浮気・不倫の基礎と相手別の入口 / 制度解説

不倫と法律の関係は?配偶者と不倫相手それぞれが負う責任の整理

この記事のもくじ
  1. 不倫と法律の関係:刑罰ではなく民事と離婚の話
  2. 配偶者が負う責任と、不倫相手が負う責任
  3. 共同不法行為と「連帯」の意味
  4. 「浮気 法律」で調べた人へ:条文の位置の早見表
  5. 法律の話を進める前に、自分で決めておくこと

不倫と法律の関係をひとことで言うと、刑罰の話ではなく、民事の責任(慰謝料)と離婚の話です。刑法には不倫そのものを罰する条文がなく、問題になるのは民法709条・710条の損害賠償と、770条の離婚の理由です。配偶者と不倫相手は、民法719条の「共同不法行為」として連帯して責任を負う形で整理されますが、不倫相手の責任には故意・過失などの要件があり、最高裁の判断で範囲が絞られている部分もあります。

不倫と法律の関係:刑罰ではなく民事と離婚の話

「不倫は法律違反か」という問いには、どの法律の話かを分けて答える必要があります。

法律の分野 不倫との関係 主な条文
刑法(刑罰) 配偶者以外との性的関係そのものを罰する規定はない 重婚は別(184条:配偶者のある者が重ねて婚姻をしたとき)
民法・家族 裁判で離婚を求める理由になる 770条1項1号「配偶者に不貞な行為があったとき」
民法・不法行為 精神的な苦痛の賠償(慰謝料)の根拠になりうる 709条・710条、719条(共同不法行為)

刑法184条の重婚は、婚姻届を重ねて出す行為の話で、交際そのものとは別です。不倫と犯罪の関係を詳しく知りたい場合は不倫は犯罪になるかの記事を読んでください。ただし、不倫をきっかけにした脅し、職場への暴露、ネットへの書き込みなどは、別の罪に問われうる行為です。

夫婦の義務について、民法752条は「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定めています。よく言われる「貞操義務」という言葉は、752条を含め民法の条文にはありません。条文として不貞に触れているのは770条1項1号で、条文に「不貞な行為」の定義はなく、意味は裁判例で示されてきました(不貞行為とは何かの記事で解説)。

配偶者が負う責任と、不倫相手が負う責任

同じ不倫でも、配偶者と不倫相手では、問われうる責任の種類と、最高裁が示した考え方が違います。

不倫をした配偶者 不倫相手
離婚との関係 裁判で離婚を求められる理由になりうる(770条1項1号)。自分から離婚を求める場合は「有責配偶者」の問題になる 離婚の当事者ではない
不貞行為そのものの慰謝料 709条・710条で問われうる 最高裁昭和54年判決:故意または過失がある限り、誘惑したか、自然な愛情によるものかにかかわらず責任を負う
離婚させられたことの慰謝料 最高裁平成31年判決は、配偶者には有責行為で離婚をやむなくされた苦痛の賠償を求められることを前提にしている 最高裁平成31年判決:夫婦を離婚させる意図で婚姻関係に不当な干渉をしたなどの特段の事情がない限り、離婚に伴う慰謝料の請求は受けない(不貞行為そのものの責任は別)
関係を持った時点で夫婦関係が破綻していた 個別の事情で見られる 最高裁平成8年判決:既に破綻していたときは、特段の事情のない限り責任を負わない
「破綻していると信じた」と言う — 最高裁令和8年6月5日判決:破綻していたと信じ、そう信じる相当の理由があったかまで検討せずに過失を認めるのは誤り、として差し戻した

不倫相手の責任で問われる「故意又は過失」は、既婚と知っていたか、知ることができたかという点です。知らなかった側の考え方は既婚者と知らなかった場合の記事、婚姻関係の破綻は婚姻関係の破綻とは何かの記事、不倫をした側から離婚を求める場面は有責配偶者の記事に分けています。判決ごとの事件の中身は不貞行為の判例の記事で読めます。

共同不法行為と「連帯」の意味

配偶者と不倫相手の関係を説明するときに使われるのが、民法719条1項です。条文は「数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う」と定めています。

図解:不倫の慰謝料で「連帯」が意味すること
  • 請求する人(不倫をされた配偶者)
    • → 不倫をした配偶者に請求できる
    • → 不倫相手に請求できる(故意・過失などの要件がある)
    • → 両方に請求することもできる
  • ただし、受け取れるのは損害の分まで。二人から重ねて満額を受け取れるわけではない
  • 二人の間でどちらがどれだけ負担するか(求償)は、719条の条文には書かれていない

「連帯」は、請求する側から見て、どちらに対しても損害の賠償を求めうるという意味です。請求する側が受け取れるのは、あくまで損害の分までです。どちらか一方だけに請求する、両方に請求する、という選び方と二重取りにならない線は配偶者と不倫相手の両方に慰謝料を請求できるかの記事で扱っています。払った人がもう一方に負担を求める「求償」は条文ではなく判例と解釈の話なので、不倫の求償権の記事で別に整理しました。

「浮気 法律」で調べた人へ:条文の位置の早見表

浮気・不倫で出てくる民法の条文を、何を決めているかで並べました。条文の文言はe-Gov法令検索の民法(2026年4月1日施行の改正後の現行条文)で読めます。

条文 何を定めているか この話題で使う場面
752条 夫婦の同居・協力・扶助 夫婦の義務の基本。「貞操」の語はない
760条 婚姻から生ずる費用の分担 別居中の生活費(婚姻費用)
763条 協議による離婚 話し合いの離婚は理由を問わない
770条 裁判で離婚を求められる4つの場合と、棄却できる場合 1号が不貞な行為。4号はその他の重大な事由
709条・710条 不法行為の賠償と、財産以外の損害の賠償 慰謝料の根拠
719条 共同不法行為者の連帯責任 配偶者と不倫相手の関係
724条 不法行為の請求権の時効 請求できる期間

時効の期間や数え始めは、慰謝料の正本の記事不貞行為の慰謝料の仕組みにまとめています。770条は2026年4月の改正で旧4号が削除され、号の番号が変わっています。古い解説の「5号」は今の4号です。

法律の話を進める前に、自分で決めておくこと

法律で何ができるかを調べると、「請求できるか」「離婚できるか」に目が行きがちです。実際に弁護士に相談すると、最初に聞かれるのは次のような点です。準備しておくと、相談が具体的な話から始まります。

  1. 夫婦関係をどうしたいか:続けたい、離婚を考えている、まだ決められない
  2. 誰に何を求めたいか:関係をやめてほしい、謝罪がほしい、慰謝料を考えている
  3. いつ何があったか:知った日、関係が始まったと思われる時期、関係を持った当時の夫婦の状態
  4. 手元にある材料:写真、メッセージ、領収書。自分の手元で正当に得たものかも書き添える
  5. 相手のこと:不倫相手の名前・連絡先を知っているか、既婚と知っていたと考える理由

金額については、この記事で取り上げた最高裁の判決は金額の基準を示しておらず、事情ごとに違います。金額の情報をどう読むかは不倫慰謝料の相場の記事、不倫相手への請求の考え方は不倫相手に慰謝料を請求するときの記事を参照してください。相談先ごとにできることの違いは弁護士・司法書士・行政書士の違いの記事にまとめています。

個別の行為がどう見られるかを知りたいときは、風俗通いは不貞行為になる?法律上の見方と夫婦で話し合うときの材料へ進んでください。体の関係がない場合の扱いを知りたいときは、心の浮気は浮気?体の関係がないときの法律上の扱いと夫婦の向き合い方へ進んでください。

よくある質問

Q. 不倫は犯罪になりますか?

刑法には、配偶者以外との性的関係そのものを罰する条文はありません。不倫で問われるのは、主に慰謝料(民法709条・710条)と離婚(770条)という民事の責任です。ただし、重ねて婚姻届を出す重婚(刑法184条)や、不倫をめぐる脅し・晒しなど別の行為は刑罰の対象になりえます。

Q. 不倫相手だけに慰謝料を請求することはできますか?

民法719条は、共同の不法行為をした人は各自が連帯して賠償の責任を負うと定めています。そのため請求する側は、配偶者と不倫相手のどちらに求めるかを選べる仕組みになっています。ただし不倫相手の責任には故意・過失などの要件があり、二重に受け取れるわけでもないので、請求の相手と順番は弁護士と相談して決めます。

Q. 民法に「貞操義務」という条文はありますか?

民法752条は「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定めていますが、「貞操」という言葉は条文にありません。一方で770条1項1号が、不貞な行為を裁判で離婚を求める理由に挙げています。最高裁昭和54年判決は、配偶者以外と肉体関係を持った第三者の責任を、他方の配偶者の「夫又は妻としての権利」の侵害として説明しています。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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