浮気相手の職場に連絡したいとき:名誉毀損になりうる理由と代わりの手段
この記事のもくじ
浮気相手の職場に知らせたいと思うのは、それだけ深く傷ついたからです。ただ、職場の人に不倫の事実を伝えると、それが本当のことでも刑法230条の名誉毀損に当たりうるうえ、逆に慰謝料を求められることもあります。「払わないなら会社に言う」と迫るのは、脅迫や恐喝の問題になりえます。相手に責任をとってほしいという気持ちは、慰謝料の請求や、接触しない約束を書面で求めるといった、法律で認められた手段に置きかえることができます。
いま気持ちが抑えきれない、誰かに話を聞いてほしいときは、次の窓口に電話できます。
- よりそいホットライン:0120-279-338(24時間)
- #いのちSOS:0120-061-338(24時間365日)
- 法テラス・サポートダイヤル:0570-078374(平日9時〜21時、土曜9時〜17時。祝日・年末年始を除く)。法律で認められた手段の相談先を知りたいとき
ほかの窓口と使い分けは浮気・不倫の相談先一覧:悩み別の窓口と番号・受付時間の早見表にまとめています。
浮気相手の職場への連絡が問題になりうる理由
職場への連絡で関わってくるのは、主に次の条文です。どの行為がどの罪に当たるかは状況全体で決まり、最後に判断するのは捜査機関と裁判所なので、ここでは「問題になりうる理由」として示します。
| 職場に対してやりたくなること | 関わる条文 | 条文のポイント |
|---|---|---|
| 上司や人事に電話・手紙で不倫を伝える | 刑法230条1項(名誉毀損) | 公然と事実を示して名誉を傷つけると、事実の有無にかかわらず成り立ちうる。3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
| 社内の複数の人にメールで知らせる、会社の掲示板やSNSに書く | 同上 | 知らせる相手が増えるほど、事実が広く知られる状態に近づく |
| 相手を「泥棒猫」などと書いて送る | 刑法231条(侮辱) | 事実を示さなくても、公然と侮辱すれば成り立ちうる |
| 「払わないと会社に言う」と本人に告げる | 刑法222条(脅迫)、払わせれば249条(恐喝) | 名誉に害を加える旨の告知も脅迫の対象 |
| 会社の前で待つ、何度も電話する | ストーカー規制法2条1項 | 目的が要件なので当てはまるかは事情による。相手が警察に相談することはある |
「本当のことだから言ってもいい」という考えは、刑法230条の「その事実の有無にかかわらず」という文言と合いません。例外として230条の2がありますが、公共の利害に関する事実であること、目的がもっぱら公益を図るためであること、真実と証明されることがそろう場合に限られ、私生活の不倫がこれに当たると考えて動くのは危険です。
刑事とは別に、民事の責任もあります。名誉を傷つけた側は、民法709条・710条により精神的な損害を賠償する責任を負うことがあり、723条は名誉を回復するための処分を裁判所が命じられると定めています。浮気をされた側が、請求する側から請求される側に回ってしまうのです。広め方と責任の線は不倫を周囲に知らせると名誉毀損になる?でも整理しています。
「職場に知らせたい」気持ちの中身を分ける
職場に知らせたいという気持ちの奥には、たいてい別の願いがあります。それを言葉にすると、より安全で、目的に近い手段が見えてきます。
| 気持ちの中身 | 法律で認められる手段・現実的な手段 | 次に読む |
|---|---|---|
| 相手にも痛みを感じてほしい | 不貞行為を理由とする慰謝料の請求 | 不倫相手に慰謝料を請求するときの考え方 |
| 二度と配偶者に近づいてほしくない | 接触しない約束を書面に残す | 浮気相手に誓約書を書いてもらうとき |
| 同じ職場で二人が会い続けるのが不安 | 配偶者との話し合いで、職場での距離の取り方を決める | 下の見出しへ |
| 周りに本当のことを知ってほしい | 信頼できる少数の人やカウンセラーに、自分の気持ちとして話す | 浮気への怒りが抑えられないとき |
| 相手が平気な顔で働いているのが許せない | 怒りを書き出し、手続きに移す。窓口で話す | 浮気相手に制裁したい気持ちへ |
表の右の手段は、すぐに気持ちが晴れるものではありません。けれども、相手に責任をとらせることと、自分が責任を問われないことを両立できるのは、こちらの道です。
| やりたくなること | 置きかえる手段 | 誰に相談するか |
|---|---|---|
| 会社に不倫を知らせる | 慰謝料を請求する(話し合い・書面・調停・訴訟) | 弁護士 |
| 会社に別れさせてもらう | 接触しない約束を書面にする | 弁護士 |
| 上司に処分を求める | 配偶者自身が異動や連絡の断ち方を考える | 配偶者との話し合い、夫婦カウンセリング |
| 社内に広めて孤立させる | 怒りを書き出し、窓口や相談先で話す | 電話相談、カウンセラー |
代わりの手段1:慰謝料の請求と、接触しない約束
浮気相手に責任を求める中心の手段は、慰謝料の請求です。夫婦の一方と関係を持った第三者は、故意または過失があれば、不法行為として賠償の責任を負いうるとされ(民法709条・710条)、共同の不法行為にあたる場合は、配偶者と浮気相手が連帯して責任を負う定めもあります(719条1項)。請求の流れは、話し合い、書面での請求、調停、訴訟と段階があり、全体像は不倫慰謝料の請求方法:話し合い・内容証明・調停・訴訟の流れで扱っています。
請求には期限があり、損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で時効にかかります(民法724条)。いつから数えるかは事情で変わるので、不倫の慰謝料の時効は3年と20年を読んだうえで、早めに相談してください。
慰謝料と一緒に、配偶者に連絡しない、会わないといった約束を書面に残す方法もあります。示談書の接触禁止の条項については不倫の示談書の接触禁止条項とは?で整理しています。
浮気相手の住所が分からず、勤務先しか知らないという場合もあるでしょう。その場合でも、職場に宛てて自分で書面を送るのは控えてください。会社宛ての郵便は、本人より先に別の人が開けることがあります。送り先と方法は、自分で決めずに弁護士に相談します。
代わりの手段2:同じ職場で関係が続くことへの対処
浮気相手が配偶者と同じ職場にいると、毎日顔を合わせていると思うだけで苦しくなります。この不安は、会社に知らせることでなく、配偶者との約束で扱うのが筋です。話し合いで決めておきたい項目は次のとおりです。
- 仕事以外の連絡(個人のメッセージ、二人での食事、帰り道の同行)をしない
- 仕事で関わる場面があれば、どんな内容だったかを家で話す
- 異動や担当替えの希望を出すか、配偶者自身が考える
- 約束が守れないときにどうするか(転職、別居、離婚の検討)を話しておく
配偶者が会社に異動を願い出るかどうかは、配偶者自身が決めることです。職場不倫が会社でどう扱われうるかは職場不倫・社内不倫の行き先と不倫が会社にバレるとどうなる?にまとめています。会社が処分をするかどうかは、その会社が就業規則に照らして判断することで、こちらから働きかけて決めさせるものではありません。
気持ちが抑えられないとき・逆に脅されたとき
頭では分かっていても、夜になると職場に電話したくなる、手紙を書いて投函しそうになる、ということがあります。そんなときは、書いた手紙を封をせずに手元に置き、翌朝もう一度読むと決めてください。それでも気持ちが収まらないときは、冒頭の窓口に電話して、いま何をしそうになっているかを話してみてください。
反対に、浮気相手やその家族から「お前の会社に言う」「家に行く」と言われている場合は、こちらが危険にさらされています。緊急なら110番、そうでなければ警察相談専用電話 #9110(受付時間は都道府県警察ごとに異なる。夜間・休日は当直や音声案内で対応)などに相談できます。使い分けは不倫で脅迫されたとき:110番と#9110の使い分けと最初にすることにあります。浮気相手に仕返しをしたいという気持ちそのものとの付き合い方は、次の記事浮気相手に制裁したい気持ちへ:怒りを法律で認められる手続きに置きかえる手順で扱います。
よくある質問
Q. 名前を出さずに、匿名で浮気相手の会社に知らせるならいいですか?
刑法230条の名誉毀損は、誰が言ったかではなく、公然と事実を示して人の名誉を傷つけたかを問題にしています。名乗らなければよい、という考え方はとらないでください。手紙の筆跡や文面、知っている人が限られる事実から、送り主が推測されることもあります。
Q. 浮気相手と配偶者が同じ会社です。会社の上司に相談するのも問題ですか?
配偶者や浮気相手の上司に不倫の事実を伝えると、目的が相談でも、職場の人に事実を知らせる点では同じ心配が残ります。会社の処分は会社が就業規則で判断することで、こちらが求めて決まるものではありません。同じ職場で関係が続くのがつらいなら、まず配偶者自身に、異動の希望や連絡の断ち方を考えさせる話し合いから始めてください。
Q. もう職場に連絡してしまいました。これからどうすればいいですか?
これ以上の連絡や書き込みはやめ、自分が何を誰に伝えたかを日時つきで書き出してください。相手から抗議や請求が来ても、その場で言い返したり、さらに広めたりしないことが大切です。送った文面や記録を持って、早めに弁護士に相談してください。
出典・参考にした公的な情報
- 刑法 第222条・第230条・第230条の2・第231条・第249条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第709条・第710条・第719条・第723条・第724条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- ストーカー行為等の規制等に関する法律 第2条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- まもろうよ こころ 電話相談(#いのちSOS・よりそいホットライン)(厚生労働省)
- 法テラス・サポートダイヤル(法務省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。