され、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」は5号から4号に移りました。古い解説にある「770条1項5号」は、今の条文では4号です。改正全体の内容は2026年4月施行の離婚の法改正の記事にまとめています。

770条2項は、1号から3号の事由があっても、裁判所が一切の事情を考えて婚姻を続けるのが相当と認めるときは、離婚の請求を退けられると定めています。不貞な行為があれば裁判で自動的に離婚が認められる、という仕組みではありません。

また、770条は「裁判で離婚を求める場合」の条文です。夫婦が話し合って離婚するとき(民法763条の協議離婚)は、理由を問われません。調停も話し合いでの合意を目指す手続です。どの方法で離婚を進めるかは離婚の方法と手続の流れで比べています。

不貞行為があったときに法律で起こりうること

不貞行為は、離婚の理由のほかに、慰謝料の場面でも問題になります。民法709条は故意や過失で他人の権利や法律上保護される利益を侵害した者の賠償責任を、710条は財産以外の損害(精神的な苦痛)の賠償を定めています。不貞行為をした配偶者と不倫相手の責任をどう考えるかは、条文と最高裁の判断を組み合わせて整理されています。

場面 何が問題になるか 詳しく扱う記事
裁判で離婚を求める 770条1項1号の事由があるか、2項で退けられないか 離婚の方法と手続(上の記事で比較)
配偶者・不倫相手に慰謝料を求める 709・710条、配偶者と不倫相手の関係(719条) 不倫と法律の関係、不貞行為の慰謝料の仕組み
不倫相手が「夫婦は破綻していた」と言う 関係を持った時点の婚姻関係の状態 婚姻関係の破綻とは
不貞行為をした側から離婚を求める 有責配偶者からの請求の扱い 有責配偶者とは何か

最高裁昭和54年3月30日の判決は、夫婦の一方と肉体関係を持った第三者は、故意または過失がある限り、誘惑したかどうか、自然な愛情によるものかどうかにかかわらず、他方の配偶者に対して責任を負うとしています。判決ごとの中身は不貞行為の判例の記事で年代順に並べました。どの判断も事件の事実関係の下でのもので、自分の状況にどう当てはまるかは弁護士に相談して確かめる部分です。

不貞行為かどうかを考える前に整理しておくこと

「これは不貞行為なのか」と考え始めたときは、法律の当てはめより先に、手元の事実を分けておくと後の相談が進みます。

  • 見たこと・聞いたこと:日付、場所、誰が何をしたか。推測と見た事実を分けて書く
  • 手元にある材料:写真、メッセージの画面、領収書など。何を示すものかを1行添える
  • 自分がしたいこと:関係をやめてほしい、話し合いたい、離婚を考えている、慰謝料を考えている
  • 安全:問い詰めると暴力や脅しが心配な場合は、事実の整理より安全を先にし、浮気・不倫の相談先一覧から窓口を選ぶ

材料を集めるときは、配偶者のスマートフォンへの無断ログインや位置情報の無断取得など、禁じる法律がある方法に踏み込まないことが大切です。線引きは証拠集めでしてはいけないことの記事、何が材料になりうるかは不倫の証拠として有効なものの記事で扱っています。弁護士に相談するときの時系列メモの作り方は弁護士に相談する前の準備にあります。

不貞行為のほかに、浮気の悩みで使われる言葉も整理したいときは、サレ妻・シタ夫・再構築とは?浮気の悩みで使われる言葉の意味一覧へ進んでください。

よくある質問

Q. 1回だけの関係でも不貞行為になりますか?

最高裁昭和48年判決の定義には、回数や期間の条件は書かれていません。定義に照らすと、自分の意思で配偶者以外と性的関係を結んだかどうかが軸になります。回数や期間が離婚や慰謝料の場面でどう評価されるかは事情ごとに違うので、弁護士に具体的な経過を伝えて確かめます。

Q. 相手が「既婚者だと知らなかった」と言っています。配偶者の不貞行為ではなくなりますか?

昭和48年判決の定義は、配偶者のある本人が自由な意思で関係を持ったかを見るもので、相手の認識は定義の要素に入っていません。一方、不倫相手に慰謝料を求める場面では、相手に故意や過失があったかが問題になります。相手側の責任の考え方は[既婚者と知らなかった場合の慰謝料の考え方](/shiranakatta/)で整理しています。

Q. 夫婦の話し合いで別れるときも、不貞行為を証明する必要がありますか?

民法763条は、夫婦は協議で離婚できると定めており、理由は問われません。770条の離婚の理由が問題になるのは、相手が離婚に応じず裁判で離婚を求める場面です。ただし慰謝料の話をするときは、何があったかを示す材料が必要になることがあります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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