離婚調停が不成立になったら:審判・裁判へ進むかの判断材料
離婚調停が不成立で終わっても、自動では裁判に移りません。離婚の調停は、裁判所の分類で「一般調停」(不成立の後は訴訟になる調停)にあたり、離婚を求める側が自分で離婚の訴えを起こして初めて裁判が始まります。不成立の後に取れる道は、夫婦で話し合う、離婚の訴えを起こす、離婚を求めずに距離を置く、の3つです。通知を受けた日から2週間以内に訴えると、調停を申し立てた時に訴えたものとみなされる規定があるので、進むかどうかを考える材料を先にそろえておきます。
調停が不成立になるのは、どんなときか
調停委員会は、合意が成立する見込みがない場合や、成立した合意が相当でないと認める場合に、調停が成立しないものとして事件を終了させることができます(家事事件手続法272条1項)。終了したときは、家庭裁判所から当事者に通知が来ます(同条2項)。相手方が出席しない場合も、調停は不成立として終わります。
数字で見ると、令和7年(2025年)に終わった婚姻関係事件57,491件のうち、調停不成立は11,003件(19.1%)でした(司法統計年報 家事編 第16表。割合は筆者の計算。ほかの区分との並びは離婚の方法は4種類の表にあります)。この表の「婚姻関係事件」には円満を目指す調停なども含まれるので、離婚調停だけの割合ではありません。5件に1件ほどは不成立で終わっている、という見方にとどめます。
不成立の後に取れる3つの道
| 道 | 内容 | 向く場面 | 気をつける点 |
|---|---|---|---|
| 夫婦で話し合う | 民法763条の協議離婚。合意すれば離婚届を出せる | 調停で条件の差が縮まった、相手の考えが変わった | 決めた条件は書面に残す。条項の例は離婚協議書の書き方へ |
| 離婚の訴えを起こす | 家庭裁判所に人事訴訟を起こし、判決か和解で終わる | 相手が離婚に応じない、離婚の意思が固い | 民法770条の理由と、それを示す資料が問われる。費用と期間がかかる |
| 離婚を求めない | 別居して生活費(婚姻費用)を求める、円満の調停を使うなど | 離婚するかどうか決められない | 婚姻費用の調停は、不成立になると自動で審判に移る(次の章) |
調停に代わる審判が出ていた場合は、2週間以内に異議を出せば効力を失い、その後に訴えを起こす道に入ります。仕組みは調停に代わる審判とは?で整理しています。
調停の種類で、不成立の後の行き先が違う
不成立の後の流れは、調停の種類で2つに分かれます。ここを取り違えると、「待っていれば審判が出る」と思い込んで時間が過ぎます。
| 調停の種類 | 不成立の後 | 根拠 |
|---|---|---|
| 夫婦関係調整調停(離婚) | 自分で離婚の訴え(人事訴訟)を起こす | 家事事件手続法272条3項、裁判所の家事調停の案内 |
| 慰謝料請求調停(離婚後) | 訴訟を起こす | 同上 |
| 婚姻費用の分担請求調停 | 自動で審判の手続が始まり、裁判官が一切の事情を考慮して審判する | 同条4項、裁判所の案内 |
| 養育費・財産分与(離婚後)・親権者変更・親子交流の調停 | 同じく自動で審判に移る | 同条4項、裁判所の各手続ページ |
離婚の調停の中で一緒に話し合っていた親権、養育費、財産分与、年金分割は、離婚の訴えを起こしたあと、申立てによって判決で定めてもらえます(人事訴訟法32条)。離婚と同時に求められるのは、離婚の原因となった浮気による慰謝料の請求も同じです(同法17条)。調停の中で何を申し立てていたかは、申立てた家庭裁判所の手続案内で、その後の扱いと合わせて確かめてください。
裁判へ進むか考える6つの材料
| 考える点 | 見ること | 数字・根拠 |
|---|---|---|
| 1 離婚の理由 | 相手が離婚に応じない場合、裁判で離婚を求める理由は民法770条1項の4つ。浮気は1号の「不貞な行為」。2項で、婚姻の継続が相当と認められると請求が退けられる余地もある | 理由の読み方は離婚の理由として認められるもの |
| 2 事実を示せるか | 相手が浮気を否定したままだと、日付と資料で示すことになる | 資料の種類は浮気の証拠になるもの一覧 |
| 3 離婚以外の条件 | 親権、養育費、財産分与、年金分割も同じ手続で求められる | 人事訴訟法32条 |
| 4 費用 | 離婚だけの訴えの手数料は13,000円(人事訴訟の欄)。通知から2週間以内に訴えると、調停で納めた1,200円分は納めたものとみなされ、差額の11,800円を納める計算(筆者の読み方。提出先で確かめる) | 手数料額早見表、民事訴訟費用等に関する法律5条 |
| 5 時間と公開 | 人事を目的とする訴えは、令和7年の既済のうち1年以内に終わったものが48.4%、2年以内が84.8%(筆者の計算。離婚以外の訴えも含む)。離婚訴訟は原則として公開の法廷。私生活上の重大な秘密にかかわる尋問は、非公開にする決定がされることがある(人事訴訟法22条) | 司法統計 第63表、人事訴訟法22条 |
| 6 和解で終わる道 | 人事を目的とする訴えの既済のうち、判決は40.4%、和解は35.1%、取下げは21.9%(筆者の計算)。離婚の訴えでも和解で離婚を成立させられる | 司法統計 第61表、人事訴訟法37条 |
5と6の数字は、認知や親子関係の訴えなど離婚以外も含む人事訴訟全体の数字です。離婚訴訟だけの平均ではないので、「だいたいこのくらいかかる」という見積もりには使わず、流れの規模感として読みます。費用の内訳は離婚裁判の費用、進み方は離婚裁判の流れで扱っています。
通知を受けたら、2週間で整える5つのこと
2週間のルールは、期限を過ぎると訴えられなくなる決まりではありません。この期間内に訴えると、調停を申し立てた時に訴えたものとみなされ、調停の申立てで納めた手数料も訴えの手数料として扱われる、という扱いが受けられる期間です。時効が気になる慰謝料を求める場合は、慰謝料請求の時効が迫っているときで、数え方を先に確かめます。
- 通知書の日付を記録する:「通知を受けた日」から数えるので、届いた日を封筒ごと保管します。
- 調停の経過を一枚にまとめる:出した資料、相手方の主張、委員から出た条件案を日付順に書き出します。聞かれた内容は離婚調停で何を聞かれる?の整理が使えます。
- 離婚の意思と条件の優先順位を決める:離婚するのか、条件が整えば続けるのか。親権、養育費、財産分与、慰謝料のどれを優先するかを書きます。
- 費用の見通しを立てる:印紙、郵便料、弁護士費用を分けて、払える範囲を決めます。
- 相談の予約を入れる:弁護士の相談、または家庭裁判所の手続案内。時期の目安は離婚で弁護士に相談するタイミングにあります。
訴えに進まないと決めた場合は、別居中の生活費を婚姻費用とは?で整え、円満の話し合いを望むなら円満調停とは?を検討します。離婚手続全体の地図は浮気・不倫が原因の離婚にあります。
よくある質問
Q. 離婚調停が不成立になったら、そのまま裁判が始まりますか?
始まりません。離婚の調停は、不成立で終わっても自動では裁判に移らず、離婚を求める側が自分で離婚の訴えを起こします。調停を申し立てただけでは、裁判の手続は進みません。
Q. 不成立の通知から2週間を過ぎたら、もう訴えられませんか?
訴えられなくなるわけではありません。家事事件手続法272条3項の2週間は、通知を受けた日から2週間以内に訴えれば、調停を申し立てた時に訴えたものとみなす、という効果の期間です。過ぎると、このみなしの扱いが受けられなくなる点だけが変わります。
Q. 不成立の後に、夫婦の話し合いで離婚することはできますか?
できます。民法763条は、夫婦は協議で離婚できると定めていて、調停が終わったあとでも合意すれば離婚届を出せます。条件は離婚協議書などの書面に残します。
出典・参考にした公的な情報
- 家事事件手続法 第272条・第284条・第286条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 人事訴訟法 第17条・第22条・第32条・第37条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事訴訟費用等に関する法律 第4条・第5条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第763条・第770条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 家事調停の手続(不成立の場合)(裁判所)
- 離婚訴訟(裁判所)
- 婚姻費用の分担請求調停(裁判所)
- 手数料額早見表(令和8年9月15日改訂)(裁判所)
- 令和7年 司法統計年報(家事編)第16表・第60表・第61表・第63表(最高裁判所)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。