慰謝料・内容証明・示談 / 制度解説

慰謝料請求の条件は5つ:不貞行為・故意過失・婚姻関係・時効・支払い済みか

この記事のもくじ
  1. 慰謝料請求の条件は5つ:先に全体を見る
  2. 条件①不貞行為があったか:何を材料にするか
  3. 条件②故意・過失:不倫相手が既婚と知っていたか
  4. 条件③婚姻関係の状態:破綻していたかどうか
  5. 条件④⑤時効と、すでに受けた支払い

浮気の慰謝料請求で一般に問題になる条件は、①不貞行為があったこと、②(不倫相手に請求する場合)既婚と知っていた、または知ることができたこと(故意・過失)、③関係が始まった当時、婚姻関係が破綻していなかったこと、④時効が過ぎていないこと、⑤すでに損害の分の支払いを受けていないことの5つです。どれも民法709条・719条・724条と最高裁の判決から出てくる考え方で、満たしているかどうかは事実で決まります。この記事では、条件ごとに判断の材料になる事実を並べ、自分の場合の結論は弁護士に確かめる形で整理します。

慰謝料請求の条件は5つ:先に全体を見る

慰謝料請求の要件を、配偶者に請求する場合と不倫相手に請求する場合に分けて一覧にしました。不倫相手への請求では、②の「既婚の認識」が加わる点が大きな違いです。「慰謝料」という言葉の意味から確かめたいときは、慰謝料とは?意味・損害賠償との違い・浮気で問題になる場面を先に読んでください。

早見表:慰謝料請求で問題になる条件と、判断の材料
条件 配偶者への請求 不倫相手への請求 判断の材料になる事実
① 不貞行為があった 問題になる 問題になる 性的関係をうかがわせる写真・メッセージ・宿泊の記録、本人の認めた発言
② 故意・過失 自分の行為なので通常は争点になりにくい 中心の争点になりやすい 既婚と知っていた事情、指輪・家族の話・職場での周知、「独身」「離婚した」と言われていた事情
③ 婚姻関係が破綻していない 個別の事情として見られうる 問題になる(破綻後なら原則責任なし) 同居・別居、別居の始まり、調停や離婚の話、会話・家計・寝室の様子
④ 時効が過ぎていない 婚姻の解消から6か月は完成しない(159条) 知った時から3年・行為から20年 不倫を知った日、相手の氏名・住所を知った日
⑤ 損害の分の支払いを受けていない 問題になる 問題になる 一方からの支払いの有無と額、示談書の清算条項

条件①不貞行為があったか:何を材料にするか

慰謝料請求で問題にされる「不貞行為」は、民法770条1項1号の「不貞な行為」と同じく、一般に配偶者以外の人との性的関係を指します。食事やデート、親密なメッセージだけの段階では、不貞行為があったとは言いにくく、別の検討が必要になります。その場合の考え方は肉体関係なしでも慰謝料を請求されるかの記事で扱っています。

不貞行為があったことは、請求する側が示すことになります。ホテルへの出入りの写真、性的関係をうかがわせるメッセージ、本人が関係を認めた録音や書面などが材料になります。何が証拠として使われやすいかは不倫の証拠として有効なものの記事で詳しく解説しています。集めるときは、相手のアカウントへの無断ログインや位置情報の無断取得など、禁じる法律がある方法を避けてください。線引きは浮気の証拠集めで違法になりうることの記事にあります。

条件②故意・過失:不倫相手が既婚と知っていたか

不倫相手に請求するときの中心の条件が、故意または過失です。最高裁昭和54年3月30日判決は、故意または過失がある限り、誘ったかどうかや自然な愛情からかどうかにかかわらず、不倫相手は責任を負うとしました。逆に言えば、既婚と知らず、知ることもできなかった場合は、この条件を満たさないことがあります。

判断の材料として整理しておきたい事実は次のとおりです。

  • 出会った場所(職場・取引先・マッチングアプリなど)と、そこで既婚かどうかが分かる状況だったか
  • 配偶者が既婚を隠していたか(「独身」と言っていた、指輪を外していた)
  • 家族や子どもの話をしていたか、家に呼べない理由をどう説明していたか
  • 関係が始まった後に既婚と知り、それでも続けたか

2026年6月5日の最高裁判決は、「離婚した」と信じたことに相当の理由がないというだけで過失を認めた判断を誤りとし、婚姻関係が破綻していると信じる相当の理由があったかまで検討するよう求めました。相手が「破綻していると聞いていた」と反論してくることがある、と見込んでおくと準備がしやすくなります。相手が知らなかったと言う場合の確かめ方は不倫相手が既婚者と知らなかったと言うときの記事にまとめています。

条件③婚姻関係の状態:破綻していたかどうか

最高裁平成8年3月26日判決は、関係を持った当時すでに婚姻関係が破綻していたときは、特段の事情のない限り、不倫相手は責任を負わないとしました。守られるのは「婚姻共同生活の平和」であり、破綻後にはその利益がないという理由です。

「破綻」に、別居○年といった決まった線はありません。この判決の事件でも、別居の前から長い対立があり、夫が調停を申し立てたこともあったという事情の全体から破綻が認められています。反対に、家庭内で会話が少ない、仲が冷めていたというだけで破綻と決まるわけでもありません。

破綻を判断する材料の例 書き出す内容
住まい 同居か別居か。別居ならいつから、誰が出たか、理由は何か
夫婦の交流 会話、食事、外出、連絡の頻度
お金 家計を一緒にしていたか、生活費の送金はあったか
手続 離婚の話し合い、離婚届の記入、調停の申立てがあったか
関係修復の動き 話し合いやカウンセリングを試みたか

破綻の考え方そのものは婚姻関係の破綻とは何かの記事、別居中の関係は別居中の不倫と慰謝料の記事で扱っています。

条件④⑤時効と、すでに受けた支払い

時効は民法724条で、損害と加害者を知った時から3年、不貞行為の時から20年です。配偶者に対する請求は、民法159条により婚姻の解消から6か月を経過するまで時効が完成しません。不倫相手についてはこの条文の対象外なので、知った日と相手を特定できた日を記録しておきます。詳しくは不倫の慰謝料の時効の記事へ。

もう一つ見落としやすいのが、すでに受けた支払いです。民法719条1項により、配偶者と不倫相手は連帯して賠償する関係になるので、一方から損害の分を受け取ると、もう一方に請求できる範囲が変わります。示談書に「これ以外に請求しない」という清算条項を入れていた場合も、その文言の範囲が問題になります。両方への請求の線は配偶者と不倫相手の両方に慰謝料を請求できるかの記事で整理しています。

離婚の場面では、慰謝料が認められない場合もあります。性格の不一致などとの違いは離婚で慰謝料なしになるのはどんな場合かの記事で扱っています。

5つの条件を書き出したら、どれが争点になりそうかを弁護士に確かめます。離婚まで進む場合は、不貞行為そのものの慰謝料と離婚に伴う慰謝料を分けて考えることになるので、次は離婚の慰謝料と不倫の慰謝料の違いの記事を読んでください。条文と判例の組み立ては不貞行為の慰謝料の仕組みの記事にあります。

よくある質問

Q. 配偶者が「誘ったのは向こうだ」と言っています。不倫相手への請求の条件は変わりますか?

最高裁昭和54年判決は、不倫相手の責任について、どちらが誘ったか、自然な愛情によるものかにかかわらず、故意または過失がある限り責任を負うとしています。誘った側がどちらかは、請求できるかどうかの条件にはなっていません。ただし、どちらがどれだけ負担するかという別の問題には関わりうるので、弁護士に事情を伝えておきます。

Q. 別居中に始まった不倫でも、慰謝料請求の条件を満たしますか?

別居していたことだけで条件を満たさなくなるわけではありません。最高裁平成8年判決は、関係の当時に婚姻関係が破綻していたかどうかを問題にしており、別居の年数で線を引いていません。別居の理由、期間、連絡や家計の状況など、破綻を判断する材料をそろえて弁護士に相談してください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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