子どもと親権 / Q&A

離婚・別居で子供が転校するとき:手続きと学校への伝え方

この記事のもくじ
  1. 転校の手続きは、教育委員会と今の学校の2か所で進む
  2. 住民票を移さないまま転校したいとき
  3. 住所を知られたくないときの、学校への伝え方
  4. 相手の同意は要る?共同親権のときの考え方
  5. 子どもへの伝え方と、名字・生活面で一緒に考えること

暴力や脅しから逃れるための転校なら、手続きより先に窓口へ相談してください(110番、配偶者暴力相談支援センターにつながる #8008)。番号と受付時間は浮気・不倫の相談先一覧:悩み別の窓口と番号・受付時間の早見表にあります。

離婚や別居で子どもが転校するとき、手続きの窓口は2つです。今通っている学校と、転居先の市区町村の教育委員会で、住民票を移す場合は転居先の教育委員会が新しい学校を指定して通知します。住民票をすぐには移せない事情があるときは、移さずに通う方法もあります(DVから避難した場合の扱いは文部科学省が示しています)。あわせて、父母がどちらも親権者のあいだは、転学を一方だけで決めてよいのかという問題が出ます。この記事では、手続きの順番、学校への伝え方、相手の同意が要る場面を整理します。

転校の手続きは、教育委員会と今の学校の2か所で進む

公立の小学校・中学校の場合の流れは、次のとおりです。書類の名前や窓口は市区町村ごとに違うので、転居の日が見えた段階で、今の学校と転居先の教育委員会の両方に電話して確かめてください。

  1. 今の学校の担任か管理職に、転校の予定を伝える。 転居の日の見込みと、転居先の市区町村名を知らせます。住所を知られたくない事情があるときは、この段階で詳しく伝えます(次の見出し)。
  2. 転居先の市区町村で、住民異動の手続きをする。 転入が受け付けられ、子どもが転居先の学齢簿に新たに記載されると、教育委員会が保護者に入学期日を通知し、学校を指定します。法令上は「速やかに」通知する扱いです(学校教育法施行令第5条・第6条)。
  3. 今の学校から、新しい学校へ書類が送られる。 校長は、転学した子どもの指導要録の写しを作り、転学先の校長に送ります(学校教育法施行規則第24条)。在学を証明する書類などの名前と受け取り方は自治体で異なります。
  4. 新しい学校の登校日と持ち物を、学校に確かめる。 制服、教材、給食の手続き、学童保育の有無は、学校や自治体の案内に従います。

高校は仕組みが違います。他の高等学校への転学を希望するときは、今の学校の校長が事由を付け、在学証明書その他の必要な書類を転学先の校長へ送り、転学先の校長が教育上支障がなければ許可できます(学校教育法施行規則第92条)。公立でも私立でも、転学先の学校の受け入れ可否と時期を、先に確かめるのが順番です。

早見表:転校の手続きで連絡する先と中身
連絡する先 伝えること 頼むこと
今の学校(担任・管理職) 転居の予定日、転居先の市区町村 書類の準備、担任から子への声かけの時期
転居先の教育委員会 転居日、子の学年、住民票の状況 学校の指定と入学期日の通知、必要書類の案内
転居先の市区町村の窓口 住民異動の届出 児童手当などの手続きの案内(別居で住民票を移す?移さない?の記事)
新しい学校 登校開始日の希望、配慮が要る事情 登校前の面談、連絡先の登録方法の確認

住民票を移さないまま転校したいとき

別居の初期は、住民票をすぐには移せない事情もあります。文部科学省の就学事務Q&Aは、配偶者からの暴力で避難した保護者と子について、住民票が前の住所のままでも、実際に転居先に住んでいれば、転居先の教育委員会が学齢簿を作って就学の通知などの手続きをとる、と説明しています。そのとき教育委員会は、住民基本台帳に誤りや漏れがあると認めた旨を市区町村長に伝え、前住所地の教育委員会にも通知します。前住所地への通知は、DVの被害者の場合は被害者の意向を踏まえて行うとされています。

この説明はDVからの避難を想定したものです。それ以外の別居で住民票を移さずに通わせたいときは、住民票を元のままにして転居先の学校に通わせる区域外就学の方法があり、保護者が就学先の教育委員会などの承諾を証する書面を添えて、住所地の教育委員会に届け出ます(学校教育法施行令第9条)。承諾する前に、受け入れ側の教育委員会が住所地の教育委員会と協議することになっています。どちらの扱いになるかは自治体の運用が分かれるところなので、転居先の教育委員会の学務担当に、事情を伝えて相談してください。

なお、子どもの転入・転出の届出に、父母双方の同意は要りません(法務省Q&A・行政手続・支援編)。住民票の手続きと、学校を変える手続きは、別の話として切り分けて考えます。

住所を知られたくないときの、学校への伝え方

DV・ストーカー・児童虐待などで、相手に居所を知られると危険がある場合は、手続きを進める前に、次の順で動くと安全です。

  1. 配偶者暴力相談支援センターなどに相談する(DV相談ナビ #8008。窓口の一覧は浮気・不倫の相談先一覧の記事、避難の準備はDVから逃げる準備の記事)。
  2. 住民票を移す場合は、市区町村に支援措置を申し出る。相手からの住民票の写しの交付や閲覧が制限されます。有効期間は確認結果の連絡日から1年で、続けるには期間の終わりの1か月前から再度の申出が要ります。同じ住所に記載されている子どもも、申出者とあわせて対象にできます(総務省)。
  3. 学校と教育委員会には、早い段階で事情を伝える。文部科学省は、関係者の間で被害者の子の就学であることを共有し、転学先や居住地を知る人を必要最小限にすること、前住所地の学校の側も情報を厳重に管理することを求めています。

学校に伝える内容は、次のように整理して口頭か文書で渡すと、話が早く進みます。

文例:「配偶者からの暴力のため、住所を相手に知られないようにしたいと考えています。転校先の学校名と住所は、相手や第三者に教えないでください。連絡は、携帯電話のこの番号だけにお願いします。迎えに来てよい人は私と〇〇だけです。問い合わせがあったときは、まず私に連絡してください。」

ここで注意したいのは、支援措置が完全な秘密を約束する制度ではないことです。相手方の依頼を受けた第三者からの請求も、本人確認と請求の理由を厳しく審査する仕組みですが、住所が一切知られないという保証ではありません。また、DVやストーカーなどに当たらない単なる別居や、浮気の相手方に住所を知られたくないだけの場合は、支援措置の対象になりません。その場合は、学校に連絡先と迎えの範囲を伝えて協力を求める、という範囲での対応になります。

相手の同意は要る?共同親権のときの考え方

婚姻中は、父母の双方が親権者です。離婚後も、父母が合意して共同親権とした場合や、裁判所が双方を親権者と定めた場合は、双方が親権者です。この場合、親権は父母が共同して行うのが基本で、転居や転学は「日常の行為」に当たらないと、法務省のQ&Aに書かれています。入学・退学・転学の手続き、就学校の変更の申立て、区域外就学の手続きも、日常の行為には当たらない例として挙がっています。

一方で、次の場合は一方だけで決められます。

  • 子の利益のため急迫の事情があるとき。DVや虐待からの避難、入学手続の期限が迫っている場合などが、法務省の例です。
  • 離婚後に単独親権となった親が決めるとき。
  • 父母の協議が調わないとき、家庭裁判所に、特定の事項を一方が行える旨を定めてもらうとき(親権行使者の指定)。

法務省のQ&Aは、一方の同意を得ずに転学などを行った場合、その経緯によっては、後の親権者の指定・変更や親権停止の審判で、不利益な方向で考慮される可能性にも触れています。学校の側でも、父母の意見が異なると学校や教育委員会が知っているときは、DVからの避難のような急迫の事情がある場合を除き、就学校の変更の申立てを有効なものとして扱えないとされています(法務省Q&A・行政手続・支援編)。

実際には、次の順で進めるのが無理の少ない形です。

  1. 転居の日と転校の予定を、相手にメールなど記録が残る形で伝え、返事をもらう。
  2. 返事がない、反対された、というときは、記録を残したうえで、親権行使者の指定の調停・審判を弁護士や家庭裁判所の窓口に相談する。入学手続の期限が迫る場合は、審判の申立てが考えられ、結論まで数か月かかることもあるとされています。
  3. 危険があって相手に知らせられないときは、その事情を先に窓口へ相談し、転学の手続きを進める根拠を整理してもらう。

別居中の子どもの居所そのものの考え方は別居するとき子供をどうする?の記事で扱います。

子どもへの伝え方と、名字・生活面で一緒に考えること

転校は、子どもにとって友達と離れる出来事です。決まったことを短く先に伝え、質問に答える時間をとります。年齢別の伝え方は離婚を子供にどう伝える?の記事に、例を載せています。親の浮気が離婚や別居の理由になっていても、子どもの転校の話に、浮気の経緯を持ち込む必要はありません。影響を小さくする考え方は浮気と子供の記事へ。

転校の時期に、次のこともそろえると、学校での混乱が減ります。

よくある質問

Q. 学期の途中でも転校できますか?

はい。住所の変更で転居先の学齢簿に新たに記載された子には、教育委員会が入学期日を「速やかに」通知する扱いで(学校教育法施行令第6条)、学期の区切りまで待つ定めはありません。文部科学省の就学事務Q&Aも、学年の途中の転校(就学校の変更)を認めうるとしています。受け入れの日取りは学校ごとの事情で変わるので、転居の日が決まった時点で転居先の教育委員会に電話で確かめてください。

Q. 転校先の学校名を、もとの学校から相手に聞かれたら教えてしまいますか?

文部科学省は、DVの被害者の子どもの就学について、転学先や居住地を知る人を必要最小限にし、学齢簿や指導要録の開示請求にも慎重に対応するよう求めています。相手に知られたくない事情があるときは、転校の手続きを始める前に、もとの学校と転居先の教育委員会の両方へ、その旨を伝えておくと配慮を受けやすくなります。

Q. 転校のことを、もう一方の親に知らせる必要はありますか?

婚姻中や離婚後の共同親権のあいだは、転学は父母が共同で決める事項なので、事前に相談して同意を得るのが基本です(DV・虐待からの避難のような急迫の事情を除く)。離婚後に単独親権となった親は、転学を単独で決められます。ただし、離れて暮らす親と子の交流の取り決めがあるなら、その中で学校の連絡先をどう伝えるかも決めておくと、行き違いが減ります(民法766条、817条の13)。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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