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不倫の慰謝料は離婚しない場合も請求できる?同じ家計で考えること

この記事のもくじ
  1. 離婚しなくても請求できる理由:不貞行為の慰謝料と離婚慰謝料は別
  2. 配偶者に請求する場合:同じ家計で何が起きるか
  3. 不倫相手に請求する場合:考えておく3つのこと
  4. 請求する前に夫婦で決めておくこと

不倫の慰謝料は、離婚しない場合でも請求できます。不倫相手と配偶者が不貞行為をしたこと自体が、された側の権利を侵害する不法行為と考えられているからで、離婚するかどうかは請求の前提ではありません。ただし、離婚せずに同じ家計で暮らし続けるなら、配偶者に請求しても家の中でお金が移るだけになりやすく、意味を持たせるには工夫が要ります。不倫相手に請求する場合も、相手から配偶者へ負担を求められる「求償」の問題を考えておく必要があります。

離婚しなくても請求できる理由:不貞行為の慰謝料と離婚慰謝料は別

慰謝料の根拠は、民法709条(不法行為による損害賠償)と710条(財産以外の損害の賠償)です。最高裁昭和54年3月30日判決は、配偶者と肉体関係を持った第三者は、故意または過失がある限り、他方の配偶者の権利を侵害した責任を負うと判断しました。ここでの責任は、夫婦が離婚したかどうかとは切り離されています。

最高裁平成31年2月19日判決は、慰謝料を2つに分けて考える枠組みを示しました。

慰謝料の種類 何に対する慰謝料か 離婚しない場合
不貞行為の慰謝料 不貞行為そのものによる精神的な苦痛 求めることができる
離婚慰謝料 離婚せざるを得なくなったことによる苦痛 離婚していないので問題にならない

判決は、不倫相手に離婚慰謝料を求めることは特段の事情がない限りできない、としつつ、不貞行為そのものの責任は別だと述べています。離婚しない場合に求めるのは、この「不貞行為の慰謝料」です。なお、関係が始まった当時に婚姻関係がすでに破綻していた場合には、不倫相手は原則として責任を負わないとした最高裁平成8年3月26日判決もあります。

配偶者に請求する場合:同じ家計で何が起きるか

民法762条は、夫婦の一方が婚姻前から持っていた財産と、婚姻中に自分の名で得た財産を、その人の「特有財産」としています。法律の上では、夫の給料は夫の財産、妻の給料は妻の財産で、配偶者から慰謝料を受け取れば、お金は配偶者から自分へ移ります。

ところが多くの家庭では、給料が一つの口座に入り、生活費も貯金も一緒に管理されています。762条2項は、夫婦のどちらのものか分からない財産は共有と推定するとしています。この状態で配偶者が共通の貯金から慰謝料を払っても、家計全体のお金は増えも減りもしません。

支払いの出どころ別に見る、配偶者からの慰謝料の実質
支払いの出どころ 家計全体で見ると 考えておくこと
夫婦共通の貯金・生活費の口座 移動するだけで実質は変わらない 形だけの支払いになりやすい
配偶者名義の個人の預金 配偶者の財産から自分の財産へ移る 名義と中身が配偶者のものか
配偶者の小遣いから分割で 配偶者の自由に使えるお金が減る 続けられる額と期間か
自分名義の口座へ振り込む約束 自分の財産として分けて持てる 生活費が足りなくならないか

配偶者への請求を、お金のやり取りではなく「けじめの約束」として形にする夫婦もいます。たとえば、自分名義の口座に毎月一定額を移す、家計の管理を交代する、再び不倫をした場合の取り決めを書面にする、といった形です。約束を書面にする方法は再構築の契約書として夫婦の約束を書面にするで扱っています。以前の民法には夫婦間の契約は婚姻中いつでも取り消せるという754条がありましたが、2026年4月1日施行の改正で削除されています。書面の効力の考え方は浮気の誓約書に効力はある?も参考にしてください。

不倫相手に請求する場合:考えておく3つのこと

離婚しない場合に、慰謝料を不倫相手だけに求める人もいます。その場合に、事前に考えておきたい点は次の3つです。

  1. 求償の問題:民法719条は、共同の不法行為をした人は各自が連帯して賠償すると定めています。不貞行為は配偶者と不倫相手の2人でしたものなので、不倫相手が慰謝料を払ったあと、配偶者に「あなたの負担分を払ってほしい」と求めることが問題になります。同じ家計の配偶者に求償されれば、受け取ったお金の一部が家から出ていくことになります。仕組みは不倫の求償権とは?配偶者と不倫相手の負担割合の考え方、示談で放棄を求める場面は求償権の放棄とは?で整理しています。
  2. 相手にも家庭がある場合:不倫相手も既婚なら、相手の配偶者から、こちらの配偶者が慰謝料を求められる可能性があります。双方の家庭が請求し合う場面はダブル不倫の慰謝料はどうなる?を見てください。
  3. 連絡の取り方:不倫相手への請求は、配偶者を通じて話すか、書面で直接求めるか、弁護士に任せるかを決めておきます。「払わなければ家族や職場に知らせる」と伝えると、刑法222条(脅迫)が問題になりえます。周囲に不倫の事実を広めることも、刑法230条(名誉毀損)が問題になりうる行為です。

不倫相手に請求するときの全体の考え方は、不倫相手に慰謝料を請求できる?既婚の認識・破綻・配偶者との二重取りの3点にまとめています。

請求する前に夫婦で決めておくこと

離婚しない場合の慰謝料請求は、夫婦関係を続けながら進めることになるので、配偶者と認識をそろえておくほど話がこじれにくくなります。請求に動く前に、次の点を確かめておきます。

  • 請求の目的:お金を受け取りたいのか、不倫相手に責任を自覚させたいのか、関係を断たせたいのか
  • 配偶者の協力:不倫相手の氏名・住所の確認や、事実を認める書面に、配偶者が協力するか
  • 受け取ったお金の扱い:家計に入れるか、自分の財産として分けておくか
  • 不倫相手との接触の約束:慰謝料と一緒に、今後連絡を取らない約束を求めるか(不倫の示談書の接触禁止条項とは?)
  • 期限:不倫相手への請求は、損害と相手を知った時から3年で時効にかかる(民法724条)。配偶者への請求は、婚姻の解消から6か月を過ぎるまで時効が完成しない(民法159条)

夫婦で確かめる言葉の例:「あなたとはやり直したいと思っている。そのうえで、相手には慰謝料を求めたい。相手の連絡先と、関係があったことを書面で認めることには協力してほしい。」

夫の浮気で請求を考える妻は夫の浮気で慰謝料を請求したい妻へ、妻の浮気で請求を考える夫は妻の浮気で慰謝料を請求したい夫へで、請求の前に決めることを表で整理できます。

再構築そのものの進め方は浮気からの再構築:やり直すと決める前の確認と、続けるための約束で整理しています。いくらを求めるかを考えるときは、前の記事慰謝料の相場は計算できる?のとおり、計算ツールの数字ではなく事実の整理から始めてください。反対に、離婚しても慰謝料が問題にならない場合もあり、その違いは次の記事離婚で慰謝料なしになるのはどんな場合?で扱います。

よくある質問

Q. 今は離婚しないつもりですが、あとで離婚することになったら、改めて慰謝料を求められますか?

離婚に至った場合に配偶者へ求める慰謝料は、離婚そのものによる苦痛も含めて考えられることがあります。ただ、離婚しない前提で示談や合意をした場合、その書面の清算の範囲によって後から求められる範囲が変わります。合意書を作るときは、「今回の不倫についての清算」なのか「将来の離婚まで含む清算」なのかを書き分けておくことが大切です。

Q. 不倫相手から受け取ったお金は、夫婦どちらのものになりますか?

不倫相手に請求するのは、不倫をされた配偶者本人の権利なので、受け取ったお金はその人の名で得た財産として考えるのが基本です。民法762条は、夫婦の一方が自分の名で得た財産をその人の特有財産としています。家計に入れるか、自分の口座で分けて持つかは、受け取る前に決めておくと後でもめにくくなります。

Q. 配偶者に請求しないまま年月が過ぎると、時効になりますか?

夫婦の一方が他方に対して持つ権利は、婚姻が解消された時から6か月を過ぎるまで時効が完成しないと民法159条が定めています。婚姻中の配偶者への請求は、この定めの対象になります。一方、不倫相手への請求にはこの定めがないので、損害と相手を知った時から3年という期間に注意が必要です。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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