浮気した側が離婚したいとき:合意で進める手順と、裁判で見られる点
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浮気した側でも、配偶者が離婚に同意すれば、話し合い(協議離婚)や調停で離婚は成立します。難しくなるのは、配偶者が応じず裁判になったときで、浮気した側は「有責配偶者」として、その請求が信義に反しないかを厳しく見られます。最高裁は、長期間の別居、未成熟の子がいないこと、配偶者が離婚で極めて苛酷な状態にならないこと、などの事情を合わせて判断するとしています。だからこそ、浮気した側が離婚を考えるなら、生活費を払い続け、条件を具体的に示し、時間をかけて誠実に話し合うことが出発点になります。
浮気した側の離婚は「合意できるか」で道が分かれる
離婚には、夫婦の合意で成立する方法と、裁判所の判決で成立する方法があります。浮気した側かどうかが正面から問題になるのは、主に後者です。
| 方法 | 成立のしかた | 浮気した側であることの影響 |
|---|---|---|
| 協議離婚 | 夫婦が話し合って合意し、離婚届を出す(民法763条) | 理由は問われない。ただし配偶者が応じるかどうかに影響する |
| 調停離婚 | 家庭裁判所の夫婦関係調整調停で、双方が合意する | 合意が前提。条件(慰謝料・財産分与・養育費など)の話し合いで考慮されやすい |
| 裁判離婚 | 770条1項の理由があると判決で認められる | 有責配偶者からの請求は、信義誠実の原則に照らして許されるかが問われる |
裁判で離婚を求める理由の一つに「配偶者に不貞な行為があったとき」(770条1項1号)がありますが、これは浮気をされた側が使う理由です。浮気をした側が離婚を求める場合は、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(現在の770条1項4号)を主張することになり、そこで自分の責任の重さが問われます。
なお、調停は話し合いの手続なので、配偶者が出席しない、合意できないときは不成立で終わります。離婚を求め続けるなら、その後は離婚の訴えを起こすことになります。手続全体の流れは離婚の方法は4種類:協議・調停・審判・裁判の流れで扱っています。
合意できず裁判になったとき、最高裁が見る事情
昭和62年9月2日の最高裁大法廷判決は、有責配偶者からの離婚請求も、信義誠実の原則(民法1条2項)に照らして容認されるかを問うとし、次の3つを挙げました。平成6年2月8日の第三小法廷判決は、未成熟の子がいてもそれだけでは請求を退けないとしています。
| 事情 | 判決の考え方(要旨) | 整理すること |
|---|---|---|
| ①別居の長さ | 年齢と同居期間に比べて相当の長期間か | 同居の年数、別居を始めた経緯 |
| ②未成熟の子 | 未成熟の子がいないか | 子どもの年齢、誰がどう育てているか |
| ③苛酷な状態 | 離婚で配偶者が極めて苛酷な状態に置かれないか | 配偶者の収入と住まい、自分が出せる給付 |
どちらも「その事件の事実関係」の下での判断で、「何年別居すれば認められる」という線は示していません。判決の読み方や有責配偶者という言葉の意味は、有責配偶者とは?浮気した側からの離婚請求が問題になる理由にまとめました。この記事では、そこへ行き着く前の、合意で進めるための手順を扱います。
浮気した側が離婚したいとき、誠実に進める手順
裁判で見られる事情を踏まえると、浮気した側が離婚を望む場合に意味を持つのは、配偶者と子どもの生活を守る行動を続けてきたかどうかです。急いで結論を迫るより、次の順番で進めます。
- 不倫相手との関係を整理する。 関係を続けたまま離婚を求めると、配偶者の感情は硬くなり、話し合いが進みにくくなる。
- 生活費(婚姻費用)を払い続ける。 別居していても夫婦は婚姻から生じる費用を分担する(民法760条)。家を出る場合の考え方は浮気した側が家を出たら?有責配偶者の別居と婚姻費用の関係で扱っている。
- 離婚の条件の案を作る。 財産分与、慰謝料、養育費、住まい、子どもとの交流について、自分が出せるものを具体的にする。家計の数字がないまま話すと約束が守れなくなる。
- 弁護士に相談して、案を確かめる。 条件の妥当性や進め方は、法律事務として弁護士に相談する。弁護士会の法律相談や法テラスも使える。
- 配偶者に、責任を認めたうえで伝える。 責めるような言い方をせず、相手が考える時間をとれるようにする。
- 合意できなければ、調停を考える。 夫婦関係調整調停(離婚)では、離婚そのものと一緒に親権・養育費・財産分与・慰謝料も話し合える。
伝え方の例:「浮気をしたのは私で、あなたを傷つけた責任は私にあります。そのうえで、この先も夫婦を続けることは難しいと考えています。生活費はこれまでどおり払います。お金と子どものことは、案をまとめたので、時間をかけて考えてほしい。」
条件案をつくる段階では、項目ごとに「自分が出せるもの」を数字で書き出すと、約束を守れなくなる事態を避けられます。
| 項目 | 決めること | 確かめ先 |
|---|---|---|
| 生活費・養育費 | 別居中と離婚後に毎月いくら払えるか | 裁判所の算定表(令和元年版)、養育費・婚姻費用の決め方 |
| 財産分与 | 何をいつまでにどう分けるか | 財産分与の基本。請求期間は離婚の時から5年(2026年3月31日以前の離婚は2年) |
| 慰謝料 | 払う意思と払い方 | 金額は事情で変わるので弁護士に確かめる |
| 住まい・子ども | どちらが住み続けるか、親子交流をどうするか | 共同親権と子どもの決め方 |
離婚を求められた側になったときは
逆に、浮気をした側が配偶者から離婚を求められる場合は、条件を確かめずに「全部言うとおりにする」と答えないことが大切です。慰謝料・財産分与・親権・住まいを確かめる順番は、不倫がバレた後に離婚を求められたらで扱っています。発覚したばかりなら、先に不倫がバレたときにすることを読んでください。
浮気した側がしないほうがよい進め方
離婚を急ぐ気持ちから、かえって話し合いを長引かせ、裁判になったときにも不利な事情を増やす行動があります。
- 生活費を止めて、配偶者を経済的に追い込む。 判決が見る「苛酷な状態」の事情を自分で作ることになる。
- 不倫相手との同居や交際を見せつける。 配偶者の感情を傷つけ、合意から遠ざける。
- 「あなたにも原因がある」と責任を分けようとする。 夫婦関係の事情を話すことと、責任を押しつけることは別。
- 子どもに離婚の理由や配偶者の悪口を話す。 子どもの監護の状況は判断の事情にもなる。
- 配偶者の同意がないまま離婚届を出そうとする。 合意のない届出は、離婚を成立させる手段にはならず、信頼をさらに失う。
浮気した側にできることは、責任を認めることと、配偶者と子どもの生活に責任を持ち続けることです。それが、合意による離婚にも、関係を立て直す道にもつながります。
よくある質問
Q. 浮気した側でも、配偶者が同意すれば普通に離婚できますか?
できます。協議離婚は夫婦の話し合いで成立し(民法763条)、調停でも双方が合意すれば離婚が成立します。浮気した側かどうかが大きく問題になるのは、配偶者が離婚に応じず、裁判で離婚を求める場面です。ただし合意で離婚する場合でも、慰謝料・財産分与・養育費などの条件は別に話し合うことになります。
Q. 別居して何年たてば、浮気した側からでも離婚が認められますか?
最高裁の判決は、別居の年数で線を引いていません。示されているのは「両当事者の年齢や同居していた期間と比べて相当の長期間か」という考え方で、ほかに未成熟の子の有無や、離婚で配偶者が苛酷な状態にならないかなどを合わせて判断します。何年という数字だけで見通しを立てず、自分の事情は弁護士に確かめてください。
Q. 浮気した側が別居中に生活費を払わなくてもよいですか?
夫婦は資産や収入などを考えて婚姻から生じる費用を分担すると民法760条に定められており、別居中も婚姻費用の問題は残ります。浮気した側が請求する場合と払う側の場合で考え方が変わる点は[有責配偶者からの婚姻費用の請求](/konpi-yuuseki/)で扱っています。生活費を止めることは、離婚の話し合いでも不利な事情として見られやすくなります。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第1条・第760条・第763条・第770条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 最高裁判所 昭和62年9月2日 大法廷判決(有責配偶者からの離婚請求)(裁判所)
- 最高裁判所 平成6年2月8日 第三小法廷判決(未成熟の子がいる場合)(裁判所)
- 夫婦関係調整調停(離婚)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。