婚姻費用はいつまで?離婚の成立や同居の再開で終わる場合
この記事のもくじ
婚姻費用(別居中の生活費)は、原則として離婚が成立するまで続きます。法務省の案内は、別居している状態でも、離婚が成立するまでは原則として夫婦は生活費を分担しなければならないと説明しています。別居中の送金が終わりを迎えるのは、離婚が成立したとき、同居を再開して同じ家計に戻ったとき、調停や審判で定めた終わりの時期が来たときの3つの場面です。離婚したあとの子どもの生活費は婚姻費用ではなく養育費の話になるので、切り替えの手順まで、この記事で順に確かめます。
婚姻費用が終わる3つの場面:早見表
婚姻費用は、夫婦が互いの収入や資産に応じて、婚姻から生ずる費用を分け合う仕組みです(民法760条)。同居しているかどうかを問わず、夫婦である間は問題になります。その裏返しとして、「夫婦でなくなる」「別居が終わる」「決めた期限が来る」のどれかが起きると、終わりを考える場面になります。
| 場面 | 婚姻費用 | そのあとに必要なこと | 詳しい確認先 |
|---|---|---|---|
| 離婚が成立した | 終わる | 子の分は養育費の取り決め。夫婦のお金は財産分与などで別に整理する | 離婚届の受理日と調停調書の日付 |
| 同居を再開した | 別居中の費用としては必要がなくなるのが通常。止める時期と家計の入れ方は書面で確認する | 再び別居になったときのために、再開の日を記録する | 当事者間の合意書、調停調書 |
| 調停・審判で終わりの時期を定めていた | 定めた時期まで続く | 時期が来る前に、続けるか・変えるかを決める | 調停調書・審判書の支払の項 |
「いつまで」を決める基準は1つではなく、離婚の成立、同居の再開、書面に書かれた終わりの時期の3つを順に見ていくのが現実的です。次の見出しから、場面ごとに確かめます。
離婚が成立したとき:婚姻費用の最後と養育費への切り替え
婚姻費用が終わる最も多い場面は、離婚の成立です。協議離婚は協議のうえ離婚届が受理された時(民法763条・764条)、調停離婚は調停が成立して調書に記載された時に離婚が成立します。法務省の案内にある「離婚が成立するまでは」という言い方は、この時点を指しています。
離婚が成立すると、夫婦であることを前提にした婚姻費用の分担はなくなります。切り替わる先は次の2つです。
- 子どもの生活費:民法766条が定める「子の監護に要する費用の分担」、つまり養育費に移ります。離婚の前は、子どもの生活費も婚姻費用の中に含まれて扱われます。
- 配偶者自身の生活費:養育費は子のための費用なので、婚姻費用に含まれていた配偶者本人の分は引き継がれません。離婚後の暮らしの資金は、財産分与や年金分割など別の取り決めで整えます。
養育費の決め方は養育費とは?決め方・算定表・2026年からの法定養育費までで、金額の目安の読み方は養育費算定表の使い方:表の選び方・収入の読み取り・幅の扱いの手順で説明しています。
養育費を決めずに離婚した場合の備えとして、2026年4月1日から法定養育費の制度が始まっています。離婚の日が2026年4月1日以後で、養育費の定めをしないまま協議離婚したとき、子を主に監護する親は、離婚の日から、法務省令で定める月額を請求できます。ただし取り決めまでのつなぎの額で、算定表の額の代わりにはなりません。数字と経過措置は離婚の法改正2026年4月施行:共同親権・法定養育費・財産分与の変更点にまとめています。
同居を再開したとき:止める前に決めておくこと
別居が解消して同居に戻れば、生活費は同じ家計から出す形に戻ります。婚姻費用は別居中も含めて夫婦が分け合う費用ですが、「別居しているから別に送金する」という必要は通常なくなります。
問題は、再開の日と、送金をやめる日をどうそろえるかです。裁判所の案内は、調停や審判で婚姻費用の額が決まった場合、その内容は確定判決と同じ効果を持ち、義務者が支払わなければ債務として積み重なり、履行勧告や強制執行がされる可能性があると説明しています。つまり、取り決めがあるのに、自分の判断で送金を止めると、後から未払いとして問題になるおそれがあります。
同居の再開を考えるときは、次の順で進めると行き違いが減ります。
- 同居を始める日を決める。 荷物を戻した日、家計を一つにする日など、基準を決めます。
- 送金をいつ終えるかを書面にする。 メールやメッセージでも、日付と内容が残ります。
- 再び別居になった場合の扱いを書く。 試しに同居する段階なら、うまくいかずに別居へ戻ったとき、生活費をどうするかも決めておきます。
- 調停調書や審判書がある場合は、その終わりの時期の書き方を読む。
文例:「○月○日から同居を再開します。同日以後は、婚姻費用としての送金は行わず、生活費は同居の家計から支出します。再び別居になった場合は、あらためて婚姻費用について話し合います。」
これは書き方の一例で、個別の事情に合わせた書面づくりは弁護士や公証役場に相談してください。再構築を目指す場合の別居中の調停には、円満調停という手段もあります(別居中の調停の使い分け:円満調停と婚姻費用の分担請求調停)。
調停や審判で終わりの時期を決めたとき
調停や審判で婚姻費用が決まっているなら、基準はその書面です。福岡家庭裁判所の案内は、婚姻費用の支払義務は調停や審判で定められた時期まで続くとしています。同時に、収入の増減や病気など大きな事情の変化があった場合には、増額・減額を求める調停や審判の申立てができるとも案内しています。
調停調書や審判書を読むときの確認点は次の4つです。
- 支払いの始まりと終わりが、日付や出来事(離婚、同居の再開など)でどう書かれているか
- 毎月の額と、支払日・振込先
- 子の学費など、毎月の額とは別に分ける費用の定めがあるか
- 変更したくなったとき、どの裁判所に申し立てるか(調停を扱った家庭裁判所の案内で確かめられます)
書面の言葉が読みにくいときは、家庭裁判所の手続案内で、手続の面から説明を受けられます(家庭裁判所の手続案内とは?調停の申立て方を無料で聞ける窓口)。内容の解釈や、止めてよいかの判断は法律相談になるため、弁護士に確かめます。
離婚が決まったら進める手順:婚姻費用から養育費・財産分与へ
離婚の日が見えてきたら、婚姻費用を終えるための整理を、次の順で進めます。
- 離婚の日(届出日)を決める。 婚姻費用をいつまで払う・受け取るかの区切りになります。
- 婚姻費用の最後の月と、未払い分があるかを確認する。 離婚の合意書に清算条項(この書面に書いたほかには互いに債権債務がないことの確認)を入れる場合、未払いの婚姻費用がその範囲に入るかは書き方で変わるので、入れる前に未払いの有無を整理し、文言は弁護士や公証役場で確かめます。
- 養育費を決める。 子の人数・年齢と、双方の年収から算定表で目安を読み、月額・終わりの時期・支払方法を書面にします。
- 財産分与・年金分割・慰謝料の取り扱いを決める。 全体像は浮気が原因の離婚とお金:婚姻費用・養育費・財産分与・慰謝料の全体像の表で確かめられます。
- 取り決めを公正証書や調停調書にする。 払われないときに強制執行へ進める形にしておくと、後の手続が短くなります。
婚姻費用をいつの分から請求できるか(始期)は、裁判所の案内にも民法760条にも書かれていません。調停の申立日が手続上の起点になることと、請求の意思を示した日の記録の残し方は婚姻費用の分担請求調停:申立ての方法・費用1,200円・必要書類と当日の流れにあります。
婚姻費用の送金が止まった、減らされたという場面は、終わりの話とは別です。まだ離婚が成立していないなら、婚姻費用はまだ続いているので、婚姻費用の分担請求調停:申立ての方法・費用1,200円・必要書類と当日の流れや、婚姻費用を払わない相手には:取り決めの形別に使える手段と子の分の先取特権を読んでください。仕組みの全体は婚姻費用とは?別居中の生活費を請求する仕組みと決め方にあります。
| 順番 | やること | 残すもの |
|---|---|---|
| 1 | 離婚の日(届出日)を決める | 合意した日付 |
| 2 | 婚姻費用の最後の月と未払いを整理する | 振込の記録、合意書 |
| 3 | 養育費の月額・終わり・支払方法を決める | 算定表の枠、収入の資料 |
| 4 | 財産分与・年金分割・慰謝料の扱いを決める | 財産の一覧 |
| 5 | 公正証書か調停調書にする | 正本(強制執行に使う書面) |
よくある質問
Q. 離婚調停や離婚の話し合いをしている間も、婚姻費用は続きますか?
法務省の案内は、離婚が成立するまでは原則として夫婦は生活費を分担しなければならないとしています。話し合いや調停の最中でも、離婚届が受理されて離婚が成立するまでは、婚姻費用の分担の問題が続くと考えるのが基本です。すでに調停や審判で額が決まっているなら、その定めの内容に沿って支払いが続きます。
Q. 離婚の日が決まりました。養育費が決まるまでの間、子どもの生活費はどうなりますか?
離婚が成立すると婚姻費用は終わるので、子どもの分は養育費の取り決めに移ります。離婚の日が2026年4月1日以後で、養育費の取り決めをしないまま協議離婚した場合は、子を主に監護する親が離婚の日から月額の法定養育費を請求できます。ただしこれは取り決めまでのつなぎの額なので、離婚前に養育費まで決めておくほうが安定します。離婚調停の中でも養育費は話し合えます。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第752条・第760条・第763条・第764条・第766条・第766条の3(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 離婚前別居中でも請求できますか?(法務省)
- 婚姻費用の分担について(福岡家庭裁判所・令和5年2月版)(裁判所)
- 婚姻費用の分担請求調停(裁判所)
- 養育費請求調停(法定養育費の説明を含む)(裁判所)
- 民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について〔令和8年4月1日施行〕(法務省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。