専業主婦が離婚を準備するとき:収入・住まい・手当の見通しの立て方
この記事のもくじ
専業主婦が離婚を準備するときは、離婚前の生活費・離婚後の収入と手当・住まい・保険と年金の4つを先に調べると、離婚後の暮らしの見通しが立ちます。収入がないあいだの生活費は、別居しても婚姻費用として夫婦で分担するのが民法の考え方です。一方で、児童扶養手当のように離婚後でなければ対象にならない制度もあるため、「いつから何が使えるか」を時期で分けて並べることが準備の中心になります。
まず離婚前の生活費:婚姻費用を受け取りながら準備する
離婚が成立するまでは夫婦であり、別居していても、民法760条は夫婦が資産・収入その他一切の事情を考慮して婚姻から生じる費用を分担するとしています。この別居中の生活費が婚姻費用です。専業主婦は自分の収入が少ないため、準備期間の生活を支える柱になります。
話し合いで決まらない・話し合いができないときは、家庭裁判所に婚姻費用の分担請求調停を申し立てられます。裁判所の案内では、費用は収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手で、書類は申立書、夫婦の戸籍謄本、申立人の収入関係の資料、事情説明書などです。調停が成立しない場合は自動的に審判の手続に移り、裁判官が一切の事情を考慮して判断します。
金額の目安には、裁判所が公表している婚姻費用の算定表(令和元年版)を使います。縦軸が支払う側、横軸が受け取る側の年収で、給与所得者の年収は源泉徴収票の「支払金額」を見ます。パートなどの収入があれば、受け取る側の年収に入れます。算定表は標準的な額を簡易に出すためのもので、その額にそのまま決まるとは限りません。読み方の手順は婚姻費用算定表の見方で、請求の方法は婚姻費用の分担請求調停で扱っています。
| 時期 | 入り口 | 窓口 | 注意 |
|---|---|---|---|
| 離婚前(別居中を含む) | 婚姻費用 | 相手との話し合い、家庭裁判所の調停 | 算定表は目安 |
| 離婚前 | 児童手当 | 現住所の市区町村 | 別居中は子どもと同居している人に優先して支給 |
| 離婚後 | 児童扶養手当 | 住所地の市区町村 | 認定が必要。所得制限あり |
| 離婚後 | 養育費・財産分与・年金分割 | 話し合い、調停 | 請求できる期間に期限がある |
| 離婚の前後 | 国民健康保険・国民年金の手続 | 市区町村 | 扶養から外れると届出が要る |
離婚後の収入の見通し:月々の表を作って足りない額を知る
離婚後の暮らしを考えるときは、入ってくるお金と出ていくお金を月額で一覧にします。専業主婦の場合、入ってくるお金は次の5つに分かれます。
- 働いて得る収入:離婚後に始める仕事。訓練を受けてから就く場合は、その期間の収入がない月も数えます。
- 養育費:子どもがいれば、取り決めた額。取り決めがないまま離婚した場合の法定養育費は、2026年4月1日以後に離婚した場合に限られます。仕組みは離婚の法改正2026年4月施行を見てください。
- 児童手当:0歳から高校生年代までの子どもを養育している人に支給されます。月額は3歳未満が15,000円、3歳以上高校生年代までが10,000円、第3子以降は30,000円です。
- 児童扶養手当:離婚後に子どもを監護する親などが対象です。令和8年度は全部支給で月額48,050円(こども家庭庁の資料では見込額。年度ごとに見直される)で、所得に応じて一部支給の段階があります。
- その他:財産分与で受け取る預金など、一度きりのお金。
児童扶養手当は、所得制限の計算で受け取った養育費の8割が所得に加わります。養育費を受け取ると手当が減ることがあるので、2つを合わせて見積もります。所得制限の限度額は扶養する人数によって変わり、同居している扶養義務者(実家の親など)の所得が限度額以上だと手当が全額支給停止になる場合があるとこども家庭庁の資料に書かれています。額は年度ごとに変わるため、申請の時点の額を窓口で確かめてください。離婚前の別居だけでは「婚姻を解消した児童」に当たらないのが原則で、DVで裁判所の保護命令が出た場合などは別に要件があります。くわしくは児童扶養手当とは?と別居中の児童手当・児童扶養手当に分けています。
出ていくお金は、家賃、食費、光熱費、保険料、子どもの教育費、スマホ代を、いまの家計簿から離婚後の水準に直して書きます。足りない月額が出たら、それを埋める手段(働く時間、養育費の請求、手当、親族の援助)を1つずつ当てはめていきます。
働くための支援:訓練の前に確かめること
長く仕事から離れていると、働き口を探す前に不安が大きくなります。こども家庭庁の案内では、ひとり親家庭への支援は、子育て・生活支援、就業支援、養育費確保等支援、経済的支援の4本柱です。その中に、資格を取るための給付金があります。
- 自立支援教育訓練給付金:対象講座の経費の60%(下限12,001円、上限は講座の種類で異なる)が支給されます。受講の前に、講座の指定を受ける必要があります。
- 高等職業訓練促進給付金:看護師などの資格を取るため6か月以上のカリキュラムを修業する人に、月額10万円(住民税課税世帯は70,500円)が支給されます。
どちらも、制度を設けていない自治体に住んでいる場合は対象外で、児童扶養手当の受給者と同等の所得水準などの条件があります。申請が離婚後になるものも多いため、離婚の前の段階では「住所地の市(町村は都道府県)のひとり親担当の窓口で、実施しているかと条件を聞く」ところまでを準備とします。
住まいの見通し:今の家か、出るか
住まいは、家の名義やローンの状況で選択肢が変わります。名義とローンの確認は浮気が原因の離婚準備チェックリストの住まいの欄に項目があるので、そこで先に埋めてください。
自分が家を出る場合の選択肢には、賃貸住宅のほか、公営住宅があります。公営住宅法は、入居者の資格を、収入が条例で定める金額以下で、現に住宅に困窮していることが明らかな者としています(23条)。実際の収入基準や募集の時期、ひとり親世帯の優遇は自治体ごとに違うので、都道府県・市区町村の住宅課の募集要項で確かめます。こども家庭庁の案内には、児童扶養手当を受給しているひとり親世帯などに家賃相当の資金を貸し付ける制度(月上限7万円を12か月)もありますが、貸付なので返済が必要で、条件を満たした場合に免除されます。都道府県や指定都市に問い合わせて、いつから申し込めるかを聞いておきます。
子どもが小さい場合は、保育所の申込みも住まいとセットで考えます。保育所の利用は居住地の市町村に申請して認定を受ける仕組みで、保育を必要とする事由には就労のほか、求職活動(起業準備を含む)も入っています。別居中であることを伝えたうえで、保育課に必要書類を聞いてください。
保険と年金:扶養から外れるときの届出と、離婚前にできる請求
夫の健康保険の被扶養者、国民年金の第3号被保険者だった人は、離婚や別居で扶養から外れると、自分で保険と年金の手続をします。被扶養者の削除は夫(被保険者)側が勤務先を通じて届け出るので、夫が手続をしない・保険証を返さないときは、勤務先や加入先の健康保険に相談します。
- 健康保険:自分で勤務先の健康保険に入るか、住所地の市区町村で国民健康保険に加入します。国民健康保険法施行規則3条は、被扶養者などに該当しなくなって資格を取得したときは、世帯主が14日以内に届書を出すとしています。
- 国民年金:厚生年金に入らない20歳以上60歳未満の人は第1号被保険者になり、手続は住所地の市区役所・町村役場です。期限は14日以内を目安に、窓口で確かめてください。
- 保険料が払えないとき:未納のままにせず、免除や納付猶予の申請を考えます。日本年金機構の案内では、全額免除の期間も老齢基礎年金の2分の1が反映され、未納は障害年金や遺族年金を受けられない原因になりえます。離婚前の別居中は配偶者の所得が審査の対象になる場合があります。
年金分割は、離婚前から情報を集められます。日本年金機構は、按分割合を決めるための「情報通知書」の請求を、離婚の前でも後でも、夫婦の一方だけでもできると案内しています。分割の対象は厚生年金の記録で、請求できる割合は最大で2分の1までです。請求期限は、2026年4月1日以後に離婚した場合は離婚等をした日の翌日から5年以内、それより前に離婚した場合は2年以内です。手続は年金分割とは?で順を追って扱っています。
準備の順番:専業主婦が最初の3か月でしておくこと
見通しの調べ方を、順番にまとめます。時期は目安なので、安全が心配なときは順番を入れ替えてください。
- 夫婦の収入と財産の資料を手元にそろえる:源泉徴収票、預金、保険、ローンの一覧。同居しているうちのほうが目にしやすい資料です。
- 月々の収入と支出の表を作る:離婚後の水準で作り、足りない額を出す。
- 住所地の窓口で条件を聞く:児童扶養手当、ひとり親の就業支援、公営住宅、保育所。
- 年金事務所で年金分割の情報通知書を請求する。
- 別居するなら、婚姻費用の請求を同時に始める:話し合いか調停で。
- 離婚届が勝手に出されるのが心配なら、不受理申出を考える:離婚届の不受理申出とは?を参照。
どの窓口に何を聞けばよいか迷う人は、離婚の相談先の選び方で自治体・家庭裁判所・法テラス・弁護士の違いを見てください。全体にどのくらいの期間を見込むかは、離婚の準備にかかる期間で扱っています。
よくある質問
Q. 収入がなくても離婚の準備を始めてよいですか?
始めてかまいません。離婚前でも、別居中の生活費は婚姻費用として夫婦で分担するものと民法760条が定めています。離婚後の手当や住まいの制度も、離婚の前から窓口で条件を聞けます。収入がないことを理由に、準備そのものを止める必要はありません。
Q. 貯金がほとんどないとき、何から手をつければいいですか?
毎月の収入と支出の表を作るところからです。表ができると、足りない月額が分かり、婚姻費用の請求、手当の申請、働き方の相談のどれを先にするかを決められます。手元に残す現金の額や、使える預金の扱いで迷うときは、弁護士や自治体の窓口に事情を伝えて確かめてください。
Q. 専業主婦でも財産分与を受けられますか?
財産分与は、婚姻中に夫婦で取得・維持した財産を分ける制度で、外で働いた人だけが対象ではありません。家庭裁判所は各自の寄与の程度が異なることが明らかでないときは相等しいものとして扱います(民法768条3項)。家事や育児の分担を、具体的な事情として整理しておくと話し合いの材料になります。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第760条・第768条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 婚姻費用の分担請求調停(裁判所)
- 養育費・婚姻費用算定表について(令和元年版)(裁判所)
- 児童扶養手当について(こども家庭庁)
- 児童手当制度のご案内(こども家庭庁)
- ひとり親家庭等関係(自立支援給付金)(こども家庭庁)
- ひとり親家庭等の支援について(令和8年4月)(こども家庭庁)
- 公営住宅法 第23条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 子ども・子育て支援法施行規則 第1条の5(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 国民健康保険法施行規則 第3条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度(日本年金機構)
- 離婚時の年金分割(日本年金機構)
- 離婚時の厚生年金の分割(合意分割制度)(日本年金機構)
- 公証事務「7 離婚」(日本公証人連合会)
- 民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について〔令和8年4月1日施行〕(法務省)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。