不倫相手の離婚を待つ前に:「離婚する」と言われたときの現実
「離婚するから待っていて」と言われても、離婚は不倫相手ひとりの決意では成立しません。 協議離婚なら相手とその配偶者の合意と届出が要り、合意できなければ家庭裁判所の調停、さらに裁判へと進みます。相手の配偶者が離婚に応じない場合、不倫をした側からの離婚の請求は裁判で厳しく見られます。そして待っている間も、あなたは相手の配偶者から慰謝料を請求されうる立場のままです。待つかどうかは、相手の言葉ではなく「確かめられる事実」と「自分で決めた期限」で判断してください。
「離婚する」と言われても、成立までに要るもの
離婚の方法は、大きく協議・調停・裁判に分かれます。それぞれ、誰の何が要るかが違います。
| 方法 | 成立に要るもの | 期間の目安(公的な数字) |
|---|---|---|
| 協議離婚 | 夫婦の合意(民法763条)と、市区町村への離婚届の提出・受理(764条で739条を準用) | 合意できればすぐ。合意までの期間は夫婦しだい |
| 調停 | 家庭裁判所の夫婦関係調整調停(離婚)で合意する。裁判の前に原則として調停を申し立てる(家事事件手続法257条) | 令和7年の婚姻関係事件57,491件のうち、6か月以内に終わったのは約58%、1年以内は約87%(筆者の計算) |
| 裁判 | 民法770条1項の離婚の理由があると認められ、判決が確定する(和解で終わる事件も多い) | 令和7年に終わった人事訴訟(離婚以外も含む)8,930件のうち、1年以内は約48%、2年以内は約85%(筆者の計算) |
| ※期間はいずれも司法統計年報(家事編)令和7年の表から計算。調停の数字には、離婚の成立だけでなく不成立・取下げも含む |
表から分かるのは、相手の配偶者が離婚に同意しない場合、調停と裁判を合わせて1年を超えることも珍しくない、ということです。しかも、調停の段階で終わったからといって離婚が成立したとは限りません。
もう一つの壁が、有責配偶者の問題です。不倫をした側(有責配偶者)から裁判で離婚を求めた場合について、最高裁昭和62年9月2日大法廷判決は、別居が年齢や同居期間と比べて相当の長期間に及ぶこと、未成熟の子がいないこと、相手が離婚で極めて苛酷な状態に置かれるなどの特段の事情がないこと、を挙げて総合的に判断するとしました。相手の配偶者が拒み続ける場合、「すぐに離婚できる」とは限らず、かなりの時間がかかりうる状況です。考え方の全体は有責配偶者とはで確かめてください。
待っている間に起きうること:責任と生活
待つことは、時間だけでなく、責任とお金の面でも負担を伴います。
- 相手の配偶者からの請求:民法709条・710条の考え方で、既婚と知って関係を続ければ、相手の配偶者から慰謝料を求められうる立場になります。請求権は、損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で時効により消えるので(724条)、離婚が決まった後や、関係が終わった後に届くこともあります。
- 「夫婦はもう終わっている」と聞いていた場合:最高裁平成8年3月26日判決は、関係を持った当時に婚姻関係がすでに破綻していれば、特段の事情がない限り責任を負わないとしました。2026年6月5日の最高裁判決は、既婚と知っていたとは認定されず、離婚する・破綻していると聞かされていた事案で、過失の検討を改めて求めたものです(詳しくは既婚者だと知らなかったのに慰謝料を請求されたら)。どちらも「聞いていた」だけで責任を免れるという判断ではありません。
- 相手の家計:別居していても、夫婦は婚姻費用(別居中の生活費など)を分担します(民法760条)。離婚が成立するまで、相手の収入の一部は配偶者や子どもの生活に向かい続けます。
- 結婚はできない:民法732条は重婚を禁じています。離婚が成立するまで、あなたと相手は婚姻届を出せません。
待っている間に妊娠した、または妊娠の可能性があるときは、考えることがさらに増えます。早めに不倫で妊娠したときの相談先と制度を読んでください。
待つかどうかを決めるために確かめられること
「離婚する」という言葉は、本心であっても、実際に進んでいるかどうかとは別です。言われていることと、確かめられる事実を並べてみてください。事実は、相手に尋ねて答えてもらえる範囲で集めます。相手の家族の書類や連絡を、無断で見ようとはしないでください。
| 言われていること | 確かめられる事実の例 |
|---|---|
| 「もうすぐ離婚する」 | 配偶者に離婚を切り出したか。いつ、どんな返事だったか |
| 「話し合いが進んでいる」 | 子ども・お金・住まいのどれが決まり、どれが決まっていないか |
| 「調停をする」 | 申し立てたか。次の期日はいつか |
| 「別居している」 | いつから、どちらが家を出たか。住民票はどうなっているか |
| 「弁護士に頼んだ」 | 相談しただけか、依頼したか |
| 「子どもが大きくなったら」 | 子どもの年齢と、具体的な時期 |
答えがあいまいなまま半年、1年と過ぎる場合、相手にとって離婚は「いつかしたいこと」にとどまっている可能性があります。そのときに待ち続けるかどうかは、あなた自身の人生の時間の使い方の問題です。
自分の側の状況も書き出しておきます。仕事や住まいを相手に合わせて変えていないか、周りの人に相談できているか、気持ちが限界に近づいていないか。待つことの負担が大きくなっているなら、その事実も判断の材料です。
待つのをやめる・続ける、それぞれの次の一歩
待つのをやめると決めたら、関係を終える段取りに進みます。手順は不倫を終わらせる手順と相談先に、別れの伝え方は不倫相手との別れ方にまとめています。相手が同じ職場なら、別れた後の過ごし方を社内不倫で別れた後も同じ職場で働くときで先に考えておくと安心です。
続けると決めた場合も、次のことは自分を守るために決めておきます。
- 確かめられる出来事に結びつけた期限(FAQ の例を参考に)
- 相手の配偶者から連絡や請求が来たときの動き方。返事の前に不倫相手の妻や夫から連絡が来たときの対応を読む
- 書面が届いたら、慰謝料を請求されたらすることの順番で、無視も即答もしない
- 相手の離婚が成立した後に結婚を考えるなら、浮気相手と結婚・再婚を考えるときに確かめることを二人で読む
待つことを選んでも、やめることを選んでも、自分の生活と安全を後回しにしないことが、いちばん大切な線です。
よくある質問
Q. 相手が「もう別居している」と言うなら、待っている間に慰謝料を請求されることはありませんか?
別居していることだけで、請求されないとは言えません。最高裁平成8年3月26日判決は、関係を持った当時に婚姻関係がすでに破綻していれば原則として責任を負わないとしましたが、別居の年数で線を引いたものではなく、破綻していたかは事情全体で判断されます。別居の時期や経緯を書き出し、自分の場合は弁護士に確かめてください。
Q. 離婚調停を申し立てたと言われました。どのくらいで終わりますか?
司法統計年報(家事編)令和7年では、婚姻関係事件の約58%が申立てから6か月以内に、約87%が1年以内に終わっています(筆者の計算)。ただし終わり方には、離婚の成立だけでなく、不成立や取下げも含まれます。不成立なら、その後に裁判へ進むかどうかが別に問題になります。
Q. 待つ期限は、どう決めればいいですか?
相手の言葉ではなく、確かめられる出来事に期限を結びつけるのが現実的です。たとえば「3か月以内に配偶者へ離婚を切り出す」「半年以内に調停を申し立てる」のように決め、その出来事が起きなかったら関係を見直す、と自分の中で決めておきます。期限を相手に約束させることより、自分が守れる線を持つことのほうが大切です。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第709条・第710条・第724条・第732条・第760条・第763条・第764条・第770条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 家事事件手続法 第257条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 司法統計年報(家事編)令和7年 第16表・第63表(最高裁判所)
- 最高裁判所 昭和62年9月2日 大法廷判決(有責配偶者からの離婚請求)(裁判所)
- 最高裁判所 平成8年3月26日 第三小法廷判決(婚姻関係破綻後の関係)(裁判所)
- 最高裁判所 令和8年6月5日 第二小法廷判決(不貞の相手方の過失)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。