既婚者との恋愛を始める前に:好きになったときに知っておきたい責任
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既婚者を好きになること自体は、気持ちの問題で、それだけで法律上の責任が生じるわけではありません。ただ、その気持ちのまま関係を始めると、相手の配偶者から慰謝料を請求されうる立場になり、職場や家族を巻き込む問題にも広がりえます。始めてしまってから考えるのでは、選べる道が少なくなります。この記事では、関係を始めた場合に問われうる責任を民法と最高裁の判断で整理し、「離婚する」と言われたときの考え方と、好きになった気持ちの整理の手順を示します。
既婚者との恋愛:好きになることと、関係を始めることは違う
既婚者を好きになったと気づいたとき、まず分けて考えたいのは「気持ち」と「行動」です。気持ちは自分で止められないことがありますが、行動はどこまで進めるかを選べます。そして、法律やまわりの人との関係で問題になるのは、主に行動のほうです。
| 段階 | 起きやすいこと | 自分で選べること |
|---|---|---|
| 気持ちを抱いている | 相手のことを考える時間が増える。相手の家庭のことが気になる | 気持ちを書き出す。二人きりの時間を増やさない |
| 私的な連絡・二人で会う | 相手の配偶者に気づかれ、家庭で問題になることがある | 連絡の時間と内容を業務や友人の範囲にとどめる |
| 肉体関係を持つ | 相手の配偶者から慰謝料を請求されうる。発覚すれば相手の家庭の離婚や別居につながることもある | 始めないという選択が残っている |
民法770条1項1号は、裁判で離婚を求められる理由の一つに「配偶者に不貞な行為があったとき」を挙げています。「不貞行為」は法律上の言葉で、日常でいう浮気や恋愛感情と同じ意味ではありません。どこからが不貞行為にあたるかは事実関係によるので、この記事では「肉体関係を持つと、責任を問われうる場面に入る」という目安で話を進めます。言葉の意味は不貞行為とは何かの整理で詳しく扱っています。
関係を始めた場合に問われうる責任:慰謝料の仕組み
既婚者と関係を持った人が問われうる代表的な責任が、相手の配偶者に対する慰謝料です。民法709条は故意または過失で他人の権利や法律上保護される利益を侵害した人に賠償の責任を、710条は財産以外の損害、つまり精神的な損害の賠償を定めています。
最高裁昭和54年3月30日判決は、既婚者と肉体関係を持った人の責任について、関係のきっかけがどちらからの誘いだったか、自然な愛情から始まったかは、故意または過失がある限り責任を左右しないという考え方を示しました。「相手から好きだと言ってきた」「本気の恋愛だった」という事情だけでは、責任を免れる理由にならないということです。
| 起こりうること | 関係する仕組み | 詳しい記事 |
|---|---|---|
| 相手の配偶者から慰謝料を請求される | 民法709条・710条。相手(既婚者本人)と連帯して責任を負う形になりうる(719条) | 不倫と法律の関係の整理 |
| 何年もたってから請求が届く | 損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で時効(724条) | 慰謝料を請求されたらすること |
| 職場で問題になる | 処分の有無や内容は勤務先の就業規則による | 職場不倫・社内不倫を続けるか迷うとき |
| 妊娠する | 認知や養育費など、子どもについての取り決めが必要になる | 不倫で妊娠したときの相談先と制度 |
| 自分も既婚者の場合 | 自分の配偶者からも慰謝料や離婚を求められうる | ダブル不倫が発覚したときの整理 |
一方で、最高裁平成31年2月19日判決は、不貞行為の相手に対して「夫婦を離婚させたこと」の慰謝料を請求することは、離婚させる意図で夫婦の関係に不当に干渉したなどの特段の事情がない限りできないとしました。判決自身が述べているとおり、不貞行為そのものについての責任は別の話です。どんな責任が、どのくらい問われうるかは事実関係で変わるので、実際に請求を受けたら弁護士に確かめてください。
「離婚する」「夫婦はもう終わっている」と言われたとき
既婚者との恋愛で多いのが、相手から「妻(夫)とは離婚する」「夫婦関係はもう終わっている」と聞かされる場面です。その言葉を信じて関係を始める前に、知っておきたいことがあります。
まず、民法732条は、配偶者のある人が重ねて婚姻することを禁じています。相手が離婚すると言っていても、離婚が成立するまでは結婚できません。離婚は夫婦の話し合いや調停、裁判で決まるもので、いつ成立するかを相手一人で決められるとは限りません。
次に、夫婦関係が「終わっている」かどうかの扱いです。最高裁平成8年3月26日判決は、肉体関係を持った当時に夫婦の婚姻関係がすでに破綻していたときは、特段の事情がない限り、相手の配偶者に対する責任は負わないとしました。ただ、この事件で破綻と認められたのは、長い対立や調停の申立てを経て別居に至っていた事情があったからで、「別居しているから」「家庭内で会話がないと聞いたから」で一律に決まるものではありません。
2026年6月5日の最高裁判決は、「離婚した」と聞かされていた可能性が相当程度あり、既婚と知りながら関係を持ったとは認められなかった人について、離婚したと信じた相当の理由がないというだけで過失があるとはせず、婚姻関係が破綻していると信じ、そう信じる相当の理由があったかまで検討するよう求めました(原審に差し戻し)。言われた言葉や見せられたものは後で事情を説明する材料になりますが、それだけで責任がなくなるわけではありません。判決の読み方は既婚者だと知らなかったのに慰謝料を請求されたらで扱っています。
| 相手の言葉 | 考えておきたいこと |
|---|---|
| 「離婚するから待っていて」 | 離婚の話は具体的に進んでいるのか。成立するまで結婚はできない |
| 「夫婦はもう終わっている」 | 破綻しているかどうかは、言葉ではなく夫婦の実際の状況で判断される |
| 「家族にはばれないから大丈夫」 | 発覚したときに困るのは自分も同じ。ばれないことと責任がないことは別 |
相手の言葉を確かめるために、相手の家庭を調べたり、配偶者に連絡したりするのは、新しい争いを生みます。待つかどうかで迷っているなら、不倫相手の離婚を待つ前に知っておきたい現実を読んでください。
既婚者を好きになった気持ちを整理する手順
既婚者を好きになった気持ちは、無理に消そうとすると、かえって相手のことを考える時間が増えがちです。気持ちを否定せずに外へ出し、自分が本当に望んでいるものと照らし合わせると、どう行動するかを選びやすくなります。
- 惹かれている理由を書き出す。 優しさ、話の合い方、頼りがいなど、思いつくまま書きます。
- 「既婚者だから」惹かれている部分がないかを見る。 落ち着き、手に入らない感じ、責任を負わなくてよい気楽さなど、相手の立場と結びついた魅力が混ざっていないかを確かめます。
- 自分が欲しい関係を書く。 一緒に暮らしたい、家族をつくりたい、休日を一緒に過ごしたい、など。
- その関係が、既婚者との恋愛で手に入るかを照らし合わせる。 手に入るもの・入らないものを2列に分けます。
- 1年後の自分を2通り書く。 関係を始めた場合と、始めなかった場合です。どちらの自分に近づきたいかで、今日の行動を決めます。
書き出してもなお気持ちが強いときは、距離の取り方を先に決めておきます。二人きりの食事や飲みの誘いを受けない、私用の連絡先でのやり取りを控える、職場なら業務の用件だけに絞る、といった線です。誘われたときの断り方は既婚者に誘われたときの断り方と職場での付き合い方で文例とあわせて示しています。
誰にも言えない恋愛は、一人で抱えるほど考えが偏りやすくなります。信頼できる友人に話すのが難しければ、カウンセリングで気持ちを整理する方法もあります。すでに関係が始まっていて終わらせたいなら不倫をやめたいのにやめられないときの終わらせる手順を、やめられない理由を整理したいなら不倫がやめられない心理を、別れた後がつらいなら不倫の別れがつらいときの気持ちの整理を読んでください。
よくある質問
Q. 既婚者を好きになっただけで、慰謝料を請求されることはありますか?
最高裁が相手の配偶者に対する責任を認めた典型は、既婚者と肉体関係を持った場合で、好意を持つこと自体を問題にしたものではありません。ただし、二人で会う回数や私的な連絡が増えると、相手の家庭で問題になり、話がこじれることはあります。気持ちを持つ段階のうちに、どこで線を引くかを決めておくことが大切です。
Q. 好きな人が既婚者だと後から分かりました。もう付き合ってしまっています。
既婚者だと知らなかった事情は、責任を考えるうえで大事な材料になります。いつ、どんな言葉で独身だと聞いたか、既婚と知ったのはいつかを日付つきで書き出し、やり取りを保存してください。考え方は[既婚者だと知らなかったのに慰謝料を請求されたとき](/shiranakatta/)と、独身と偽られた場合の[貞操権侵害の考え方と相談先](/teisouken/)にまとめています。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第709条・第710条・第719条・第724条・第732条・第770条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 最高裁判所 昭和54年3月30日 第二小法廷判決(昭和51年(オ)第328号)(裁判所)
- 最高裁判所 平成8年3月26日 第三小法廷判決(平成5年(オ)第281号)(裁判所)
- 最高裁判所 平成31年2月19日 第三小法廷判決(平成29年(受)第1456号)(裁判所)
- 最高裁判所 令和8年6月5日 第二小法廷判決(令和7年(受)第933号)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。