妻の浮気で慰謝料を請求したい夫へ:親権や婚姻費用との関係を整理
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妻の浮気で慰謝料を請求したい夫が最初に知っておきたいのは、慰謝料・親権・婚姻費用・養育費・財産分与は、それぞれ別の条文で決まる別々の問題だということです。浮気が正面から出てくるのは慰謝料(と、裁判で離婚を求めるときの理由)の話で、親権・生活費・財産分与の条文には浮気という言葉は出てきません。「妻が浮気したのだから親権も家も自分に」という考えで動くと、話し合いがこじれやすくなります。ここでは、それぞれの制度の違いと、決める順番を整理します。
妻の浮気の慰謝料と、ほかの問題は別々に決まる
離婚を考えるとき、夫が決めなければならないことは慰謝料だけではありません。次の表で、それぞれの根拠と、浮気がどう関係するかを確かめてください。
| 問題 | 根拠の条文 | 条文に浮気の言葉はあるか | 主に誰のためのものか |
|---|---|---|---|
| 慰謝料 | 民法709条・710条・719条 | 条文にはない。不貞行為が不法行為になりうるのは判例による | 浮気で傷ついた夫 |
| 親権 | 民法819条 | ない。子の利益のため、父母と子の関係などを考慮 | 子ども |
| 婚姻費用(別居中の生活費) | 民法760条 | ない。資産・収入その他一切の事情を考慮 | 夫婦と子ども |
| 養育費 | 民法766条 | ない。子の利益を最も優先して考慮 | 子ども |
| 財産分与 | 民法768条 | ない。婚姻中の財産と寄与などを考慮 | 夫婦の財産の清算 |
表のとおり、浮気そのものを正面から扱うのは慰謝料です。慰謝料は精神的な苦痛の賠償で、民法710条が財産以外の損害の賠償を定めています。妻と不倫相手の両方が請求の相手になりうること(719条)、不倫相手には原則として「離婚させられたこと」の慰謝料までは請求できないこと(最高裁平成31年2月19日判決)は、妻側の場合も夫側の場合も同じです。請求の相手と目的の決め方は夫の浮気で慰謝料を請求したい妻への記事で示した整理シートが、夫の立場でもそのまま使えます。
親権:妻の浮気は理由として書かれていない
2026年4月1日に施行された改正で、離婚後の親権は父母の双方とすることも一方とすることも選べるようになりました(民法819条1項・2項)。裁判所が決めるときは、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮します(同条7項)。暴力などで共同して親権を行うことが難しい場合などは、一方を親権者と定めなければなりません。
この条文に、配偶者の浮気は判断の理由として挙がっていません。妻の浮気は、夫婦の問題としては重くても、親権の判断では「子どもにとってどうか」という別の物差しで見られます。夫が親権を望むなら、浮気の証拠を集めるより、次のような子育ての実績と計画を整理しておくほうが話の材料になります。
- これまでの子育ての分担(保育園の送迎、食事、通院、学校とのやりとり)
- 離婚後の仕事の働き方と、子どもを見られる時間
- 祖父母など、手伝ってもらえる人の有無
- 子どもの年齢と、本人の気持ち
親権の判断で見られる事情は浮気した親は親権をとれないのかの記事、父親の立場の準備は親権を父親がとるにはの記事で扱います。改正の全体は離婚の法改正2026年4月施行の記事にまとめています。
婚姻費用と養育費:子どもの生活費は浮気と切り離す
妻が子どもを連れて別居すると、夫は別居中の生活費(婚姻費用)を求められることがあります。民法760条は、夫婦がその資産・収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担すると定めています。浮気をした妻からの請求をどう扱うかは家庭裁判所の判断が問題になる点で、考え方は有責配偶者からの婚姻費用の請求の記事に整理しました。
ここで分けて考えたいのが、子どもの生活費です。民法817条の12は、父母は、子が自分と同じ程度の生活を維持できるよう扶養しなければならないと定めています。妻の浮気に対する怒りは慰謝料の問題として扱い、子どもの生活費とは切り離すのが条文の考え方に沿った整理です。
| 場面 | 夫が考えること | 決める場 |
|---|---|---|
| 別居中 | 婚姻費用の額と支払い方。子どもの分を含めて考える | 話し合い、婚姻費用の分担請求調停 |
| 離婚のとき | 養育費の額・期間・支払い方 | 協議、夫婦関係調整調停(離婚) |
| 離婚の後 | 親子交流(面会交流)の回数と方法 | 協議、家庭裁判所の調停 |
婚姻費用の目安の読み方は婚姻費用算定表の見方の記事、養育費の決め方は養育費の決め方の記事へ。浮気への怒りから支払いを自分の判断で止めると、相手との対立が深まり、子どもの生活にも響きます。額に納得できないときは、調停の場で自分の収入や事情を示して主張します。
財産分与:慰謝料と混ぜずに清算する
財産分与は、婚姻中に夫婦で築いた財産を分ける制度です。民法768条3項は、家庭裁判所が考慮する事情として、婚姻中に取得・維持した財産の額と各自の寄与の程度、婚姻の期間、生活水準、協力・扶助の状況、年齢、心身の状況、職業・収入などを挙げています。寄与の程度が違うことが明らかでないときは、等しいものとされます。
ここにも浮気は挙がっていません。そのため「妻が浮気したから財産は渡さない」という主張は、財産分与の条文からは直接出てきません。慰謝料と財産分与を一つにまとめて「この家を渡す代わりに慰謝料はなし」と決める夫婦もいますが、その場合は、それぞれ何をいくらとして扱ったのかを書面に分けて残しておくと、後で争いになりにくくなります。考え方は浮気した側も財産分与を受けられるかの記事で扱います。財産分与を家庭裁判所に求められる期間は、2026年4月1日以後の離婚なら離婚の時から5年です。
妻の浮気で悩む夫の相談の準備
夫の側は、仕事を休みにくい、周りに話しにくいといった理由で、一人で抱え込みやすい立場です。相談に行く前に、次の順で紙に書き出しておくと、短い時間でも話が進みます。
- 浮気が分かった経緯と時期、手元にある資料
- 離婚するか、やり直すか、まだ決めていないか
- 子どもの年齢と、これまでの子育ての分担
- 夫婦それぞれの収入と、家・ローン・預金の状況
- 妻と話し合いができる状態か、暴力や脅しがあるか
慰謝料の見込みや請求の進め方、親権の見通しは、事情を見たうえで弁護士が判断することです。相談の持ち物は弁護士に相談する前の準備の記事に一覧があります。夫の立場の気持ちの整理や相談先はサレ夫が一人で抱えないための記事、親権やお金を考える前の順番は妻の不倫を知った夫への記事にもまとめました。
夫婦のどちらかに暴力がある場合は、慰謝料よりも安全を先にした進め方が必要です。DVがあった離婚の慰謝料の記事へ進んでください。
よくある質問
Q. 妻が浮気をしたなら、親権は夫がとれるのではないですか?
民法819条は、親権を父母の双方とするか一方とするかを、子の利益のために父母と子の関係などの事情を考慮して決めると定めていますが、配偶者の浮気を判断の理由として挙げてはいません。浮気と子育ての力は別に見られるので、これまでの監護の実績と今後の育て方の計画を整理しておくことが大切です。
Q. 別居した妻から生活費(婚姻費用)を求められたら、浮気を理由に断れますか?
婚姻費用は、民法760条で夫婦が資産や収入などの事情を考慮して分担するものとされています。浮気をした側からの請求をどう扱うかは家庭裁判所の判断が問題になる点で、子どもの生活費にあたる部分は別に考えられます。自分だけで支払いを止めず、調停の場や弁護士に相談してください。
Q. 妻が妊娠していて、自分の子かどうか疑っています。どうすればよいですか?
民法772条は、妻が婚姻中に妊娠した子を夫の子と推定します。この推定を争う嫡出否認の訴えは、夫の場合、子の出生を知った時から3年以内です(777条)。期限があるので、一人で抱えずに早めに弁護士へ相談してください。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第709条・第710条・第719条・第760条・第766条・第768条・第772条・第777条・第817条の12・第819条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 最高裁判所 平成31年2月19日 第三小法廷判決(裁判所)
- 婚姻費用の分担請求調停(裁判所)(裁判所)
- 民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について(法務省)(法務省)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。