不倫の誓約書や念書を書かされたとき:内容の確かめ方と後で問題になる点
この記事のもくじ
不倫が分かった場で誓約書や念書を書かされた場合、署名した時点で話が終わったわけではありません。その書面は、①守るべき約束、②あなたが認めた内容の証拠、③後の請求の土台、の3つの形で残ります。一方で、脅されて書いたのなら、民法96条1項で取り消せる場面があります。まず、書面の写しを手元に置き、署名の場で何があったかを今日のうちにメモに残してください。そのうえで、違約金の額、認めた事実の範囲、清算条項の有無の3点を順に確かめます。
署名した書面は、約束・証拠・請求の土台として残る
署名のある書面には、次の3つの働きがあります。どれが強く出るかは、書面の中身で変わります。
| 働き | 中身 | 注意する点 |
|---|---|---|
| 約束としての効力 | 内容に合意して署名した約束は、守る義務が生じるのが原則 | 契約は、書面がなくても成立する(民法522条2項)。書面は「何を約束したか」を示すもの |
| 認めた内容の証拠 | 本人または代理人の署名か押印のある私文書は、真正に成立した(本人が作った)ものと推定される(民事訴訟法228条4項) | 「書いていない」とは言いにくくなる。内容が事実と違うなら、その点を別に示す必要がある |
| 後の請求の土台 | 違約金の条項や、不貞を認める文が、相手の請求の根拠として使われうる | 清算条項の有無で、追加の請求の扱いが変わる |
署名の効力そのものを一般論で整理した記事は浮気の誓約書に効力はある?違約金や離婚の約束が問題になる場面にあります。この記事は、書く側ではなく書かされた側の立場から、手元の書面の何を見るかに絞ります。
手元の書面で確かめる4つの点:違約金・事実の認め方・清算条項・期限
写しがあれば、次の4点に印をつけてください。写しが手元にないときは、相手に写しを求めるか、署名の場で撮った写真がないかを探します。
- 違約金の額と条件:「連絡したら○円」の○が、どの行為で、いつから発生するかを読みます。民法420条は、約束を破ったときの賠償額を前もって決められること、違約金はその予定額と推定されることを定めています。一方、民法90条は、公の秩序や善良の風俗に反する約束を無効とします。極端な額や、生活を過度に縛る条項は、この90条との関係で争われることがあります。いくらなら有効という線は法律に書かれていないので、額は弁護士に見せて確かめます。
- 事実の認め方:何を認めた文なのかを、一文ずつ分けて読みます。「不貞な関係にあった」だけなのか、「何度も」「長期間」「相手の自宅で」のように、期間や回数や場所まで書いてあるのかで、後に出されたときの重みが違います。実際より広く書かれた部分があれば、そこに印をつけます。
- 清算条項があるか:「この書面に定めるほか、互いに何の債権債務もないことを確認する」といった文です。入っていれば、書いていない請求を後から求めにくくなる面があります。ただし、相手が「慰謝料は別」と考えているのに、書面にはこの条項がない、という食い違いも起こります。
- 期限・支払いの約束:「○日までに○円を支払う」「分割で毎月○円」といった文があれば、日付と金額、遅れたときの扱いを書き出します。支払いの約束があるのに額が白紙のまま署名していた場合は、後から誰かが数字を書き足していないか、写しと照らします。
| 見る場所 | 印をつける文 | 弁護士に聞くこと |
|---|---|---|
| 違約金 | 金額・発生する行為・開始時期 | この額と条件は争えるか |
| 事実の認め方 | 期間・回数・場所まで書かれた部分 | 実際と違う部分はどう扱うか |
| 清算条項 | 「債権債務がない」の文 | 追加の請求は残るか |
| 期限・支払い | 日付・金額・遅れたときの定め | 払う前にできる確認は何か |
脅されて書いたときの考え方:強迫による取消し
書かされた経緯が「書かないなら会社に言う」「家族に全部話す」のような脅しを伴うものだった場合、民法96条1項により、強迫による意思表示は取り消すことができます。取り消す権利は、追認できる時から5年間使わないと時効で消えます(民法126条)。
ただし、「書かされた」と感じたことが、そのまま取り消しになるわけではありません。見られるのは、たとえば次のような事情です。
- 何と言われたか(害を加える旨を告げられたか)と、その言葉を誰が言ったか
- 署名までにかかった時間と、場所(自宅・喫茶店・相手の職場など)、同席者の人数
- 内容を読む時間があったか、持ち帰って考えたいと言えたか、拒んだときに何が起きたか
- 署名の後に、自分から書面を出し直したり、履行したりしたか
取り消せるかの結論は個別の判断なので、サイトでは出せません。こうした事情を、弁護士が後から確かめられる形で残すことが、今できる準備です。
相手が脅しの言葉を使っていた場合、刑法の脅迫(222条)や、義務のないことを行わせる強要(223条)、財物を交付させる恐喝(249条)が問題になる場面もあります。どれにあたるかは、言葉と状況で決まります。今まさに身の危険を感じる、会社や家に押しかけられる、といった状況があるときは、書面の話より先に不倫で脅迫されたときを開いてください。
今日から残す記録:署名の経緯メモと保存するもの
記憶は日が経つほど薄れます。次の順番で、今日のうちに書き出してください。
- 署名の場のメモ:日時、場所、同席者、署名にかかった時間。相手が言った言葉は、覚えている範囲でそのまま書きます。推測と事実を分けて書きます。
- 書面の写し:原本を相手が持っているなら、写しを求めます。断られたら、断られたことと日付を書き留めます。
- やりとりの保存:署名の前後のメッセージ、メール、通話履歴の画面を、日時が分かる形で保存します。自分が参加した会話の録音を残す方法もありますが、公開や転送には別の問題が生じます。相手のスマホやアカウントに入って集める行為は、さらに別の問題です。線引きは浮気の証拠集めで違法になりうることにまとめています。
- 新しい約束をしない:追加の署名、送金、会社への連絡、相手の家族への謝罪の連絡は、弁護士に見せるまで止めます。
文例(追加の署名や支払いを求められたとき):「書面の内容を確認してから返事をします。今日は署名も支払いもできません。」
この一言は、断る理由を説明するためのものではありません。時間を作るための返事です。相手が応じず、強い言葉で迫ってきたら、その言葉もメモに加えます。
相談先と、持っていくもの
書面を書いた後は、弁護士への相談が中心になります。法律事務所の選び方や費用は慰謝料請求された側の弁護士の選び方で整理しています。相談に持っていくものは次のとおりです。
| 持っていくもの | 目的 |
|---|---|
| 署名した書面の写し | 条項の確認 |
| 署名の経緯メモ | 取消しの事情の確認 |
| 署名の前後のメッセージの保存 | 相手が何を求めたかの確認 |
| 相手から届いた請求や連絡 | 次の対応の相談 |
| 自分が事実と認める点・認めない点のメモ | 誤りを訂正する方針の相談 |
相談先の窓口は浮気・不倫の相談先一覧に、番号と受付時間を載せています。身に覚えのない不倫を理由に書かされた場合は、前の記事の身に覚えのない不倫の慰謝料請求が来たらを、慰謝料の請求がすでに届いているなら不倫の慰謝料を請求されたらすることを先に読んでください。
不倫を終わらせたいのに終わらせられない状況が背景にあるなら、不倫をやめたいのにやめられないときが手順を扱っています。次に読む既婚者だと知らなかったのに慰謝料を請求されたらは、相手が既婚と知らなかった場合の考え方を扱っています。
よくある質問
Q. 署名してしまった誓約書は、もう取り消せませんか?
取り消せるかどうかは、書かされた場面で決まります。民法96条1項は、強迫による意思表示を取り消せるとしています。ただ、取り消しが認められるかは、脅しの中身、署名までの時間、内容を読んだか、持ち帰れたかなどの事情で変わります。書面の写しと、署名の場でのやりとりのメモを持って、早めに弁護士に見せてください。
Q. 念書に「事実を認めます」と書いたことは、あとで撤回できますか?
書いた事実を認める文は、後の話し合いや裁判で、あなたが認めた内容として出される可能性があります。書面を出した後に「そこまでは認めていない」と言いたい点があるなら、その点を日付つきでメモに書き、弁護士に伝えてください。事実と違う部分を訂正する方法は、書面の内容と相手の出方で変わります。
Q. 誓約書を書いたあとに、慰謝料を別に請求されることはありますか?
書面に何が書かれているかで変わります。「この書面に定めるほか、互いに債権債務がない」という清算条項があれば、書いていない請求は後から求めにくくなるおそれがあります。条項がなければ、書面とは別に請求の話が出ることもあります。請求が届いたときの順番は、慰謝料を請求されたときの記事にまとめています。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第90条・第96条・第126条・第420条・第522条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事訴訟法 第228条(文書の成立)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 刑法 第222条(脅迫)・第223条(強要)・第249条(恐喝)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。