離婚後の住まい探し:公営住宅やひとり親向けの支援の調べ方
この記事のもくじ
暴力や脅しがあって家を離れたいときは、住まい探しより先に、配偶者暴力相談支援センターなどの窓口が要ります。番号と受付時間は浮気・不倫の相談先一覧:悩み別の窓口と番号・受付時間の早見表にあります。相手に新しい住所を知られたくない場合は、住民票の写しの交付などを制限するDV等支援措置(総務省)の申出先が市区町村の窓口です。
離婚後の住まいは、①今の家に残る、②実家や親族の家に身を寄せる、③民間の賃貸に移る、④公営住宅に申し込む、⑤母子生活支援施設などの福祉の入所施設を使うの5つから選びます。このうち公営住宅は、公営住宅法が「住宅に困窮する低額所得者」のための低廉な家賃の住宅と定めていて、収入の上限と募集の方法が自治体ごとに決まります。この記事は、公営住宅とひとり親向けの住まいの支援を、どこで何を調べ、何を聞いて申し込むかの順に整理したものです。
離婚後の住まいの選択肢:まず5つに分けて考える
住まいは、費用だけでなく「いつ動けるか」「子どもの学校や職場を変えずにすむか」で選びます。急ぐ度合いと向き不向きを並べました。
| 選択肢 | 向いている場面 | 先に確かめること |
|---|---|---|
| 今の家に残る | 学校・職場を変えたくない | 名義、ローン、相手との取り決め |
| 実家・親族の家 | 当面の費用を抑えたい | 同居する期間、世帯の範囲(手当の審査に響く) |
| 民間の賃貸 | 早く住まいを決めたい | 初期費用、収入の証明、保証の方法 |
| 公営住宅 | 家賃を抑えて長く住みたい | 収入基準、募集時期、申込みの書類 |
| 母子生活支援施設 | 子どもと安心して暮らせる場所が必要 | 福祉事務所への入所申込み |
今の家に残る場合は、名義とローンの扱いで話が大きく変わるので、離婚後も今の家に住み続けるには:名義・ローン・使用の取り決めで先に整理してください。家を売る・渡すという方向なら、財産分与で家はどうする?売る・住み続ける・名義を移す3つの選択肢が入口です。実家に移る場合は、同じ世帯に収入のある親がいると手当の所得審査に影響することがあるため、児童扶養手当とは?離婚後に受け取れる条件と申請の流れの所得の項で確かめておきます。
公営住宅に入れるのはどんな人か
公営住宅法は、1条で「住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸する」ことを目的に掲げ、23条で入居者の資格を定めています。条文の要点は2つで、収入が条例で定める金額以下であることと、現に住宅に困窮していることが明らかであることです。同法25条は、申込みが戸数を超えるときは、住宅に困っている実情を調べたうえで、政令の選考基準と条例に従って公正な方法で選ぶと定めています。
収入の上限は、国が政令(公営住宅法施行令6条)で目安を示し、各自治体が条例で決めます。政令の額は、一般の世帯に当たる「本来階層」が月額158,000円、特に居住の安定を図る必要がある場合として条例で定める「裁量階層」が月額259,000円です。ここでいう「収入」は、毎月の給料の額ではありません。前年の所得から扶養親族などの控除を引き、月額にした額で、計算の細目は自治体の募集要項に書かれています。給与で働く人は、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」が出発点になります。
つまり、「手取りが月16万円だから対象外」と自分で決めるのは早すぎます。扶養する子どもの数で控除が変わるため、募集要項の計算式に前年の源泉徴収票や課税証明書の数字を当てはめてから判断してください。基準の額や優遇の中身は、各自治体の条例で決まります。
ひとり親向けの住まいの支援を調べる順番
こども家庭庁の資料は、住まいの支援として、住宅支援資金貸付や、公営住宅の優先入居などによる生活基盤の安定を挙げています。国の資料にある住まい関連の支援は、次のとおりです。実施するかどうか、内容、窓口は自治体ごとに違います。
- 公営住宅の優先入居:優遇の中身は自治体の募集要項で決まります。
- 住宅支援資金貸付:児童扶養手当を受けている(または同等の所得水準の)ひとり親で、母子・父子自立支援プログラムの策定を受け、自立に向けて取り組んでいる人が対象です。入居している住宅の家賃の実費を、月7万円を上限に原則12か月貸し付け、無利子です。1年以内に、プログラムの目標に合った就職や転職をして1年間働き続けると、返済が免除されます(こども家庭庁の資料)。窓口は都道府県・指定都市なので、住所地の自治体に問い合わせます。
- ひとり親家庭地域生活支援事業:離婚の前後に、母子生活支援施設や民間賃貸住宅、シェアハウスなどを一定期間使いながら、住まいと仕事の支援を受ける事業です。令和6年度の利用は全国で62件と少なく(こども家庭庁の資料)、実施する自治体は限られるので、市区町村のひとり親担当窓口で、実施の有無と、離婚協議中でも使えるかを聞きます。
- 母子父子寡婦福祉資金の貸付:12種類の資金の中に、住宅や転宅(引越し)の資金があります。利子は、保証人がいれば無利子、いなければ年1.0%です。償還は据え置き期間の後、資金ごとに決まった期限(3〜20年)で、貸付なので返済が必要です。
- 母子生活支援施設:児童福祉法38条は、配偶者のない女子またはこれに準ずる事情にある女子と、その人が監護する児童を入所させて保護し、自立のために生活を支援する施設と定めています。入所の申込みの窓口は福祉事務所で、どこが担当かは市区町村の福祉の窓口で教えてもらえます。
住まいの費用そのものを助ける制度は、貸付が中心です。返済の見通しを立てずに借りると、後で家計を圧迫するため、毎月の収支は離婚後の生活費の見通し:収入・手当・支出の表の作り方の表に入れてから決めます。制度全体はひとり親家庭の支援制度一覧:手当・医療費・住まい・仕事にまとめます。
申し込む前に窓口で聞くこと:手順
公営住宅の申込みは、窓口で聞く内容が決まっているので、次の順で進めると無駄がありません。
- 住みたい地域の都道府県・市区町村の住宅課(公営住宅の担当)か、募集を代行している窓口を調べ、最新の募集要項を入手する。
- 募集の時期、申込みの方法、抽選か点数制かを確かめる。募集の時期は自治体で違うため、次の募集がいつかを聞く。
- 「離婚協議中」「別居中」「離婚が成立した」のいずれの段階かを伝え、その段階で申し込めるかを聞く。
- 世帯として数える人、同居する家族に求める条件、住民票を置く場所の要件を聞く。
- 前年の所得を示す書類、住民票、離婚を示す書類など、募集要項が求める書類の一覧をもらう。
- ひとり親世帯の優遇の有無、入居までにかかる期間の目安、家賃の決まり方を聞く。
窓口で伝える内容は、次のようにまとめておくと話が早くなります。
例:「離婚に向けて別居中で、子どもが1人います。公営住宅に申し込める時期と、ひとり親世帯向けの枠があるかを教えてください。必要な書類の一覧もいただけますか」
公営住宅は申込みから入居までに時間がかかることがあります。すぐ住む場所が要る場合は、民間賃貸や親族の家を先に確保し、公営住宅は並行して申し込むという進め方が現実的です。暴力やつきまといがあり、引っ越し先を相手に知られたくないときは、物件探しより先に窓口へ相談してください。警察や配偶者暴力相談支援センターなどに被害を相談したうえで、住民票のある市区町村に「支援措置」を申し出ると、加害者からの住民票の写しなどの請求が制限されます(総務省「DV等支援措置」)。相手に知られないことを約束する制度ではなく、対象はDV・ストーカー・虐待などの被害者です。番号と受付時間は浮気・不倫の相談先一覧:悩み別の窓口と番号・受付時間の早見表、住民票を移すかの判断は別居で住民票を移す?移さない?手当・学校・安全で変わる判断にあります。
離婚のお金との順番:住まいの前に決めておくこと
住まいの選び方は、離婚で受け取るお金と一緒に考えます。財産分与や養育費が決まる前に、いまの家を出る・新しい契約を結ぶと、後で資金が足りなくなることがあります。
- 財産分与:家庭裁判所に求められる期間は、2026年4月1日以後の離婚で離婚の時から5年です(施行日前に離婚した場合は従来の2年のままで、改正法の附則に定めがあります)。住まいの資金に回せるかを、早めに数えます。
- 養育費:家賃の支払いに充てる前提で見積もるなら、取り決めを書面に残してからにします。
- 児童扶養手当:離婚が成立してから申請します。支給は申請した月の翌月分からなので、引っ越しと同じ時期に窓口へ行きます。
お金の全体像は浮気が原因の離婚とお金:婚姻費用・養育費・財産分与・慰謝料の全体像で確かめられます。年金分割のように、住まいと関係しないが期限のあるお金は、年金分割とは?合意分割と3号分割の違いと手続きの流れ・請求期限で手続きの順を見てください。
よくある質問
Q. 離婚が成立する前の別居中でも、公営住宅に申し込めますか?
申込みの資格や、世帯として数える範囲は、都道府県・市区町村の条例と募集要項で決まります。法律が定めているのは、収入が条例の金額以下であることと、住宅に困っていることが明らかであること(公営住宅法23条)までです。「離婚協議中」「別居中」と窓口で伝え、申込みの可否と必要な書類を聞いてください。
Q. ひとり親なら、公営住宅に優先して入れますか?
こども家庭庁の資料にも「公営住宅の優先入居」が挙げられていますが、優遇の有無と中身は自治体ごとです。抽選の倍率を優遇する、専用の枠を設けるなどの形がありうるため、募集要項の「ひとり親世帯」の欄を探し、載っていなければ住宅課に聞きます。
Q. 収入が少ないと、公営住宅は借りられませんか?
公営住宅法23条は収入の上限を定めていて、条文に下限はありません。ただし家賃を払い続けられるかは別の問題なので、家賃の決まり方(収入に応じて決まる仕組み)を募集要項で確かめ、毎月の収支表に入れて見通しを立ててください。
出典・参考にした公的な情報
- 公営住宅法 第1条・第23条・第25条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 公営住宅法施行令 第6条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 児童福祉法 第23条・第38条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- ひとり親家庭等関係(母子父子寡婦福祉資金・住宅支援資金貸付を含む)(こども家庭庁)
- DV等支援措置(総務省)
- 民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)附則第4条(法務省)
- ひとり親家庭等の支援について(令和8年4月)(こども家庭庁)
- ひとり親家庭の経済的支援(住宅支援資金貸付・母子父子寡婦福祉資金)(こども家庭庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。